2024年09月28日( 土 )

与党の圧勝で終わった韓国総選挙(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 新型コロナウイルスの感染が世界中で拡大しているなか、韓国では4月15日に予定通り総選挙が実施された。その結果、与党・共に民主党が16年ぶりに議会で議席の過半数以上を獲得するという予想を上回る結果となった。与党・共に民主党は、今回の総選挙で小選挙区では、163議席を獲得し、前回の110議席に比べて、4年ぶりに53議席を増やすことに成功した。比例代表の17議席を合わせると、与党は180議席を確保することにより、圧勝を収める結果となった。韓国では総選挙で左派政党が過半数を獲得したのは、16年ぶり。文大統領が率いる与党の新型コロナウイルス対策が、有権者の支持を得たものとみられる。

 与党・共に民主党が圧勝した反面、最大野党の未来統合党は惨敗を喫した。未来統合党は、小地域区で84議席を確保するに留まり、前回の105議席と比べて、議席を減らす結果となった。ただ、比例代表では、未来統合党は19議席を獲得し、未来統合党は103議席を獲得した。さらに、次期の野党の大統領候補とされていた黄教安(ファン・ギョアン)党代表、沈在哲(シム・ジェチョル)院内代表、呉世勲(オ・セフン)前ソウル市長などの重鎮が選挙に負けることによって、党の運営に空白が発生したことはもちろん、次の大統領選挙にも赤信号がともった。

 今回の選挙結果は、世論調査などで、ある程度予想はできていたものの、フタを開けてみると、予想を上回る与党の圧勝となった。

 新型コロナで政局が一変する前までは、実は与党にはかなり不利な状況が続いていた。経済政策の失敗で経済が失速していたし、「タマネギ法相」と呼ばれている曹国(チョ・グク)氏の法務相への「ゴリ押し」、北朝鮮との交渉が行き詰まるなど、今年1月時点では、与党の「共に民主党」の先行きは、それほど明るいとは言えず、とても厳しい状況だった。ところが、不利な立場は突如襲来した新型コロナウイルスの感染でたちまち吹き飛んだ。文大統領は速やかに防疫体系を整備しただけでなく、積極的な追跡調査やウイルス検査を実施し、ウイルスの感染拡大を1日30人レベルに食い止めたことで、「世界の模範」になったからだ。今回の選挙結果を巡って、韓国人の間では文大統領は「とてもついている」という冗談がでるほどだ。

 今回の選挙は、新型コロナウイルスが終息していない段階で行われた選挙だったが、どのように選挙が行われたのだろうか。選挙当日、新型コロナウイルスの感染防止のため、有権者は投票場の入り口で検温を受け、消毒剤で手を消毒した後、マスクとビニール手袋を着用し、その後、投票用紙を受け取り、投票をするという徹底ぶりだった。もちろん、他人とは少なくとも1メートルの距離を保つように求められた。検温した結果、体温が37.5度以上ある場合、その人は仕切られたブースで投票しなければならなかった。韓国人は並ぶことにあまり慣れていない国民だが、今回の選挙では、多くの人が選挙に参加し、列をなして投票をしたことが印象的だった。それに、他の国では、多くの選挙が延期されていたのに、韓国では選挙が延期されることなく、かなり大規模の選挙が行われたので、それも世界の注目を集めることとなった。

(つづく)

(後)

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