2024年09月27日( 金 )

マスク製造に続々参入(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 韓国は新型コロナウイルス対策として検査、隔離、情報公開を徹底し、一時は感染者をゼロにまで抑え込むことに成功した。しかし、5月6日の梨泰院(イテンウォン)ナイトクラブ発の感染者の発見以来、感染爆発の再来を警戒するような事態になっている。ナイトクラブの集団感染についで、5月末に京畿道富川(プチョン)の物流センターで発生した集団感染で、100人以上の感染者が確認された。

 ナイトクラブ集団感染の問題は、約5,500人のクラブ利用者のうち2,000人ほどが虚偽の連絡先を記載したため、現在もクラブ利用者の所在が把握できず、検査が行われていない。また、無症状感染者、感染経路の把握できない患者の比重が増えていることが、当局をなおさら困惑させている。5%を下回っていた感染経路の未確認患者のパーセンテージが9.7%に大きく上昇したのもそのような背景からだ。さらに、6月5日ソウル訪問販売会社の説明会に参加した人々から患者が発生し、1日で39名の新規患者が発生した。このため、韓国では、新型コロナウイルスの第2波に対する警戒感が高まっている。

 このような状況下で、韓国の日常生活に変化をもたらした製品がある。それはマスクだ。韓国人は花粉症などのため多くの日本人がマスクをしている光景をみて、不思議に思っていた時期があった。しかし、今回のコロナショックで、マスクは韓国でも生活必需品として定着した。韓国でもマスクの着用は徹底していて、街中でマスクをしていない人を見つけるのが難しい。

 また最近韓国政府はコロナウイルスの第2波を警戒して、地下鉄を利用する際には、マスクの着用を義務付けている。それに、マスクを着用しないと、出入りできない施設も多くなっている。このようにマスクの需要がにわかに高まったので、2月の後半から韓国はマスク不足に陥るようになった。このようなマスク不足現象を解消するため、韓国政府ではマスクの輸出を禁止し、国内では1人あたり2枚ずつ、薬局でマスクを買うようにする制度まで導入された。薬局の前には、朝から長い列ができ、運の悪い場合には、マスクが完売され、待った甲斐もなく、手ぶらで帰らざるを得ないこともよくあった。当然マスクの値段が跳ね上がったことは、いうまでもない。

 一方、マスクを製造するメーカーはいうと、零細企業が多く、コロナショックの前までは、経営者はこの事業を継続すべきかどうかをいつも悩んでいた業種でもあった。ところが、新型コロナの発生で、マスクの注文が殺到し、業界の事情は一変した。マスクにビジネスチャンスを見出した多くのブローカーが跋扈し、オーダーも確保していない状況で、工場に発注をし、注文者から前金を受け取ったら、とんずらするようなトラブルも発生した。間に入るブローカーもどんどん増えて、時々刻々に値段が変わるような不安定な市場となった。実際にマスクとは何の関係もない私の知り合いは、韓国の地方自治体にマスクを斡旋し、2週間で8億ウォン(約7,200万円)という収益を上げている。

(つづく)

(後)

関連記事