【コロナと対峙する企業】興和~アベノマスク狂騒曲に乗ったばかりにあれこれ詮索されるハメに(中)
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ネットでは、安倍首相=昭恵夫人との関係を詮索される
興和の三輪芳弘社長は3月26日、総理大臣官邸で開かれた「集中ヒアリング」に招かれた。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた経済対策の検討に向けて安倍晋三首相が業界の関係者から意見を聴く会合だ。
マスクの生産を手がける医薬品メーカーの興和は、マスクを増産しても中長期的に収益が見込めないとして、国による具体的な備蓄計画などを示すよう求めた。
会合後の囲み取材で、三輪社長は「需要に応えられるよう、工場のラインを増設するなどして、3月に1,500万枚、4月は5,000万枚のマスクを生産できる予定だと報告した。日本の危機でもあるので、一生懸命頑張りたい」と話した。
アベノマスクの配布が始まった途端、妊婦用マスクに不良品が見つかり、配布停止に追い込まれた。マスク生産を受注していた興和と伊藤忠は4月24日までに、未配布分を全量回収することを決めた。
受注金額がもっとも多かった興和は批判の矢面に立たされた。首相官邸で開かれた集中ヒアリングに先立ち、興和はガーゼマスクを国内に月5,000万枚を供給することを目指すと発表した。
〈ミャンマーにある協力企業の工場で、繊維製品の生産ラインをマスク製造に転用する。不織布マスクの生産設備も増強しており、3月中に従来よりも月1,200万枚を増産できるようにする〉
(共同通信20年3月5日付)
興和はマスクをミャンマーで生産していた。安倍首相の昭恵夫人がミャンマー支援に積極的なことから、厚労省が忖度して、興和と随意契約したのではないかと、ネットは大炎上した。アベノマスクの生産に全面協力した興和は”安倍銘柄”と見なされたのだ。
「完全な逆ザヤ。これで批判まで受けたら正直たまらん」
興和の三輪芳弘社長は、『週刊文春』(20年5月7日・14日ゴールデンウィーク特大号)の「アベノマスク検証」に応じて、率直に語っている。引用してみよう。
――受注した経緯について
〈うちはもともと防護服をつくっていたので、その縫製について経産省に説明にいっていたら、話の流れで布マスクも『お願いします』と言われた。その後、マスクチームから正式に頼まれました。値段がわからないので『注文書をいただけませんか』と頼んだけれど、書いてくれませんでした。ただ日本の一大事なのでお引き受けしたんです〉――生産について
〈頼まれたのは千五百万枚。途方もない量なので、ミャンマーやベトナム、バングラデシュ、日本から生地を集めた。確かに伊藤忠やマツオカにも、一部渡しました。彼らがどこで生産しているかは知りません。
うちは五十年以上つきあいのある中国の業者に『日本のために頼む』と、一万人を集めてもらい生産をお願いした〉――不良品の回収について
〈(検品について)1ついえるのは、私ども日本人社員は今回、検品のために中国工場に行かせてもらえなかった。頼んだけど(コロナ禍のため)駄目だった。だから、全部中国人にお願いした。ただ、あまりにもガンガン言われたので、もう一回検品を日本でやり直すことにした〉――批判について
〈金額のことをいろいろ言われているが、暴利を貪ろうとしているわけではないし、完全に逆ザヤ。絶対に利益は出ません。飛行機を何十往復も飛ばしていますし、持ち出しです。これで批判まで受けたら正直たまらんですよ。ネットでは私が『安倍首相と親しい』とか言われていますけど全然知らない。うちはポリティカルじゃない〉アベノマスクの生産に全面協力したのに、あることないこと詮索された。アベノマスク狂騒曲に翻弄されたことがよほど悔しかったようだ。
(つづく)
【森村 和男】
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