COVID-19感染拡大の裏で進む、より深刻な脅威の数々(中)
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国際未来科学研究所代表 浜田和幸
すでにクシュナー氏の肝いりで、身内の関係する製薬会社「オスカー・ヘルス」では新薬の試験を始めた。そのうえ、診察を希望する人たちを最寄りの医療機関に紹介するアプリの開発も進めている。こうした開発に関わる経費は全額、国の緊急予備費で賄うという算段に他ならない。
しかも、クシュナー氏の弟の義理の父親は内科医であるが、自らのフェイスブックを通じて「自分はホワイトハウスに強力なコネがある。今回のパンデミックに関連して、何か治療法や予防法について提案があれば言ってきてほしい」とPR活動に忙しいようだ。どう考えても、多くの人命が危機的状況に晒されているときの最高指導者やその親族が取るべき行動とは思えない。
過去にも数々のワクチンが開発され、市場に投入されたが、副作用で想定外の人命が失われるケースも頻発している。きちんとした動物実験や治験を経ない急ごしらえの「利益優先」の特効薬ほど危険なものはないだろう。アメリカ政府も「発生原因が特定できない」と認定しているわけで、「ほかの病原菌に効果があった」との理由で試験的に投与されている試薬も多いといわれるが、その効果のほどには慎重な見極めが求められる。
一方、発生源と見られる中国では武漢市や湖北省を封鎖することで感染拡大の勢いを抑えつつあるようだが、国民の間では不安感は払しょくされないままである。世界の製造工場となっている中国での爆発的な感染はさまざまな部門で製造停止を余儀なくさせ、日本はもとより世界にとってサプライチェーンの寸断という物流面での危機的状況をもたらした。
トヨタや日産など大手自動車メーカーを筆頭に部品の供給がストップし、生産縮小という事態に直面することになっている。マスクや抗生物質などもほぼ8割を中国から輸入しているのが日本である。こうした中国への過度の依存を見直す動きも出てきたが、「時すでに遅し」という感も否めない。
日本でもメディアは朝から晩まで新型コロナウイルスの感染に関するニュースを流している。あたかも世界はコロナウイルス一色に染まったかのようだ。しかし、未来学の観点から捉えれば、これほど危険なことはない。確かにCOVID-19は目前に迫りくる危機の源泉ではあるが、その陰でより大きく、かつ深刻な問題も発生しているのである。複眼的な問題意識をもっていなければ、足元をすくわれることになるだろう。
また、新型コロナウイルスの特性に関する研究も国際的な協力体制の下で進める必要がある。なぜなら、COVID-19と一言で言っても、中国とイタリアでは特性がまったく違っているからだ。台湾の感染症専門医によれば、「中国の患者から採取したウイルスとオーストラリアやアメリカの患者から採取したものでは病原菌の成分に大きな違いがある」とのこと。「その成分の違いが致死率の違いをもたらしている」という。
要は、中国発のウイルスとアメリカ発のウイルスでは成分が異なる、別種のウイルスというわけだ。そうした背景があるためか、アメリカでは「武漢ウイルス」や「中国ウイルス」という呼び名が流行っているが、中国では「イタリアウイルス」や「イランウイルス」という呼び名を使っている。ちなみに、中国政府は駐日中国大使館に対して「日本ウイルス」という呼び名も外交面では使うよう指示を出しているほどだ。
いずれにせよ、今回の新型コロナウイルスは急速な拡散と転移を繰り返しているようだが、自然発生的なものにせよ、人工的な生物化学兵器のなせる業にせよ、この種の病原菌による健康被害は戦前、戦後を問わず、これまで何度も人類は遭遇してきているのである。SARSにせよ、MERSにせよ、HIVもそうだが、感染症による被害は枚挙にいとまがない。
こうした過去の感染症による被害の教訓を生かし、非常時の対応策を講じていれば、「見えない敵」に飲み込まれるリスクも抑えることは十分可能であった。マスクや防護服、あるいは人工呼吸器が不足しているというが、過去の教訓を生かしていなかった“つけ”に他ならない。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の例えではないが、今回のウイルス騒動が終息した後には、次なる発生に対する備えを万全にすることが官民問わず、そして企業や個人にとっても欠かせないだろう。
(つづく)
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