2024年12月23日( 月 )

作業服のカジュアル化が大ヒット~成長加速へ繰り出す次の一手(後)

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(株)ワークマン

 「WORKMAN Plus(ワークマンプラス)」の成功で業績拡大が続く作業服専門店チェーン、(株)ワークマン。既存の「WORKMAN(ワークマン)」がプロの職人を主な顧客とするのに対して、カジュアル化を打ち出したワークマンプラスは一般消費者を取り込み、売上を押し上げている。2020年3月期業績は売上、利益とも当初予想から大きく上振れする見通しだ。好業績は当面続きそうだが、ライバルからの挑戦も受ける。ワークマンプラス化を加速する同社の次の一手は何か。

マーケティングにSNSを積極活用

 マーケティングではメディアやSNSを積極的に活用している。そもそも、ワークマンが一般客に広がったきっかけがSNSだった。それだけに、SNSの活用をマーケティングの重要な柱と位置づけている。

 昨年9月には、秋冬向け商品の投入に合わせて「過酷ファッションショー」なるイベントを開いた。防風、防寒、防水といった機能をアピールしようと、文字通り雨や雪、強風など荒天時の過酷な環境を再現。風変わりなイベントということもあって、メディアだけでなく多くのインフルエンサーが取り上げ、話題が拡散した。

 昨年7月から取り組んでいるアンバサダー・マーケティングもある。ブログやSNSで情報発信しているワークマンファンが製品開発アンバサダーになり、実際の製品開発に参加し情報を拡散。ブランド認知の向上を図るというもの。「ワークマン女子」と名づけ、女性客の取り込みにも力を入れるほか、キャンプ・釣り・バイクなどアウトドアの各分野でアンバサダーとのコラボ製品を増やしていくという。

 昨年10月からは、店内でQRコード付きのPOPからアンバサダーの製品情報サイトやサイトに誘導し、店員に代わってアンバサダーに製品説明をしてもらう取り組みも始めている。
 アンバサダーは現在20人ほどだが、2020年末までに50人にする計画。今年9月にはアンバサダーと開発したコラボ製品のみのファッションショーも企画するなど、アンバサダー・マーケティングを強力に推し進めようとしている。 

「ワークマン女子」も増加。売り場では女性向け商品を強化する

看板・内装を時間帯でプロ、一般向けに変更 

 勢いに乗るワークマンは、新規出店と既存店改装でワークマンプラス化を加速する。2019年12月末時点の店舗数は858店舗(ワークマン704店舗、ワークマンプラス154店舗)。2025年1000店舗が目標だ。
 1店舗の平均年商はワークマンが1.1億円。ワークマンプラスとなると、路面店で2億円、SCテナントでは3億円にもなる。ワークマンプラス化が加速すれば、業績拡大はまだまだ続いていくだろう。 

 ワークマンプラスを増やす方法は、新規出店や単なる既存店改装にとどまらない。今年3月19日には、「さいたま佐知川店」を改装した「W’s Concept Store さいたま佐知川店」をオープンする。この店舗は何と、1日の時間帯によって看板や内装を変更するという。プロ客の来店が多い7時~10時と16時30分~20時はワークマンの内装と看板、一般客の多い10時~16時30分はワークマンプラスの内装と看板にするのである。同じ商品でも、見せ方を工夫することでプロ向けの作業服に見えたり、一般客向けのアウトドアウエアに見えたりする特性を明確に打ち出す狙いだ。これにより年商3億円を見込む。
 オープンに合わせて、春夏向けの新製品発表会も同店で開く予定。例によって、新聞・雑誌・テレビやブロガー、ユーチューバー、インスタグラマーなどを集め、話題の拡散を狙う。

新通販サイトを開設、店舗受け取りに特化

 デジタル化の取り組みも強化する。3月16日に、店舗受け取りに特化した新しい通販サイトを立ち上げる。受け取り拠点となる店舗についても今後、出店ペースを引き上げる。ワークマンプラスの成功で、都心ターミナル駅周辺の商業施設への出店も可能になってきたため、これまで25店舗程度だった年間出店数を40店舗に増やす。受け取り拠点の増加で利用拡大が期待できるわけだ。新サイトの年商目標は30億円で、このうち8割以上で店舗受け取りを見込んでいる。

 ただ、ワークマンプラスが全国に行き渡れば飽和感も出てくるだろう。移り気な消費者をつなぎとめるのも簡単ではない。

 機能性ウエアのマーケットを狙ってライバルの参入もある。すでにカジュアル専門店が機能性ウエアを強化したり、作業服専門店がSC出店に乗り出したり、ホームセンターがカジュアル化した作業服専門店を出店したりしている。さらに、スポーツメーカーも作業服を手がけたり、作業服メーカーがカジュアル化を進め小売店への販売を強化したりしている。無風状態で新しいマーケットを開拓してきたワークマンにとっては、参入企業との競争という新しいステージを迎えることになる。

(了)

【本城 優作】

(中)

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