トヨタ、「スマートシティー」でNTTと資本提携 新しい街づくりが、豊田家4代目・豊田章男社長の「一人一業」だ!(前)
トヨタ自動車とNTTが、業種の垣根を越えた資本提携で合意した。インターネットやITを活用した街づくり「スマートシティー」の事業で連携する。豊田家には、業祖・豊田佐吉翁が「一人一業」を説いて、代々の盟主は、それぞれの新事業を起業した。次世代技術を駆使した新しい街づくりが、豊田家の4代目・豊田章男社長の「一人一業」ということだ。
GAFAに対抗してスマートシティーを立ち上げる
トヨタ自動車とNTTは3月24日、スマートシティー(次世代都市)の共同開発に向けて資本・業務提携すると発表した。それぞれ2,000億円を出資して株式を持ち合う。トヨタからNTTへの出資比率は2.07%、NTTからトヨタへの出資比率は0.90%になる。
「GAFAへの対抗は大いにある」。NTTの澤田純社長は会見で、米国の巨大IT(情報技術)企業への対抗心をむき出しにした。
GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に共通するのは、いずれもプラットフォーム企業である点。システムやサービスの基盤を押さえている企業のことで、最先端のテクノロジー、ビッグデータを駆使し、サイバースペースを2010年代に支配した。いまや世界中の多くのユーザーが、4社が提供するサービスをプラットフォームとして利用する。
自動車業界では「ネットでつながる車」「自動運転」などCASE(ケース)と呼ばれる先端技術の開発競争が激しい。異業種から参入が相次いでおり、GAFAも毎年、巨額の開発費を注ぎ込んでいる。
トヨタの豊田章男社長には、自動車メーカーが先端技術で優位に立つ巨大IT企業の下請になるのではないかという強い危機感がある。NTTも携帯電話や固定電話だけでは新たな成長は望めない。
インターネットやITを活用したスマートシティーの分野での世界の競争は激しい。豊田社長は会見で「トヨタとNTTが国を背負う」と強調した。自動車と通信業界のトップ連合で先端技術を使った街づくりの主導権を握りたい考えだ。
まず、両社が具体的に実証に取り組む舞台となるのが、富士山の麓の「ウーブン・シティ」だ。
スマートシティー事業は、豊田章男社長の「一人一業」に基づく起業
米ラスベガスの世界最大のIT見本市「CES」に参加したトヨタ自動車の豊田章男社長は今年1月6日、スマートシティー建設を発表した。
〈「ゼロから街をつくり上げるのは、将来の技術開発に向けて非常にユニークな機会になる」。トヨタの豊田章男社長は6日の記者会見でこう強調した。トヨタは車に関わる総合サービス業への転換を掲げる。日本で車の次世代サービスを核にした街づくりは異例だ。
トヨタは実証実験する地域を「コネクテッド・シティー」と位置付け、2020年末に閉鎖予定のトヨタ自動車東日本の東富士工場の跡地を利用する。地区名は「WovenCity(ウーブン・シティ)」とし、初期はトヨタの従業員や関係者ら約2,000人の居住を見込む。敷地面積は約71万m2で21年春の着工を目指す。投資額などは明らかにしていない。〉(日本経済新聞20年1月7日付夕刊)
トヨタが富士山の麓でゼロからつくる「つながる街」の構想は、自動運転の電気自動車を街中で走らせたり、センサーや人工知能(AI)によって住民の健康状態をチェックしたりする。5年以内に人が住めるようにする計画で、実現には新たな情報通信技術が必要不可欠だ。世界中の企業や研究者らの参加を募っている。
NTTは、この街の情報通信の基盤となるスマートシティープラットフォームの構想に関わる。
豊田章男氏は、自社ウェブサイト「トヨタイムズ」編集長の俳優・香川照之氏とCM登場。「ウーブン・シティをベースに新しいモビリティ社会に変革する」と熱っぽく語る。
巨大企業のトップが、自らテレビCMに出演して新規事業を訴えるのは極めて異例。それほど力を入れている。というのも、スマートシティー事業は、豊田家の「一人一業」に基づく、起業であるからだ。
(つづく)
【森村和男】