事業環境悪化にコロナが追い打ち~暗雲漂うブライダル業界(4)
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近年、若者人口減少や未婚率の増加などで国内の婚姻件数が右肩下がりで推移するなか、苦戦を強いられているのがブライダル業界だ。そこに追い打ちをかけるように、今年に入ってから“コロナショック”が勃発。この影響で結婚式・披露宴の延期や中止が続出し、業界としては致命傷となりかねない事態に陥っている。業界各社はこの苦境を生き延びることができるのか――。
あまりに大きいコロナショック
これまで業界としてあまり明るい話題に恵まれなかった感のあるブライダル業界だが、ここにきて、さらなる衝撃が襲いかかっている。新型コロナウイルス感染症拡大による影響――いわゆる“コロナショック”だ。
新型コロナの何よりの恐ろしさは、その感染力にある。感染拡大防止のためには人と人との接触を遮断しなければならず、「密閉」「密集」「密接」のいわゆる“三密”を避けることが効果的だとされている。国も4月7日には緊急事態宣言を行ったが、その対象地域は当初の7都府県から、16日には全国へと拡大。不要不急の外出自粛や店舗の休業要請、企業へのリモートワーク化を呼びかけるなど、多方面に影響をおよぼしている。
こうした事態を受けてブライダル業界では、参列者らの感染を防ぐため、結婚式の延期や中止を決めるカップルが続出。各式場には、キャンセル料や日程変更に関しての問い合わせが増えているという。結婚式場自体は、今回の緊急事態宣言にともなう休業要請の対象外ではあるものの、最大手のT&Gをはじめとした業界各社では、緊急事態宣言期間中は全国の式場を休業・閉鎖するところが相次いでいる。福岡で結婚式場を運営する企業の代表も、「3月以降、予定していた式のすべてがキャンセルになった。緊急事態宣言の期間が明けるまでは、営業時間短縮や臨時休業などで対応している」とコメントする。
だが問題は、緊急事態宣言期間が明けて、以前と同じように結婚式・披露宴が行えるかというと、そうはいかないことだ。新型コロナの収束自体がいつになるかのメドも立たず、たとえ収束したとしても、式を挙げる側のカップルも今回の件で、経済的な余裕がなくなっていることも想定される。コロナ前の状態に戻るまでどれだけの期間を要するかがわからず、挙式・披露宴の回復は先が見えない。
ブライダル業界は、装置産業でもある。結婚式・披露宴を挙げようとするカップルが式場を選ぶ際のポイントはさまざまあるが、何といっても式場の施設そのものの魅力も大きい。人生における晴れの門出を、できるだけ新しくキレイな施設で迎えたいという意識は今なお根強いからだ。そのため、老朽化してきた施設のリニューアル・建替えなどが常に求められ、体力的に余裕があるところでないと、競合他社と戦い、勝ち残っていくには難しい面がある。加えて、“ハコ”だけ立派でもダメで、相応のホスピタリティの提供が求められる業種でもある。つまり、いかに優秀な人材を確保しておけるかが重要なのだ。施設と人材の両輪がそろってこそ結婚式場は成り立っているのであって、それぞれにかかるランニングコストは相当なものになる。つまり、今回のコロナショックによる影響が長引けば長引くほど、挙式・披露宴の施行ができずに収入が見込めないまま、費用だけは発生し続けるというジリ貧に陥っていくだろう。業界各社にとっては、まさに致命傷だ。
結婚式場と同じように、施設と人材とで成り立っているホテル・旅館業界では、すでに今回のコロナショックによる倒産事例も出てきている。今後、ブライダル業界でも同じように、淘汰・再編、そして上位企業による寡占化が進んでいくかもしれない。
(了)
【坂田 憲治】
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