24時間365日診療で目指す、まっとうで患者さん本位の歯科医療（後）～医療法人社団博文会

■まっとうな歯科医院を増やす

　――今後、24時間365日保険診療のスタイルが当たれば、真似をする医院も出てくるのでは。

　平野　20年近く、真似しようとするところが出ていませんから、難しいのかもしれませんね。医療が規制緩和されて上場できる時代になれば別でしょうが、2番手は大変ですよ。福岡でも荒江で24時間診療を始めたときは立ち上がりが良くなかったですし、私の同級生にもアドバイスして24時間365日の歯科をやりましたが、やはりうまくいかない。

　――後追いが出ていないとすれば、何が障壁になっているんでしょう。経営やマネジメント、さまざまだと思います。

　平野　すべての面だと思います。深夜診療のトラブル処理、従業員の募集と教育、歯科医をどれくらい集めればいいのか。軌道に乗るまでにどの程度の運転資金を用意すべきか、など。そのあたりを計算できる歯科医は多くはいないと思います。私に資本があればどんどん分院を増やしていきたいのですが、まだこつこつと積み重ねる時期なのでしょう。

　――懸念するところがあるとすれば、診療の質の面ですね。日本には「安かろう、悪かろう」という意識があって、サービス過剰なものには警戒するところがあります。「腕が悪いから24時間やっているのではないか」と勘繰られることはないですか。

　平野　それはもう開院当初からずっと言われてきていることです。はっきり申し上げて、誹謗中傷と戦い続けてきました。患者さんの主治医が「24時間歯科？あそこはね……」って耳打ちするんですから。我々のようなスタイルは悪い噂を流される絶好の餌食なんですよ。雑誌からも、24時間歯科は診療の質が低下すると叩かれました。

　開業当初は、「夜中は歯科医師免許を持っていないやつがやっている」という噂を流されて、飯塚の歯科医師会から呼び出されたこともありました。ネットの口コミサイトにしても、悪い口コミしか書かれないですから。

　でも、病院は24時間診療しているところがたくさんあるじゃないですか。1人ですべての患者さんを診るわけがなくて、3交代でやっているんです。1人でやっているクリニックの先生よりむしろ休みは増えているくらいで、そのあたりのファクト（事実）をきちんと精査して伝えてくれることはほとんどありません。

　――いま、患者は事前にネット検索して、口コミや評判をみて医院を選びます。それを逆手にとって、良い口コミがつくことを保証するサービスもあります。最近では患者側もそれがわかってきて、いい評判だけでも警戒するようになった。いたちごっこで、医院が正当な評価を受けることが難しい時代になりました。

　平野　だからこそ地道に実績を重ねて、よそがたとえ不正なことをして儲けていたとしても、我々は絶対に関与しない。そうでないと維持安定できませんし、100人の従業員を抱えているので、たった1人がへんなことをするだけで大きなしっぺ返しをくらってしまう。そのことは常日頃から従業員にはよく話しているところです。

　――今後も分院を増やしていく方針ですか。

　平野　100万都市にひとつずつと、あとは東京で増やしたい。いま歯科の主流はインプラントだったり審美歯科だったりで、コンサルが口を出すこともあって保険外診療が隆盛です。でも、実際は保険診療で十分なんですよ。私はよく歯科医の方に言うんですが、「あなたたち、お金の話はいやがるのになぜ保険外をやりたがるんですか？ お金が欲しいんですか？」と。うちはあえて保険診療にこだわっていきたいと思います。東京の富裕層の方たちと話すと、前歯は保険がきかないと誤解されている方が多いですね。歯科医のいいカモにされているんですよ。まっとうな歯科医療を提供して、経営的にも揺るぎないものにしていく。それが私の夢です。

（了）