シリコンバレー発、AIでアフター・コロナの世界も丸見え!?
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人工衛星画像から、AIで経済や軍事外交を先読み
Google Earth(グーグル・アース)を初めて見たときの「丸見え感」を、覚えているだろうか。宇宙から人工衛星で見たら、地球で起こっていることはほとんど何でも見えてしまう時代。だが、見えるのは今だけではない。AI(人工知能)を使えば、これからの経済や軍事外交の動きまで先読みできるようになった。
シリコンバレー発AIベンチャーのOrbital Insight(オービタルインサイト)では、Google Earthのような衛星の地理空間画像の上に、スマートフォンや車のGPS(全地球測位システム)や、出荷・企業財務・小売データなどを合わせてAIで世界の動きを分析している。ほぼリアルタイムで世界経済や軍事の動きが目に見えるようになるため、「米国国防総省イノベーション・ユニット(DIU)、米国空軍、日本政府も利用している」とオービタルインサイト・ジャパン(株)の日本ゼネラルマネージャーのマイク・キム氏は話す。
空港の客足から、飛行機燃料の相場を予想
今ニーズがとくに高まっているのは、銀行、証券、保険会社などの金融業界だ。コロナ不況がどこまで深刻なのか、情報の透明性がなく、先行きが見通しにくいからだ。たとえば、カナダロイヤル銀行は、衛星画像から空港の客足をチェックして飛行機燃料の相場の動きを予想しているという。
企業の業績も、衛星画像から予想できる。たとえば東京ディズニーランドでは、利用客が増えると駐車場に車があふれる。駐車場にある車の数をAIで分析すると、客足の増減から売上の動向がわかるようになる。
衛星画像のAI分析は、石油相場の予想にも使われている。中東や中国など、世界各国にある26,000個以上の石油タンクの貯蔵量がどう動いているかをモニターしているため、ニュースで報道される前に石油需要の動向がわかるからだ。
コロナが終わった後の世界の動きは?
驚くほどにグローバル化されている、加工食品の原料。スーパーに並ぶ加工食品も、世界各国の原料からつくられているのはよくあることだ。原料の買い手の製造企業と売り手の生産者の間には、仲介も多い。だから今回のコロナ不況でも、サプライチェーンのどの部分がダメージを受けているかが見えにくい。「米国のUnilever(ユニリーバ)では、窓口の商社がどこから食品原料を調達しているかを世界地図ベースで農場レベルまで追跡し、食品原料の購入先を決めている」とキム氏という。
オービタルインサイトの日本拠点であるオービタルインサイト・ジャパン(株)は、伊藤忠商事(株)や、三菱商事(株)が出資する米国ジオデシックキャピタル、スカパーJSAT(株)ほか4社が出資している。
東京海上日動火災保険(株)は、オービタルインサイトと提携して、台風や豪雨でどのエリアの被害が大きかったかを衛星画像からAI分析し、保険金の算定を効率化している。保険業界では、「どのくらい災害リスクがあるか」を過去の災害時のデータからAIで予想して、保険プランに活用するニーズが伸びている。
「中国北京のある地区を見ると、コロナの影響で底だった1月28日時点の衛星画像と比べて、3月6日時点での車の交通量は約208.5%も回復している。車や人、流通のデータからの中国経済の回復モデルができたら、日本や米国がコロナから回復した時に、モノやサービスのニーズや相場がどのように動くかを予想できるだろう」とキム氏は話す。
【石井 ゆかり】
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