経営者の真価が問われる時~「アフターコロナ」に乗り遅れないために(後)
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世界的企業の1つであるシティグループ証券(株)の元取締役副社長として、金融市場の本場米国で業界に携わってきた那珂通雅氏。那珂氏は同社を退任後、日系ベンチャー企業が海外進出することが、日本が他国と戦っていくためには必要であると感じ、投資会社であるボードウォーク・キャピタル(株)を設立。(株)ビジョン、(株)アイスタイル、(株)ジーニーなど、日本を代表する成長企業の社外取締役を務めながら、自らの豊富な経験に基づいて行われるエンジェル投資や投資先の良きアドバイザーとして経営支援をしている。コロナ禍によって大規模な経済不況が懸念される昨今、バブル崩壊、リーマン・ショックなどの金融危機を乗り越えてきた那珂氏に経営者に問われる対応について聞いた。
―なぜ海外進出をしていく必要があるのでしょうか。
那珂 平成の始まりからリーマン・ショックまでのほぼ20年間、世界の債券市場が巨大化していき、当時の投資銀行は国債や社債などのトレーディング、デリバティブや証券化商品などの派生商品などの債券ビジネスで大きな収益を上げていました。
一方、世界の株式市場はこの30年間で、米国が約10倍、中国が約30倍、ドイツでも約8倍になりましたが、日本は約0.6倍に縮小し、大きな差がつきました。この要因にはさまざまなことが挙げられますが、私はそのうちの1つに日本経済の風潮があったとみています。日本では大手志向が強く、ベンチャー企業に優秀な人材が集まりにくい現況があります。このような状況を生み出している日本の文化と教育にも危機感を感じます。
行動に移せばチャンスはあり、米国のシリコンバレーに代表されるFacebookやアップルなどのベンチャーキャピタルとして成功事例を現地でたくさん見てきました。80年代から90年代の金融でも、2000年以降のITでも日本が海外企業に敗退している理由は、ベンチャー企業が育っていないことが原因だと考えています。多くの「ユニコーン企業」を生み出していくことが、将来の日本の株式市場の拡大につながりますが、海外進出はその第一歩ともいえます。
ボードウォークという社名は、海につながる板張りの道のことですが、世界に出ていく企業が活躍できる懸け橋になりたいという思いからです。投資先であり、顧問先でもある、APAMANグループでコワーキングスペースを運営するfabbit(株)を通して、世界にチャレンジするベンチャー企業のゲートウェイになろうと思っています。これから日本のベンチャー企業が世界で十分に戦えると感じており、ボードウォーク・キャピタルはそのような企業に投資し、支援したいと考えています。
―コロナ禍の影響によって業界問わず多くの企業が苦境に立たされています。この苦境を企業経営者はどのように乗り越えていくべきでしょうか。
那珂 前提として経済的不況はチャンスでもあるということを念頭に置くことが必要だと思います。今回は感染症による不況で、経済システムの問題によって引き起こされたリーマン・ショックとはたしかに要因が違いますが、1つのチャンスとして捉えていくということは変わりません。
このチャンスをつかむためには、IT技術や情報プラットフォームを大いに活用し、市場がどのように動いていくのか、自らがどのように動くべきなのかをしっかりと見極める必要があります。まさに今、経営者としての真価が問われているタイミングともいえます。どのような不況にも“ボトム”があり、その後景気は良くなっていきます。アフターコロナともいわれていますが、景気が良くなってから動いては“もったいない”です。
経営者にとって市場の流れを読み、乗ることも必要不可欠なスキルの1つですが、それだけでは足りません。保守的になりすぎては逆に乗り遅れる可能性もあります。これは大手企業でも同様です。先を予見し、状況を見極めつつも積極性を失わないベンチャー性。戦後最大の不況といわれる今だからこそ、アフターコロナを乗り「越える」ために必要だと考えています。
(了)
【麓 由哉】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:那珂 通雅
所在地:東京都渋谷区神宮前3-7-4
設 立:2016年7月
資本金:2億円
U R L:https://www.boardwalkcapital-inc.com/法人名
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