NIDを通じたドラモリの活動 ドラッグストアとVCの将来(4)
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日本ドラッグチェーン会(NID)は、1970年に産声をあげ、昨年6月には創設50周年を迎えた。同会の加盟社数は77社、約5,300店舗、総年商1兆4,150億円(ドラッグ部門)の巨大ボランタリーチェーン(VC)に成長した。50周年を前に一昨年9月、事業会社(株)ニッドの代表に、ドラッグストアモリの会長である森信氏が就任。ニッドは、加盟店舗向けにPB商品の開発と供給を行っている。NIDの関伸治会長と商品開発を担うニッドの森信社長の両輪でVCを牽引。業界再編が急速に進む今、求められるVCの役割とDgSの将来像を考える。
業界のシェア争いに変化は起こるか
社名がナチュラルからドラッグストアモリに変わり、会長となった森氏は、NIDだけでなく、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の常任理事も務め、協会の九州ブロック長兼政策推進委員長にも就いている。同氏のJACDSでの発言力も、大きくなっている。
14年6月、改正薬事法により医薬品のネット販売が解禁された。同氏は、そのルールづくりにも携わった。現在は、JACDSで消費税増税後の対応を国に建議する業務も行っている。一方、同社は創業当時から人材育成には注力してきた。現在も同業も認めるほど、社員教育には力を入れ、大きな予算をかけている。
DgSにとって薬剤師や登録販売者は、経営の生命線ともいうべき存在だ。とくに、OTC医薬品の約9割を占める第2類、第3類や、化粧品、健康食品・サプリメントなどの販売は、登録販売者が担う。この点を重視し、NIDでは、加盟社の社員で登録販売者の資格をもつ人材を対象に、「登録販売者・スキルアップ研修」を実施している。この研修に、先頭に立って力を入れているのが森信会長だ。NIDは、「登録販売者集合研修(スキルアップ研修・外部研修)」をネットパイロティングと共催で実施している。
一方、JACDSには、グループ団体として、(一社)日本医薬品登録販売者協会(日登協)があり、同様の研修活動を行っているが、NIDの研修参加者数は日登協の数を倍以上回る。教育研修でも、DgS業界内での森氏の影響力は増している。
マツキヨの離脱から見るNIDへの影響と今後
NIDの関伸治会長(セキ薬品社長)は1月29日、横浜市で開催した「展示商品約定会」の記者会見で、マツモトキヨシHDから退会の意向があったことを明らかにした。今年6月をメドに退会する見通しだという。(株)ココカラファインとの経営統合に向けた協議などが退会の理由のようだとも。VCとしての活動やPB商品開発・供給を行うニッドの業績への影響は、軽微としている。
マツキヨのNID退会のニュースは、即座に薬業界を駆け巡った。しかし、マツキヨの同会退会の話は、これまでにもあった。「あのときは、松本南海雄氏の判断で、退会を思いとどまった」と、大手チェーンDgS元幹部は語る。今後について、「マツキヨは、ココカラファインとの統合後も、M&Aも含め次のステージに向け、動き出すのではないか」とも聞かれる。
また、別のDgS幹部はこう話す。「NIDにはマツキヨと業務提携やFC契約を結んでいる企業が複数ある。業務提携は、01年のサッポロドラッグストアー、05年の中部薬品、FC契約は、11年の(株)ヤスイ、12年の(株)オークワなどだ。こうした企業が今後、どう動くか、注視する必要がある」。
その一方で、こんな声も聞こえてくる。「NIDで影響力を強める反マツキヨの急先鋒森さんにとっては、組織運営がやりやすくなるのではないか。ますます、森さんの発言力が強くなるのでは」(製薬・ヘルスケア部長)。
コスモス、ドラモリの首都圏ガチンコ対決も?
九州を主戦場とする(株)コスモス薬品、NIDを牽引するナチュラルHDも多店舗展開を強化する。ナチュラルHDは、前述した宮城県の「くすりのベル」を買収し、東北にも進出のための橋頭保を築いた。
今後はまず、関西や東北などに出店する。5年以内に年間50店舗程度を新規出店できる体制を整える考えだ。まず手始めに、関西や東北などに出店し、「推奨販売」の考え方をもつ同業のM&Aも実行し、全国に店舗網を広げる方針だ。ナチュラルHDは30年にグループで売上高5,000億円を目指す。
一方、九州の雄コスモス薬品も首都圏の千葉、埼玉、茨城などで郊外型30店舗の出店を公表しており、首都圏でも九州勢同士のガチンコ対決が見られるかもしれない。
DgS業界は、再編が加速し、今後、勝ち残り競争は厳しくなる。大手・準大手のチェーンDgSが勝ち残るためには、全国を視野にドミナント展開する必要に迫られる。今後は、大手DgSチェーンと大手調剤薬局チェーンの業務資本提携などもある、次のステージに突入する。DgSと調剤専門薬局チェーンの組み合わせの前例はすでにある。
マツモトキヨシHDと日本調剤(株)は、08年10月末日、業務提携に向け詳細な協議を開始すると発表したが、事業環境の変化などもあり、提携による具体的な成果を上げることは困難との結論に至った。両社は翌9月に業務提携に向けた協議を終了し、この話は挫折した。
DgS、調剤専門薬局などで業態間競争がし烈を極めることが予想されるなか、VCの機能・社会的役割がますます問われる。
(了)
【北美 慎一郎】関連キーワード
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