コロナ対策とバス事業
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運輸評論家 堀内 重人 氏
前回、「コロナ対策と鉄道」について掲載した。今回は、「コロナ対策とバス事業」について述べていきたい。
「バス事業」には高速バスもあれば、一般の乗り合いバス、そして貸切バスなどがある。コロナウイルスの猛威による「不要不急の旅の自粛要請」により昨今、貸切バス事業者の倒産や運転手の解雇などの問題が、顕在化している。高速バス事業
高速バス事業は、バス事業者にとって「花形」であるだけでなく、稼ぎ頭でもある。バス事業者は、高速バス事業の利益で、赤字必至の過疎地の生活路線を維持するための原資を稼いでおり、これにより路線網を維持しつつ、ユニバーサルサービス(誰にでもあまねくサービス)を提供してきた。
ところがコロナウイルスの蔓延により、まず東京・大阪発着の夜行高速バスが運休となり、九州などでも夜行高速バスが運休や廃止に追い込まれるなど、高速バスが危機的な状況に追い込まれている。昼便であっても、「空気輸送」に近い状態に陥っており、各自治体の財政事情も非常に厳しい状態にあるため、欠損補助を上積みできる状況にはない。そうなると、このまま行けばバス事業者は、不採算である過疎地の生活路線が維持できなくなり、廃止に追い込まれる危険性がある。
それを回避するためには、高速バス事業に関して、せめて固定費ぐらいは回収できる状況にするための施策が必要である。高速バスは、鉄道とは異なり、「個室」が導入しづらいため、「三密」になりやすい環境にあるが、座席の販売方法などにより、管理しなければならない。
まず、車内の安全性を担保するために、バスにも換気装置が備わっていたりするが、それでも不十分だとすれば、車内に空気清浄器を設置して、強制的に換気を行う必要がある。
座席の売り方に関しては、窓側の座席だけ販売するようにして、お客さん同士の接触を回避するようにしなければならない。バスは、鉄道と比較すると定員が少ないため、運転手さんは、乗車券の確認を行う時に、検温の実施も義務付ける必要がある。37.5℃を超える乗客には、乗車拒否をすると同時に、そうではない乗客も手をアルコール消毒してもらって乗車させるという対策が必要である。
体温が37.5℃を超えた乗客は、乗車券類のキャンセルをしなければならないが、この場合は、キャンセル料は無料として対応することになる。
もちろん、バス事業者のHPなどでは、自社が実施している安全対策などをPRする必要がある。一般の路線バス
大都市などでは、路線バスは通勤・通学の重要な輸送手段である。どうしてもラッシュ時には、立ち客も出るため、「三密」が避けられない環境になってしまう。
鉄道の対策でも言及したが、銅にはコロナウイルスが付着したとしても、ほかの物質よりも死滅させやすい性質がある。そこで、つり革や手すりなどは、銅を含んだプラスチック製の物と交換し、少しでも乗客が安心して乗車できるような環境を担保する必要がある。一般の路線バスは、高速バスとは異なり、運転手さんが運賃の収受を行うため、コロナに感染するリスクが高くなる。
まず、飛沫感染を防ぐため、運転席の周りをビニールシートで被うだけでなく、運転席の向かいのタイヤハウス上の座席は「使用不可」とする。一番、問題となる運賃の収受であるが、交通系電子マネーでの決済を促進させたい。バス事業者のなかには経営が厳しい事業者が多く、交通系電子マネーによる決済に対応した運賃箱が導入できない事業者が多い。
かつて民主党政権が定めた「地域公共交通確保維持改善事業」では、「バリアフリー」という項目があり、それを実施する際は、国から補助金が支給されるが、低床式車両の導入や点字ブロックの整備など、ハード面が中心である。
交通系電子マネーで決済を行うことで、現金を使用することなく決済が可能となるから、利用者からすれば心理的な面で「バリアフリー」になる。筆者もバスを利用する際、小銭を探すことは、心理的な面で負担ではある。一方のバス事業者や運転手にとれば、バス停における停車時間が減るため、バスのスピードアップにつながり、それがサービス向上となる。
コロナが蔓延していることから、交通系電子マネーの決済に関しても、「地域公共交通確保維持改善事業」を適用させ、それでも足りない際は、さらに追加で補助しても良いだろう。
日本では、「独立採算」を前提に公共交通を運営しているため、交通系電子マネーなどを用いた決済は、諸外国と比較して遅れている。
利用者だけでなく、運転手さんも安全性が向上するうえ、公共交通のサービス向上にもつながることから、コロナが蔓延している今の時期に交通系電子マネーの普及を促進させたい。貸切バス
今回のコロナの蔓延により、政府が国民に対し、「不要不急の旅の自粛」を要請したことから、国民も自粛していることもあり、貸切バス事業者が倒産したり、業績悪化から運転手の解雇などが発生するなど、大きな影響が出ている。
貸切バス事業者が、コロナの影響をもっとも受けており、高速バスや一般の路線バスなどよりも、回復が遅くなるのが必至である。
一部地域では、学校も再開されており、6月ぐらいからは、全国で再開されることになるが、授業が遅れているため、校外学習などは中止になる可能性が高い。せめて固定費だけでも賄えるようにしてあげないと、今後も貸切バス事業者の倒産が、続くことになる。そうなるとバス事業者が自ら企画旅行を募ることを考える必要がある。この場合、高速バスと同様に窓側だけの座席を販売すると同時に、乗車時には運転手さんが検温を実施して、37.5℃のお客さんは、乗車拒否にするなど、徹底した安全管理により、営業しなければならない。この場合、お客さんにはマスクの着用と、手のアルコール洗浄を義務付ける必要がある。
貸切バス事業では、どうしても見学などが多くなってしまう。見学などに関しては、庭園や寺院などの屋外を中心に行い、昼食などでは間隔を空けて座ってもらうなど、「三密」を回避する施策が必要である。
また宿泊をともなうと、前日は平熱であったが、旅行疲れなどから発熱する乗客も発生するため、体調管理の問題から、日帰り旅行に限定する必要がある。コロナ対策に関しても、高速バスと同様、自社のHPで訴える必要があるだろう。
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