2024年12月26日( 木 )

「コロナ恐慌革命」以降どうなるのか(11)~「時代規定」を確認しよう(前)

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 「現代」のスタートは1929年の「世界大恐慌」からと言われている。第一次世界大戦が終了して「戦争特需」で好景気に湧いた。その「戦争特需」が終わったところでニューヨーク株暴落から第二次世界大戦へ“まっしぐら”となるのである。ここでまた世界の体制が変わっていく。これについてはあとで触れる。1929年から「現代」と呼ばれているが、今年でもう91年経過している。若い世代から言わせれば「遠い過去」である。これからは1929年以降を「前現代」と置き換えられるかもしれない。

 現代に「コロナが襲来」し、地球上すべての人類に戦慄を与えた。今後、【コロナ襲来】前には戻れないと専門家たちは異口同音に語る。これが「コロナ恐慌革命」元年になるのである。時代認識を共有する目的で今回の(11)と次回の(12)をまとめてみた。

微妙な天罰を与えた「コロナ様」

 「コロナ様」による世界を制圧せんばかりの破竹の勢いをみて、「コロナ様が人類がこれまで築いてきた文明を転覆しようとしている」と考えると、あまりのおそろしさに悪寒がして寝込んでしまった。ところが風向きが変わり、コロナ様が「もう一度、人類にチャンスを与えよう」と心変わりしてくれたので助かった。表現をかえれば「首の皮一枚つながった」となる。しかし、ここで人類が性根を入れ替えないと、コロナ様がお怒りになり、一挙に壊滅的な打撃を人類に与えてこられるだろう。

 「温情」を与えてくれたからといっても人類が平穏に過ごせるわけがない。政治面でいえば非情な変革が迫られている。まずは近々、北朝鮮の統治者の動きが明確になるだろう。また、全国人民代表大会において習近平国家主席がポストを維持できるか怪しい。アメリカのトランプ大統領も再選の可能性は低いとみる。アメリカと中国を激突させ、人類の英知が上手に活用されるかどうかをコロナ様は冷酷に眺めておられるのである。

 2020年が「新現代」(近々、この2~3年の内)スタートの年と言われるようになるだろう。人類の生命は「首の皮一枚つながった」と現状評価をしたが、各国では急ピッチで大変革が進行している。国家政治体制が揺れ動いているからトップ権力者たちの地位が揺らいでいるのは当然である。忘れていた。ロシアのプーチン大統領もスターリンによる“共産党独裁政権”を超える長期政権を目指しているが、達成できるかは疑問。

 コロナ様の襲来で、どの国も経済が“ガタガタ”となり、各国の国民たちは生活の苦しみにもがいている。食えなければ誰でも「抵抗行動」を起こす。そうなれば現状維持に躍起になっている権力者が万全でおられるはずがないのである。コロナ様の凶暴な動きはストップする風向きとなってきたが、国家体制の変革はいま始まったばかりである。

第一次世界大戦が全ての封建政治体制を粉砕した!

 「前現代」の始まりとなる1929年の株暴落に始まる世界恐慌の15年前、第一次世界大戦が勃発した(1914年7月~1918年11月)。この戦いにおいて封建的国家体制が完全に粉砕された。1800年を境に、どの国の経済体制も資本主義が発展して導入され、それは労働階級の増大を伴っていた。

 第一次世界大戦の対戦国を組み分けすると「此方(こなた)!連合国」の中核はフランス第三共和制、グレートブリテン及びアイルランド連合王国、ロシア帝国、あとから参戦したアメリカ・日本、イタリアなどとなる。片や(かたや)中央同盟。この中心はドイツ帝国、オーストリア・ハンガリー帝国が担う。あとにオスマン帝国、ブルガリア帝国がいた。

 連合国は政治体制において議会制民主主義を導入した国々が多い(ロシア帝国も含まれるが)。中央同盟陣営は大半が封建主義帝国国家だった。それと同時に永年の憎しみ合いの戦争を繰り広げてきた。特にフランスとオーストリアは“犬猿の仲”。過去にさかのぼるとナポレオンが皇帝だったフランス第一帝政時代には、宿敵として戦争を繰り広げてきた。少なくとも第一次世界大戦に突入する前、この2カ国は約120年戦争を行っていた(1700年代を入れるとまだ長期化する)。

 まず「勝ち組」の明暗に触れる。この戦争を通じ、アメリカが世界の覇権を握る基礎を固めた。日本は成り上がり、世界の列強の下位の座についた。イギリスは国力の低下と威信を下げた。勝利組だったロシア帝国は崩壊してレーニンが指導したボリシェヴィキ政権(ソ連)が誕生した。このソ連は前現代においてアメリカの強力なライバルとして変容する。

 中央同盟の末路は哀れとしか言いようがない。まずドイツ帝国に革命が起きたが、鎮圧されて議会主義国家へと移行した。しかし、その後、ヒトラーによる独裁政権が誕生して第二次世界大戦の一方の旗頭となる。その他は「みじめ」。ヨーロッパ中央部において栄華を極めたオーストリア・ハンガリー帝国は「木っ端微塵(みじん)」となり、現在に至るまで権威の復活はない。オーストリアはヒトラー・ドイツの植民地化になり下がってしまった。ハンガリーはソ連の傘下となった。

 オスマン帝国はヨーロッパとアジア・アラブにまたがる1000年に及ぶ君臨の時代が“無き者”となった。そして、ブルガリアもまたソ連の植民地状態になったのである。

 最後のおさらいをしよう。1914年の第一次世界大戦が勃発する時点では当時、少なくとも世界の先進地域と見られていたヨーロッパの大半の国々は王政帝国という封建政治体制を敷いていた。第一次世界大戦の最大の“功労”は「帝国」という封建体制を駆逐したことにあるのだ。

膨大な犠牲を強いられても「不屈」、強かな「復元力」を持つ人類

 第一次世界大戦の犠牲者は戦闘員約900万人、民間人約700万人の総計約1600万人と発表されている。これでは、どの国も疲弊するはずだ。しかし、さらに不幸な追い打ちがあった。通称スペイン風邪。実際はインフルエンザの一種とのこと。これが世界に蔓延した。

 各国は戦争により医療制度に支障をきたしており、また、当時の医療水準ではワクチンがなかった。二つの理由で世界の病死者数は1700万人から5000万人にのぼるとされている(1億人という説もある)。ダブルパンチを受けたのだから、人類はへこたれるはずなのに約20年で再び第二次世界大戦を起こした。これが前現代のスタートだった。

(つづく)

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