2024年12月26日( 木 )

「コロナ恐慌革命」以降どうなるのか(2)~グロ―バリズムの幻想(前)

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インバウンドに「浮かれていた」

 「観光立国という国策に踊らされていた」と深く反省するのは、ホテル業を営む是永社長。同社は現在10のホテルを有しているが、そのホテルも稼働率が10%を割っている。「ホテルラッシュになったとき、“これは危険だ”と直感したのだが、優柔不断で判断が鈍ってしまった。手放すべきだった」。同社社長は他者に先駆けた決断をして事業を拡大させ、絶頂期にあざやかに身を引き、今日の栄華を極めた経営者なのだが――

 ある「中国人王」は「コロナの影響でホテル事業が壊滅するとは誰も予想できなかったよ」と悔やむ。この会社は中国人観光客を対象に、まずはクルーズ船に絞ったビジネスモデルを確立した。そして、この事業の行く末を見切って、対象を飛行機による中国人往来客へと舵を切ったのだが、この始末である。「せっかく、家族ぐるみで福岡に移住する決断をして、事業を移行したのだが、残念なことだ。かなりの金を失った」と打ち明ける。3棟のホテルは現在、閉鎖中。商売上手な中国人でも、さすがにコロナにより致命的な打撃を受けるとは予想できなかった。

 老舗ホテルの支配人・酒井は震えながら惨状を語る。「2月末は見通しが甘かったです。3月になり、日を追うごとに宿泊客が減り続け、宿泊率は15%です。やはりグローバル化によるインバウンドに過大な期待をしたツケがまわってきました。ウイルスだけでなく、過去にも他国との対立で、お客さんが急減したという苦い経験があります。こうしたリスクを考慮しなかったのは情けない限りです。浮かれすぎていました。もう一度、『宿屋』としての原点に戻ります」。

 コロナウイルスの襲来により、ホテル業界が壊滅するのではない!グローバル化の流れに乗って異常にインバウンドに傾倒したことがホテル業の危機を招いたのである。酒井が強調する「宿屋」の原点に立ち帰ってビジネスモデルを構築しないとホテル業の未来はない。

「救助の手」は日本政府に頼るしかない

 新聞が「政府がアフリカに滞在の日本人約300人を帰国させた」と報じていた。しかし、世界には帰国のめどがたっていない邦人が約750人いるという。

 日本政府がチャーター機を派遣して武漢の日本人を脱出させたのは記憶に新しい。外国では誰も日本人を守ってくれない。滞在国でも当てにならないことが立証された。しかし、日本政府は「アフリカの彼方」まで、日本人が滞在していれば必死で救助の手を差し伸べてくれるのである。

 「グローバル化の時代は、世界のどこにでも飛び回ることができ、活躍できる」と過信して海外に定住する。その行動パターンを批判しているのではない。世界中にコロナが蔓延するという異常事態時に平然と踏みとどまる決断をした者は稀有であろう。現地に家族がおり、帰化していれば展開は違ってくる(現地で守ってもらえるだろうが…)。日本国籍の方々は不安にさいなまれて「日本に帰りたい」と泣き叫んだに違いない。

 佐々木は結婚40周年を祝し、豪華客船ダイヤモンド・プリセス号で東南アジアツアーに参加した。しかし、日本に近づいた際、乗客の中にコロナ発症者がいることが判明。上陸間近で2週間船に「幽閉」された。

 佐々木は「いやぁ、本当についていた。コロナ発症が判明した場所が日本ではなく、フィリピンや香港周辺の船中で起きていたらと思うとゾッとする。一体、どういう処置をされていたかを考えるだけでも怖くなってくる。2週間も部屋に監禁状態となり、船員たちの対応に八つ当たりしたくなる心理状態に追い込まれ、頭がおかしくなっていただろう。日本が見えていたから頑張れた」と語る。

(つづく)

※登場人物はすべて仮名です

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