2024年11月24日( 日 )

静岡4区補選で〝浮き彫り″~安倍政権の「空虚なコロナ対策」

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深沢 陽一 氏

 自民公認で公明推薦の深沢陽一・元県議(43)が初当選をした「静岡4区補選(4月26日投開票)」で、安倍政権の空疎な新型コロナウイルス対策が浮き彫りになった。望月義夫・元環境相の死去にともなう今回の補選は、「望月先生の後任」と一貫して訴えた深沢氏が勝って当然の“弔い合戦”で、野党統一候補の田中健・元都議(42)との実質的な一騎打ちを約3万2千票差で制したが、安倍政権の場あたり的なコロナ対応によって、圧倒的優位な選挙とは思えないほどの守りの選挙を強いられていたのだ。

  告示3日前の4月11日、現地入りした小池晃書記局長は、制限付30万円給付を「複雑すぎてわからない」「国民に分断を生む」と厳しく批判すると、田中氏も「簡潔に迅速に10万円を給付する」と相手候補との違いを際立たせた。すると、野党の要求を丸飲みするようなかたちで公明党も方針変更を安倍首相に迫り、受け入れることを余儀なくされたのだ。補選の真っ最中に、野党側の要求が政権与党のコロナ対策に反映されたのだが、これを受けて深沢氏は選挙戦最終日の25日、野党の要求に応えたことを成果とアピールする訴えをしていたのだ。

 「(10万円一律給付への方針変更について)安倍総理が『今回は国民から与野党を問わず、さまざまな声が寄せられた』と説明。『それ(条件付30万円給付)は駄目だ』という声が寄せられ、政府が応えた。これが大事なことだと思います」。

 前代未聞とはこのことだ。一強多弱を謳歌してきた安倍政権はこれまで野党の主張をほとんど無視し続けてきたが、今回の補選では野党の駄目出しの声に応えた政権の姿勢を前面に押し出していたのだ。

 深沢氏は最後の囲み取材でも「有権者、とくに飲食店の皆さまから『本当に経営状態が厳しい』『今の国の制度では救われない』『消費減税をしてほしい』という要望が寄せられた」と述べ、政権のコロナ対策への批判にさらされたことを認めた。

選挙運動を行う田中健氏

 野党側の成果はほかにもあった。「消費税は5%に戻す」が持論の田中氏は「自粛と補償はセット」などと安倍政権のコロナ対策を批判する一方で、消費減税も訴えていた。最終日の囲み取材で、私が「(消費税5%減税を野党選挙協力の条件にする)山本太郎代表も応援に来れば良かったのではないか」と聞くと、「来てほしかった」「私個人的にもお願いをさせてもらった」と田中氏は答えた。

 今回の補選には間に合わなかったが、消費減税も訴える野党統一候補をれいわ新選組も含めて支援する環境整備が一歩進んだといえる。

 野党幹部からも山本氏に期待する発言が出ていた。11日に小池氏と現地入りをした立憲民主党の大串幹事長代理は、「安倍政権の対策は後手後手で場あたり的。布マスク配布に466億円を使うのなら、医療体制強化や検査数増加や生活費支給をしてほしい。補選は安倍政権が是か非かが注目される国政選挙。『安倍総理は何をやっているのだ!』という声を田中候補に託してほしい」と応援演説で訴えたが、街宣後の囲み取材で「田中候補は消費減税も訴えているが、山本太郎代表に改めて協力要請を呼びかけることはないのか。今までは消費減税が(れいわ新選組を含めた野党選挙協力の)ネックだったが、田中候補はクリアしている」と私が聞くと、大串氏はこう答えた。
「『山本太郎氏が安倍政権と対峙していきたいと考えている』と思うのでぜひ、協力してほしい。田中候補も消費減税を訴えているのでぜひ、山本代表には応援をしてほしい」。

 国民民主党の玉木雄一郎代表にも4月22日の会見で同じ質問をしたが、「ぜひ応援いただきたいと思います」と同様の回答だった。

 感染拡大を受けて支持拡大の原動力といえる全国ツアーを2月から自粛しているれいわ新選組だが、それでも支持率は野党第二党の国民民主党と同程度を維持。ネット上での積極的な発信も続け、4月6日には「『真水100兆円』で、徹底的にやる! 出歩くな、自粛しろの代償は、国が補償しなければなりません」と銘打った「コロナ緊急提言」を発表していた。「消費税ゼロ」や「1人あたり20万円の現金給付」や「イベント自粛や飲食店、中小零細・個人事業主と労働者への損失補てん」などの緊急対策を列挙。「自粛と補償はセット」と強調した田中氏や応援弁士の野党幹部の訴えと重なり合う内容であり、れいわ新選組が野党共闘(選挙協力)をしてもまったく違和感を抱くことはないのだ。

 今回の補選では実現しなかったものの、れいわが7月の都知事選や次期総選挙などで野党共闘(選挙協力)をするのか否かが注目される。

【ジャーナリスト/横田 一】

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