この世界、どうなる?(3)トランプ革命の教訓
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広嗣まさし(作家)
トランプ革命の教訓は「自国主義に徹しろ」である。簡単にいえば、第二次大戦後の国際社会の全否定である。国連も、それに付随する世界保健機関(WHO)も、すべて否定する。なぜかというと、それらは「嘘」の産物であり、形骸化した「無用の長物」にすぎないからというものだ。
そもそも、国連はその常任理事国である「大国」の力を抑えたことがあるだろうか?一度もない。結局は「大国」の言いなりなのである。それならば、そのようなものは存在しない方がかえってすっきりするのではないか。このような考え方が、トランプの言説から見えてくる。
「アメリカ・ファースト」と彼はいう。アメリカ中心主義のように聞こえるが、実は逆である。アメリカは「世界の警察」である必要などなく、各国の問題は各国で解決しろ、と言っているのである。言い換えれば、日本は「ジャパン・ファースト」で行け、ということだ。そんなこと、言われなくても当たり前だ、と思われるかもしれない。しかし、トランプほど当たり前のことをストレートに話す政治家は少ない。
もちろん、明らかにアメリカの利益となる場合には、アメリカは積極的に海外の情勢に関与する。しかし、あくまでもアメリカの利益のためであって、間違っても「世界のため」ではない。つまり、きれいことはやめよう、嘘はやめよう、ということだ。
戦後体制、世界平和を目ざす国連体制を支持する人々にとって、とんでもない大統領の出現である。トランプは世界史に逆らっており、彼の言っていることはただの暴言であると片付ける人も多い。では、そういう人たちは、アメリカに「世界の警察」であって欲しいのか?「アメリカ民主主義」なる嘘を、世界中が共有すべきだというのか?
トランプの目ざす世界が実現したら、世界各国がエゴイスト集団となり、共存できなくなる、と心配する人もいる。しかし、そのような心配はトランプが商人であることを忘れているために起こっている。商売は相手がなくては実行できないものであり、自分の利益を中心に考えるのは当然であるが、常に相手の動きを見て、ある程度まで相手に合わせなくてはならないのだ。
ここ数年、ヨーロッパは難民問題で悩んできたが、難民なるものは、もとをただせばヨーロッパ帝国主義の産物ではないか。儲けるだけ儲けたその挙句、しわ寄せがテロや難民となって現れている。ヨーロッパ人は内心では「やましさ」を感じているものであるから、これに対して毅然とした態度をとれない。そのような「やましさ」は、トランプ流には「嘘」なのである。
しかし、自力で自身の問題を解決せよと言われても、できない場合もあろうが、その場合でも、己の主体性を失わず、他国と交渉すればよいのだ。たとえば、メキシコからアメリカに不法入国する者たちは、自分の国をよくしたいと思う代わりに、よその国でもっといい生活をしたいと思っている。そのような意識がダメだ、というのがトランプの考え方であり、もっと自分を大切にしろ、というのがトランプ革命の教訓だ。
「嘘」といえば、中国共産党ほどの嘘つきはいない。アメリカ民主主義は、それを信じている人も多いため、これは嘘というよりも国家神話というべきかもしれないが、神話を古代に早くに放逐してしまった中国には、いかなる意味の神話もあり得ない。そうなると、あるのは嘘だけなのである。
あるアメリカのテレビ放送で、アメリカに亡命した2人の武漢出身の中国人がインタビューに応じていた。コロナウイルス感染者が中国外ではまだほとんど出ていなかった1月後半のことだ。その2人が異口同音に「中国共産党は嘘でできている。従って、彼らのいうことは全部嘘である」と言っていた。聞いていて、なるほどと思う反面、そのように公言する彼らもまた信用できないのではないかと思った。これほどはっきりいうとなると、半分真実、半分嘘ともとれるのだ。アメリカに亡命したぐらいであるから、アメリカ人によく思われたいと思っており、「自分は決して中国のスパイではありませんよ」とアピールしているかのように見えた。
それにしても、今のような世界情勢になったのは、世界各国に件の「自国主義」が欠如してきたからであるということを、人々は認識しているのだろうか。中国が「世界の工場」になったのは、国際分業が進んだ挙句、生産部門が一国に集中してしまったためだが、そこに落とし穴があったのだ。中国共産党の暴走の原因はそこにあると思う。
もちろん、生産から販売・消費のすべてを一国でまかなうことは不可能である。では、どうすべきなのか。主体性をもち、互いに利益をもたらす国と連携し、一種の経済共同体をつくり上げることである。中国は共産党体制であるかぎり、これと連携することは危険である。従って、日本は、韓国、台湾、東南アジア、さらにはインドと連携するのが良いのではないか。日韓は世界全体から見れば「つまらないこと」で衝突している。もう少し大局的に物事を見る姿勢が必要だ。
(つづく)
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