コロナ対策とタクシー・デマンド交通(前)
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運輸評論家 堀内 重人 氏
コロナ対策に関して、鉄道、バスと書いてきたが、今回はタクシーと過疎地などで運行される乗合タクシー・デマンド交通について、言及することにする。
タクシー運転手さんのからは、「2時間以上待っても、お客さんが1人もいなかった。こんなことは初めてだ」という悲鳴が聞かれます。利用者からは、「タクシー=密室で三密になる」というイメージがもたれています。
それを少しでも払拭して、タクシー事業の活性化だけでなく、過疎地で利用する乗り合いタクシー・デマンド交通に関しても、安心して利用してもらえるようにしたい。タクシー事業
緊急事態宣言にともない、「外出の自粛」などを行うようになったため、タクシーの主要な顧客である法人需要が激減してしまった。
景気が良い時は、初乗り運賃で到着するような近場であれば、「乗車拒否」をされたりしたが、コロナウイルスの蔓延にともない、初乗り運賃で到着するような近場に対する需要すら、なくなった。2時間以上駅前などに待機していたとしても、まったくお客さんが乗車しない状況にまで、陥ってしまっている。これは東京の都心部であっても同様であり、国際線もほとんど運航していないため、東京都心部から成田空港や羽田空港へ行く需要がほとんどなくなった。東京都心部から成田空港まで、お客さんを乗せると、片道2万5,000~3万円程度の売上があったが、今ではタクシー運転手さんは、完全に手持ち無沙汰な状態になっている。
政府の景気判断の基準として、東京のタクシーの1日当たりの売上も参考にされているが、現在の東京のタクシー運転手の1日当たりの売り上げで判断すれば、「目も当てられないぐらいの惨状」となってしまう。
海外旅行へ行く際、タクシーを利用するのは、大きなスーツケースなどがあることや、成田空港を早朝に出る便に搭乗する人などは、鉄道やリムジンバスが動いていなかったりするからである。
日本では、コロナウイルスに関しては、緊急事態宣言が解除される府県があるなど、落ち着きつつあるが、欧米などではまだまだ猛威を振るっている。それゆえ海外旅行の需要は、しばらく戻りそうにないため、タクシー業界は苦しい状況が続くことになる。現状をぼやいていても、事態は改善しないため、近場からでも需要を喚起する必要がある。
タクシーは、完全に密室になることから、それを回避するには、客待ちの間は窓を開けて、車内の換気を実施し、「三密」を回避するようにしなければならない。
また運転手さんも、コロナウイルスに感染する危険性があるため、運転席と客席の間に透明なビニールのカーテンで仕切り、クレジットカードや交通系電子マネーによる決済を、多用するようにしたい。治安の悪い国では、タクシー強盗などが多発するため、運転席と客室の間が鉄格子で仕切られており、お客さんは穴の開いた部分から、運転手さんに現金を渡すことになる。
クレジットカードや交通系電子マネーによる決済の普及は、平時であったとしても、タクシー運転手さんは、現金を用意する必要性が薄らぐため、タクシー強盗の被害から解放されることになる。クレジットカードや交通系電子マネーの決済は、利用者からみれば、「ソフト面のバリアフリー」であるから、「地域公共交通確保維持改善事業」のなかの「バリアフリー」という項目に該当すると考え、タクシー事業者がそれらを整備する費用を補助するようにして、普及させるようにしたい。
決済時の安全性の担保は、今後、労働者不足に直面する日本では、タクシー運転手を確保するためにも、重要な施策であると考える。(つづく)
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