2024年11月24日( 日 )

【政界ウォッチ】どうした枝野?!安倍首相の“抱きつき作戦”で戦意喪失~弱腰・交渉下手の野党第一党党首

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「国民の命と安全を守る」が口癖の安倍首相だが、新型肺炎対策ではクルーズ船下船後の乗客を隔離しないなど、後手後手で非医学的な対応を繰り返している
「国民の命と安全を守る」が口癖の安倍首相だが、新型肺炎対策ではクルーズ船下船後の乗客を隔離しないなど、後手後手で非医学的な対応を繰り返している

■主戦場から自主退場~枝野代表の支離滅裂な主張

 後手後手で非科学的な場あたり対応を繰り返す安倍政権に対して、まっとうな感染拡大防止策を突き付ける絶好のチャンスを逃した――こんな大失態をしたとしか見えないのが立憲民主党の枝野幸男代表だ。

 どういうことか。枝野代表は、「インフルエンザ等特措法改正に協力してほしい」と抱き付いてきた安倍首相に改善項目をぶつけて飲ませるのではなく、「こうした問題で駆け引き、取り引きをするつもりはありません」(3月5日の記者会見)とあっさり政治休戦を受け入れたのだ。「国難なのに協力しないのはケシカラン」といった批判を恐れて“敵前逃亡”、野党一丸となって安倍首相の迷走をやめさせるという野党第一党党首の責務を放棄したようにもみえる。

 弱腰・交渉下手・指導力不足が凝縮されたような問題発言は、私が「特措法改正について政府に協力する代わりに政府側に飲ませた要求項目について確認したい」と切り出し、今の非科学的な専門家集団に野党推薦人を送り込むことや、検査法関連法案(野党提出済)の先行成立を例示した質問をしたときに飛び出した。枝野氏はこう答えた。

 「この法律のことは党首会談で話をしたので、あとは現場に任せています」「むしろ大事なことはPCR検査が増えていない、学校一斉休校などへの対応ができていないことなど今日、明日、明後日でやらないといけないことがたくさんある。そうしたことから目を背けられてしまっているのではないかと非常に危惧をしています。(法律成立までの)間にいま指摘をいただいたことを含め、感染拡大防止のためにやらなければならないことはたくさんある」。

 支離滅裂とはこのことだ。特措法改正をめぐる与野党激突の現場で、緊急感染防止策(検査法成立や科学的意思決定への是正など)を受け入れさせる“バトル”(交渉)をすればいいのに、そんな主戦場から指揮官が退散してしまったに等しいのだ。

 そもそも特措法改正は必要性自体が疑わしく、安倍首相の政治的パフォーマンスの色合いが強かった。枝野氏も国民民主党の玉木雄一郎代表も共産党の志位和夫委員長も社民党の福島みずほ党首も、現行法で対応可能と主張。中でも玉木氏は3月4日の会見で、こう述べていた。

 「我々は1月末から特措法を適用すべきだと(主張してきた)。新たな感染症が発生したときに、最大限でできる法体系は新型インフルエンザ等特措法だ」

 「これまでの対応が後手後手だったことを事後的に糊塗するようなもの。『判断を間違った』と謝って既存の法律を使うことが筋ではないか」

 「今回は新型コロナウイルスだが、これからグローバル化が進むなかで新しい感染症が出た時に、いちいち法改正をして追加しないと対策を打てなくなる。『後手後手に回る』という前例をつくっては駄目なのです。だから未知の新たな感染症が出てきた時も含めて(新型インフルエンザ以外の)『新感染症』を設けて対応できる法律をつくった。その法律を使わないで、新たに改正しようなんてことは法の趣旨に反している。(審議に)協力はするが、いったい何のための法改正なのかは厳しく問うていかなければならない」

■野党第一党党首としてファイティングポーズを示せるか

野党新型肺炎ヒアリング
野党新型肺炎ヒアリング

 こうした見方は玉木氏だけでなく、3月5日のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」でも出ていた。「総理が法律改正にこだわる理由は、『後手後手』批判を払しょくするため総理主導で進んでいるとアピールしたい」というコメントが発せられていたのだ。

 これに対して安倍政権は反発。内閣官房国際感染症対策調整室は5日のツイッタ―で、こう反論した。

 「法律改正をする理由はそうではありません。あらゆる事態に備えて打てる手はすべて打つという考えで法律改正をしようとしています」

 「現行の新型インフルエンザ等対策措置法では未知のウイルスしか対象としておらず、新型コロナウイルスはウイルスとしては未知のものではないので、今のままでは対象とならないからです」

 しかし厚労省の専門家会議議長として現行法づくりに携わった川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「新型インフルのための法律でなく、その他に重大な病気が出てきた場合はこれ(を適用できる)ということが委員間のコンセンサスだった」(3月5日の参院予算委員会)と述べた。

 安倍首相の政治的パフォーマンスにすぎず、新感染症ごとに法改正をする悪しき前例をつくることにもなる特措法改正に対して野党は改正不要論で結束し、より緊急性の高い検査法関連法案成立や新たな専門家集団が加わった“日本版CDC”(岩田健太郎・神戸大学教授らが提案)創設を政府に突き付ける必要があったのではないか。

安倍政権下の「専門家会議」は非科学的で場あたり的な対応策を追認する忖度型御用学者だらけなので、岩田氏のような非忖度型の専門家を意思決定の場に送り込むことが緊急課題なのだ。現行特措法でも可能な緊急事態宣言を発令する場合でも、“日本版CDC”が科学的根拠に基づいた内容を決めることに関与すれば、安倍首相による私権制限乱用を防ぐ歯止めにもなる役割もはたす。

 こうした緊急課題を政府に突き付けて受け入れさせる陣頭指揮を取るはずの枝野氏が、その責務を放棄して「取り引きしない」という“政治休戦指令”を出したのが今回の特措法改正の実態だ。抱き付いてきた安倍首相に塩を送った結果、感染拡大改善策を飲ませる機会を逃す罪は重い。挑戦者の立場である野党第一党党首は守りの姿勢から脱却し、戦闘力アップをして安倍政権を批判しながら代替案(緊急課題)を受け入れさせることを最優先課題とすべきなのだ。

テレビ電話会議で岩田健太郎教授からヒアリングをする原口一博・国対委員長ら野党国会議員(2月20日)
テレビ電話会議で岩田健太郎教授からヒアリングをする原口一博・国対委員長ら野党国会議員(2月20日)

【ジャーナリスト/横田 一】

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