【BIS論壇】国家情報局創設、その3

 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は6月30日の記事を紹介する。

 高市政権が注力している国家情報局設置がいよいよ7月から動き出す由。しかし国家安全保障法に基づき第二次世界大戦直後の1947年に設置された米国のCIA(中央情報局)に比べ、79年と大幅に出遅れたことは否めない。さらに英国のMI6(秘密情報局)、ロシアのSVR、イスラエルのMossadなどに比べても出遅れている。これらの名だたる先進諜報機関に対抗し、そのギャップを埋めることは容易でないことをまず肝に銘じるべきだ。

 元共同通信記者で諜報に関する著作もある春名幹男氏は「高市政権は維新との連立合意に基づき、27年度までに『対外情報庁』設置と『スパイ防止法』の2つの公約に取り組む。 しかし日本がCIAをまねたかたちで『対外情報庁』を設置すべきだと考えていたらとんでもない間違いだと思います」と述べている。

 そもそもCIAは職員数2万人、年間予算100億ドル(1兆6,000億円)以上ととてつもない規模である。しかも工作部門、情報分析部門、科学・技術部門などをそろえ、機能が充実している。いきなり外国に工作員(スパイ)を派遣するのは危険だ。十分な研修と訓練を積む必要があるし、1人の工作員に少なくとも1人の防諜要員を付けて、身辺の安全を保つ必要がある。 さらにCIAは情報収集とは別に秘密工作をやってきた。日本でいえば戦前・戦中の特務機関がやっていたような工作だ。日本が設置する対外情報庁は、秘密工作は禁止しなければならないだろう。しっかりと検討を重ね、何年もの準備期間が必要だと力説しておられる。

 インテリジェンスの専門家と目される東京工科大学・落合浩太郎教授は「日本は積極的にヒューミント(人的情報)に取り組んでおらず、インテリジェンス機関全体の規模や予算の面でも先進国におくれている。人財育成のほか組織が硬直化しているのは問題だ。内閣情報官のポストは警察庁が独占し、内調は各省庁の出向組が幹部だ。このような点を改善しなければ仏作って魂入れずになりかねない。一方、対外情報機関が日本国民を収集対象にする可能性がある。国会の監視が不可欠だ」と強調しておられる。(日経6月26日)

 ビジネスインテリジェンス(先端経済経営情報)を国内外で40年近く研究してきた筆者としては、高市内閣は、国家情報局設置に際し、まず諜報員の情報教育を強化すること。さらにカーター政権のCIA長官ターナー提督が「経済情報(ビジネス・インテリジェンス)が国防情報よりも米国の国防と国家安全保障にとってより重要になる」と強調した先見性だ。この際、高市首相が国防情報に加え、日本の経済低迷を脱するためにまず経済情報の収集活用に注力することを強く提言する次第だ。


<プロフィール>
中川十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)。

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