2024年11月22日( 金 )

ロケットで米国まで30分実現か シリコンバレーで注目する投資先とは(前)

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ペガサス・テック・ベンチャーズ共同代表パートナー&CEO
アニス・ウッザマン 氏

 今までになかった技術を生み出して、社会の仕組みを変えてきた米国シリコンバレーのITベンチャー企業。最先端技術が生まれる米国IT業界で、ベンチャーキャピタルが注目するテクノロジーとは何か。多くの日系大手企業が投資しているITベンチャーの動向を、シリコンバレーに本拠を置くPegasus Tech Ventures(ペガサス・テック・ベンチャーズ)の共同代表パートナー&CEO(最高経営責任者)・アニス・ウッザマン氏に聞いた。

日系大手企業と提携

 ペガサス・テック・ベンチャーズ(以下、ペガサス)は、米国シリコンバレーを拠点に世界16カ国に展開するベンチャーキャピタルだ。大手企業からベンチャーに向けての投資を仲介し、約1,600億円規模の資金を運用している。

アニス・ウッザマン 氏

 日本ではアイシン精機(株)や双日(株)など、台湾ではASUS(エイスース)などの世界約35社のパートナー企業と約24件のベンチャーファンドを米国で立ち上げ、未上場ベンチャー約170社に投資している。
 米国では民泊仲介サービスのAirbnb(エアビーアンドビー)や遺伝子検査の23andMe(23アンドミー)など、日本では家計簿アプリの(株)マネーフォワードなどに投資してきた。30億~50億円規模でファンドを設立し、10年で株式の売却を目指す。

 「ベンチャーキャピタルがファンドを運用する投資(CVC4.0)では、投資資金リターンだけではなく、大手企業とベンチャー企業が技術革新に向けて戦略的関係を築けることが大きい。さらに他社に先駆けた、新しいサービスや商品の日本展開やM&A(合併・買収)も投資目的だ。日系企業として、ベンチャーの新サービスのアジア展開も実現している」とペガサスの共同代表パートナー&CEO・ウッザマン氏は話す。2020年度は日本で年間100億円、ベンチャー1社あたり5〜10億円の投資を見込んでいる。

米オサロ社への投資で唐揚げ弁当工場を自動化

 2015年2月にペガサスと共に22億円のベンチャーファンドを設立した電子・電気機器商社のイノテック(株)は、ロボットアームを自動で動かす人工知能( A I )のソフトウェアを開発する米国Osaro(以下、オサロ)に、ペガサスとのファンドを通してオサロの約10億円のファンドに投資した。その後、この投資をきっかけにイノテックはオサロとの事業提携を進めパートナーシップを締結した。
 オサロは、Paypal(ペイパル)創業者のピーター・ティール氏とYahoo創業者のジェリー・ヤン氏が創業初期のシード投資を行った米国マサチューセッツ工科大学発のベンチャーだ。

 たとえばオサロのAIが搭載された産業用ロボットの前に、三角形、四角形、丸型の積み木を置く。そして、人が三角形の積み木を型に入れる様子をロボットに見せると、オサロのAIのソフトウェアはロボットのカメラから積み木の積み方を読み取り、学習する。すると、ロボットは人の助けを借りずに、初めて見た四角形や丸型の積み木を型に入れられるようになるのだ。

 この技術に注目したイノテック社は、弁当工場の自動化に向けて、唐揚げを弁当箱に詰めるロボット開発を目指した。「唐揚げはデコボコしていて、強くつかむと汁が出てしまうため、機械で詰めるのが難しい。しかし、オサロは約6カ月で、(株)デンソーの産業用ロボットに搭載できるAIのソフトウェアを開発した。
 自ら学習し工場でモノをつかんで詰めるAI技術は、作物の収穫や製薬工場、アパレル業界の服の分別などに展開していく。これをきっかけにイノテックはロボットビジネスユニット事業を立ち上げ、これから数年間で数十億円規模のビジネスをつくり上げていくだろう」とウッザマン氏は話す。

 1つひとつの動きを個別に設定したロボットを製造工程ごとに導入するとコストが高くなりがちだ。しかしAIで幅広い動きを学習できるロボットを導入すると、低コストで製造業無人化に向けて自動化できる。

(つづく)

【石井 ゆかり】


<COMPANY INFORMATION>
所在地:2680 N. 1st St., Suite 250 San Jose, California 95134 United States
代 表:Anis Uzzaman
ファンド運用開始:2011年5月

<プロフィール>
アニス・ウッザマン(Anis Uzzaman)

東京工業大学を卒業後、米国の大学にて修士号、首都大学東京にて博士号を取得。IBMなどでのマネジメントを経て、シリコンバレーにてペガサス・テック・ベンチャーズを設立。インターネット、モバイル、ソーシャル、クラウドなどの分野で優れた最新技術を持つ世界中のベンチャー企業に対し投資を行っている。

(後)

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