2024年12月23日( 月 )

【検証:小池都政】すでに重症者受け入れ不能状態 都が医療崩壊を隠蔽工作か

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声かけ質問にネットでは「不快」の声

 小池百合子都知事に指されない“記者排除状態”が19回目の記録更新をした4月10日、私は会見終了直後に大声で叫ぶ声掛け質問をした。お気に入りの記者が優先的に指される“談合ヤラセ会見”への抗議も込めて、こんな質問をぶつけたのだ。

 「知事、(感染拡大防止)協力金50万円、少なすぎるのではないか。イギリスは300万円ですよ(山中伸弥教授が4月4日のNHKスベシャルで紹介)。こんな額では店を閉められないのではないか。もっと手厚い休業補償を安倍総理に求めなかったのか。怠慢ではないか」

 これにネットはすぐに反応。「小池知事会見 大声野次にネット騒然」と銘打った10日配信のデイリースポーツの記事には、否定的反応が次のように紹介された。

 「(声掛けをした)この場面にネットは騒然とし、『誰?』『記者なの?』『不快』『感じ悪い』『気持ちをざらっとさせられますよね』『悲しくなった』との投稿が相次いだ」

 気に入らない記者は指名しない小池知事の差別的対応を知らない人には、「不快」な「野次」にしか聞こえなかったのだろうが、声掛けを続けてきたのには理由がある。「会見で聞いて欲しい」という医療関係者の情報提供が相次いでいたのだ。

永寿総合病院の院内感染は「人災」~大学病院も受け入れ拒否

4月15日の都知事会見

 指名なし20回目の15日の会見では、こんな声掛け質問をした。「知事、発熱患者が20カ所救急車たらい回しですよ。どう解決するのか。医療崩壊ではないか。(中野江古田病院と永寿総合病院の)院内感染も知事の怠慢ではないですか」。

 90人以上の感染者(12日時点で入院患者69名、職員25名)が確認された中野江古田病院では、4月1日に看護職員の陽性がPCR検査で判明したが、中野保健所が診療停止要請をしたのは2日後の3日で、実際に停止したのは5日だった。医療関係者はこう話す。

 「中野保健所の初動遅れで院内感染が広がってしまった。163人の感染者を出した『永寿総合病院』(台東区)も同じパターンで、院内感染の調査が遅れて集団感染を招いたのです。しかも、中野区の保健所所長も台東区の保健所所長も元は都職員で、あまり有能ではないとの評判だった。現場の指揮官役の保健所長が迅速な対応をしなかった“人災”ともいえます。保健所を監督する都の技官の職務怠慢でもあり、もちろん小池知事の指導力不足の責任も問われます」

 こうした医療関係者の告発をもとに声掛けをしたのだが、4月3日と6日の会見ではこんな質問をした。

 「知事、重症者受入病院の要請、ほとんど断られているじゃないですか。もうパンク寸前で、どうするのですか。パンク寸前状態ですよ。口先だけで実績ゼロじゃないか」(3日)
 「知事、重症者受入病院、ほとんど受入ゼロですよ。エクモ(ECMO/体外式膜型人工肺)で有名な(大学)病院もゼロじゃないですか。権力行使しているのか」(6日)

 このときは、医療関係者から次のような話を聞いていた。

 「新型コロナウイルスに感染した重症者受入の病床が満杯寸前のため、大学病院関係者を交えた会議が都庁で開かれて重症者受入で賛同が得られたが、個別の大学病院に要請したところ、ほとんどが拒否された。まさに『総論賛成・各論反対』の状態。本来なら都の権限を背景に小池知事が受入を各大学病院に毅然として迫るべきだ」

医療崩壊を隠蔽工作の姑息~政権同様「やってる感」演出

東京都区部全域を対象にした広域基幹病院
「都立墨東病院」(墨田区江東橋)

 頻繁に会見を開くようになった小池知事だが、メディア露出急増で「やってる感」演出には成功していても、医療崩壊回避に有効な具体的成果を上げているとは言い難い。“口先”対応は得意だが、肝心要の中身はスカスカともいえるのだ。

 感染者を受け入れている病院の医療崩壊を回避するには、重症者受入病院を新たに確保することとともに、軽症入院患者を転院させることも有効だ。3月30日の臨時会見では、こんな声掛け質問をした。

 「知事の怠慢で墨東病院、(一時的な緊急)外来中止になったのではないですか。『(緊急外来を)対策なしで開けろ』と言ったのか。なぜ軽症者を転院させないのですか」

 この時も医療関係者の情報提供を受けて、第一種感染症指定医療機関である「墨東病院」(墨田区)を29日夜に訪れると、緊急外来中止の告知文書が一時的に貼られた後、すぐに剥がされたことを確認した。医療関係者が内情を教えてくれた。

 
墨東病院の貼り紙

 「感染者受入でキャパオーバー寸前の墨東病院が緊急外来を29日夜に一時中止したが、すぐに都が撤回を指示して貼り紙が剥がされたのです。医療崩壊寸前の状況を隠蔽したともいえますが、軽症者転院などの対策を打ったわけではなかった」

 多くの感染者を受け入れてきた墨東病院でも4月15日に4人の感染者が確認され、院内感染の可能性が浮上した。過酷な状況に対して出した病院側のSOS(緊急外来中止)を都が隠蔽するだけで対応した職務怠慢が招いた人災ではないか。

 なお墨東病院では医療用マスク不足が深刻化、3月2日の参院予算委員会で福山哲郎幹事長が取り上げていた。院内感染防止に不可欠な医療資材確保で都や国が素早く対応しなかったことも、院内感染の一因と考えられるのだ。「やっている感」演出は得意だが、有効な医療崩壊回避の成果が乏しい小池知事や安倍政権(首相)に対しては厳しくチェックしていく必要がある。

サージカルマスク(医療法マスク)の枯渇を通達する墨東病院の院内通知。
2月28日時点の在庫量はわずか1カ月分だった
サージカルマスクの交換は「空箱と引き換え」と通知している
(墨東病院の院内通知)

【ジャーナリスト/横田 一】

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