コロナ禍で大量失業の“泥沼”にはまった世界経済(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
失業保険の新規申請件数の増加が本格的に始まったのは、3月の3週目からである。3月の3週目の申請件数は、330万件で、3月の4週目には、686万7,000名でピークを迎えた。失業手当の申請件数は3月のはじめには、20万件前後で推移していたが、新型コロナウイルスの発生で、失業が急増したことがわかる。また雇用悪化のスピードも、前例のない速さのようだ。
4月の米国の失業率は、14.7%だったが、5月にはもっと悪化して、失業率がさらに20%になるかもしれない。20%の失業率というのは、1929年に始まった大恐慌を連想させる。大恐慌前、3%台だった失業率は、大恐慌で25.6%まで上昇した。参考までに、今年2月の米国の失業率は3.5%だった。しかし、一部の州では、経済活動が再開され、失業保険の申請件数も減少しつつある。経済活動が再開されれば、このように雇用悪化に歯止めがかかるのではないかという希望的な観測もある。
ヨーロッパも米国と状況は変わらない。英国の格安航空会社であるフライビーは、法定管理に入ることにより、社員2,000名はクビを切られることになった。スペインでは自動車業界だけでも、10万名が解雇されたと、現地の新聞が報じている。
韓国の雇用状況も深刻さを増している。コロナウイルスによって、実物経済は大きなダメージを受け、その結果、大量解雇という津波が押し寄せている。1日に6,000人を上回る大量失業が発生しているが、この数字は韓国の大手企業1社が丸ごとなくなるのと同じことになるようだ。問題は今の大量失業は序の口にすぎず、コロナウイルスが長期化すればするほど、失業者がもっと増えていくことが懸念されている。韓国の統計庁によると、4月半ばの韓国の失業者数は468万5,000に上るという。
問題は韓国ではまだ経済危機が表面化していないことだ。コロナウイルスが本格的に発生した3月から、まだ3カ月しか経っていない。しかし、時間が経てば経つほど、体力の弱い企業を中心に、もたなくなるだろう。今回のように経済にショックが与えられると、社会の弱者がまずダメージを受けることになる。企業もスタートアップを中心に、経営が厳しくなる可能性が高い。
新型コロナウイルスは、雇用の形態をはじめ、私たちの働き方に大きな変化をもたらすことは間違いない。リモートワーク、自動化の導入、在宅勤務、人が多く集まるところへ行かないなど、都市化、グローバル化に逆行する世界になるだろう。
現在の私たちの生活は、就職を前提にしたライフスタイルといっても、過言ではないが、そのような今までの価値観は、大きく変わらざるをえないだろう。雇用が破壊されると、個人の収入源がなくなり、生活が不安定になるだけでなく、消費の減少につながり、企業の売上減少という悪循環をもたらすことになる。今までは、都市化が進んだことで、大衆消費社会が当たり前の時代を生きていた私たちだが、今までの価値観を、もう一度考え直さないといけない時期にきているのではないだろうか。
一度崩壊した雇用が回復するのには、時間もかかるし、以前のような状態に戻るという保証はどこにもない。コロナ後にもしっかり生き残れるためのスキルの確保と、価値観の切り替えをしておくことが大事だろう。
(了)
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