2024年12月22日( 日 )

コロナ禍が終わったあとの世界情勢はどう変わる!?(前)

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DEVNET INTERNATIONAL 世界総裁・明川文保氏

 国連NGOのDEVNET INTERNATIONAL(以下、デヴネット)の世界総裁の明川文保氏は、中国やベトナム、タイなどの国家との交渉を通して、アジアの社会発展のため多くの国際協力を実現してきた。各国の社会の動きを自分の目で見つめ、数々の海外事業を手がけてきた百戦錬磨の明川氏。インタビューでは、コロナ禍が終わったあとの世界はどう変わるのか、明川氏自身の想いを聞いた。

中国は経済危機で習近平政権は交替か

 ――これからの中国の政権は、どう動くと見ていますか。

明川 文保 氏

 明川 今回の新型コロナウイルスの経済危機の責任を追及され、習近平国家首席は退任に追い込まれる可能性があります。これまでの中国は、経済成長で国民の目が経済に向いて政権打倒の動きは表面化しませんでした。しかし延期された全国人民代表大会(全人代、国会にあたる)が開かれる時には、コロナ不況で議会が難航し、習近平政権の力は弱まるでしょう。国家主席の任期撤廃で、「永久」任期が可能になった習近平氏。一方ではこの決定で、政権に反発する動きが強まっているはずです。

 これから中国で懸念するのはコロナウイルス禍で弱まった経済の立て直しと14億人の食料危機です。中国から多くの食糧を輸入している日本も、他人事ではありません。豚コレラ及びアフリカ豚コレラで豚肉の値段は3倍に値上がりしています。さらに、ケニアで大量発生したサバクトビバッタが食糧を狙って東進、中国に向かっています。中国人のニーズの多い豚肉が足りず、外国から輸入しなければ、とても追いつきません。困った習近平氏は側近を通じて、「世界から牛・豚の動物タンパク質を調達したい」と非公式にデヴネットに連絡してきています。

国家主義が弱まり共産党も右派へ

 ――もし政権が交代すると、中国の政策はどう変わりますか。

 明川 次の中国の国家首席は、江沢民派が有力だと見ています。中国政府は膨大な外貨を使って一帯一路の沿岸諸国に多額投資してきましたが、コロナ危機で経済が破綻して返済される見込みが立たなくなりました。政権交代後は、一帯一路プロジェクトで今まで築いた諸外国とのパイプは、急激に細くなると見込んでいます。

 海外投資の成果が期待薄の今、コロナウイルスで疲弊している国内の立て直しが先決です。内需拡大や貧富の差の縮小に向けて、国内政策を強化するでしょう。中国は日本に比べて外資が参入しにくいので、今まで築いた経済や技術、資金力を維持したまま、10年後には中国が米国を超える時代になると考えています。国家主義が弱まり、共産党も「右派」に傾くのではないでしょうか。

日本国民を守るポリシーを持つべき

 ――日本は、どのように中国と関わるべきでしょうか。

 明川 中国が開放経済に向かう1978年に、国務院副総理の鄧小平氏に招かれたパナソニック(株)創業者の松下幸之助氏は北京に工場をつくり、中国に技術を教えました。しかし、社会秩序を守ることや義理を立てるという日本人のような感性は現地にはありません。今では日本からの技術がもとで電化製品の世界シェアは中国に抜かれ、前・胡錦濤政権の時に、特許や設備、技術ノウハウなどすべてをただ同然で置いたまま追い出されてしまったのが実態です。

 1984年の中曽根政権下、安倍晋太郎外相の指示を受け、第二次円借款:約1兆5,000億円を橋渡し、中国経済の活性化に協力しました。デヴネット創始者ロベルト・サビオ氏にそのことを話した折に、体制の違う中国に、なぜそこまで技術を提供し、投資したのかと聞かれました。この投資の結果を、話さずとも分かっていたのでしょうね。

 政治家は、「日本国民を守る」というポリシーを持つべきです。技術やノウハウをどこまで相手国の企業に渡すのか、相手国に協力できるのかをシビアに考えるべきではないでしょうか。デヴネットの国際協力事業ではそのことを配慮して、私が、アジアで水産加工場をつくった時もノウハウが山盛りの工場のなかには現地の見学者を入れないようにしていました。

 経済発展で生活が豊かになった人々が増えた今こそ、温故知新、「衣食足りて礼節を知る」。国際社会で礼儀や節度をわきまえられる国になることが、中国が次の進歩の階段を上がることになるのではないでしょうか。

(つづく)

【石井 ゆかり】

(後)

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