2024年11月23日( 土 )

年間700万人が日台間を往来 教育、歴史など広がりを見せる文化交流(前)

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台北駐福岡経済文化弁事処 総領事 陳 忠正 氏

 台北駐福岡経済文化弁事処(以下、福岡弁事処)は中華民國駐長崎領事館を前身とし、1970年の福岡移転を経て、台湾の代表機関として日台間の交流促進などの役割をはたしている。台湾からの訪日観光客数は人口1人あたりで香港についで多く、平均して5人に1人は毎年訪日している。九州は台湾にもっとも近く、後藤新平など台湾の発展に功績のあった九州出身者も多い。九州と台湾の関係について同弁事処総領事(処長)の陳忠正氏に話をうかがった。

台北駐福岡経済文化弁事処の活動

 ――総領事のご経歴と福岡弁事処の業務についてご紹介いただけますか。

 陳忠正氏(以下、陳) 私は外交部に入り、2018年に福岡に来る前は東京の台北駐日経済文化代表処で勤務しておりました。当処は九州・山口の8県を管轄しています。

 ――台湾と九州との文化交流面ではどのような活動を行っていますか。

台北駐福岡経済文化弁事処 陳 忠正 総領事

 陳 さまざまな文化活動を行っております。台湾を紹介する活動として、日本の3つの大学に台湾講座を設けています。九州では九州大学が唯一です。九州大学の「台湾スタディーズ」は毎年公開授業を行っており、初回には前任の戎義俊総領事が講演を行うなど当処も活動を支援しています。

 日台文化交流会館が1月に宗像市に開設されました。東京・虎ノ門の台湾文化センターで展示する文物をこちらでも展示したり、台湾映画の上映会を行ったりする予定です。
 映画面でも交流が盛んです。毎年福岡アジア美術館で台湾映画祭を開催しており、すでに10回ほど開催しましたが、当処も関わっています。上映作品は台湾人監督の作品のほか、日本人監督が台湾を舞台として撮影した作品もあります。

 台湾人留学生らが山笠の土居流に13年続けて参加させてもらっており、私も昨年参加させてもらいました。民間交流を大事にしていきたいと思っております。

 あいにく現在は新型コロナウイルスの影響を受けていますが、近年、日本から台湾への修学旅行が増えています。16年には、264の高等学校、約40,000人の高校生が台湾に行き、17年には約332校、約53,000人に増えています。海外修学旅行の行き先は従来ハワイが最多でしたが、15~16年頃から台湾が最多となりました。台湾は日本の隣に位置し治安が良く、学生は英語力が高いので、英語、中国語を学習したい学生にとって最適な場所であると思います。

台北駐福岡経済文化弁事処 外観

 当処は毎年、台湾観光協会大阪事務所と協力して台湾教育旅行セミナーを開催し、修学旅行先としての台湾の良さを日本の高校に対して紹介しています。昨年は熊本で開催し、蒲島郁夫・同県知事にあいさつをしていただき、そのおかげで熊本高校の生徒約400名が台湾に行きました。

 経済面では台湾貿易センター福岡事務所と連携しながら、当地の台湾人の経済・企業活動の支援を行っております。台湾への投資を考えている日本企業の活動も支援しており、両地域間の経済活動の促進のお役に立てればと思います。

九州と台湾の人的往来

 ――九州と台湾との間の人的往来についてご紹介いただけますか。

 陳 日台間の人的往来は年々増加しています。2019年は延べ約700万人が行き来しており、台湾を訪問した日本人は延べ217万人、日本を訪問した台湾人は延べ489万人です。より多くの日本の方に台湾にきていただけるようPR活動をしています。台湾の世論調査で約70%の人が一番親近感を持つ国は日本であると回答しています。

 ――九州にはどのくらい台湾の方が住んでいるのでしょうか。

 陳 華僑が約3,000人以上いて、いくつかの華僑団体が活動しています。このなかには長年日本に住み、帰化した人も含まれます。ほかに留学生会が福岡市、別府市の立命館アジア立命館大学にあり、福岡市では九州大学と麻生系列の専門学校の学生が多いです。

 学生たちは卒業後も九州に残って働きたいという気持ちをもっています。日本企業では私の知るところでは、LINE FUKUOKA(株)、(株)熊本の再春館製薬所で多くの台湾人が働いています。業種では飲食業が多く西洋料理など含めさまざまな料理店で働いています。近年は、タピオカミルクティーの店舗で働く台湾人が多く、福岡市には台湾人が開設した店舗もあります(天神の心福茶実験室、藤崎の初心茶室など)。

(つづく)

【茅野 雅弘】


<プロフィール>
陳 忠正
(ちん・ちゅうせい)
1963年生まれ。国立政治大学外交学科卒業、同大東亜研究所修士号取得。1990年、台湾外交部入部。慶応大学で日本語研修。2016年9月、台北駐日経済文化代表処総務部長、2018年7月、台北駐福岡経済文化弁事総領事に着任。

(後)

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