新型コロナ後の世界~「信頼の絆と弱者への労わりの心」を回復!(3)
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武蔵野大学客員教授・光輪寺住職 村石 恵照 氏
今人類は、「パーフェクトストーム」(複数の厄災が同時に起こり、破滅的な事態に至ること)の洗礼を受けており、この地球は前代未聞の嵐に飲み込まれようとしている。「新型コロナ」後の世界の風景は、今生きている私たちの誰もが見たこともない、経験したこともない、考えたこともないものになる。そこでは、今までのように、現実の問題を唯々紡いでいくだけでは、一向に心の平穏は得られないし、未来も見えて来ない。
村石恵照・武蔵野大学客員教授・東京仏教学院講師・光輪寺住職に話を聞いた。村石先生は20世紀文学の最高傑作『1984年』の著者ジョージ・オーウェルの研究者でもある。IMFは、新型コロナ後の世界について、2008年のリーマン・ショックを超え、1929年の世界大恐慌(オーウェルの生きた時代)に迫るとの予測を発表した。
今こそ、信頼の絆の回復と弱者への労わりの心を取り戻すチャンス
――新型コロナ後の世界で、宗教はどのような役割をはたすことができますか。
村石 宗教について、社会現象に焦点を置いて考えると、仏教、キリスト教、イスラム教などに代表される仏典や聖典に基づく教理をもち、民族性を超えた「世界宗教」と、神道、ヒンズー教、ユダヤ教などに代表される「民族宗教」の2つにわかれます。新型コロナは、いずれにおいても、宗教というものを改めて考えるいい機会になると感じています。それは、新型コロナ後の世界を生きて行くためには、現実の問題との辻褄を合せるだけでは、間違いなく早晩息切れしてしまうことになるからです。現在、ドメスティック・バイオレンス(DV)に代表される心の平和の崩壊のみならず、他人への不信感の増大がすでに社会現象として現れています。
今後は、もし世界大恐慌になれば、企業経営が難しくなり、事業規模縮小にともなうリストラなども増えます(世界中で16億人の失業者が溢れると予測されています)。私は、このような時ほど、今まで久しく忘れられていた信頼の絆の回復と弱者への労わりの心を取り戻すチャンスだと考えています。
信頼がもっとも欠如した状態が戦争です。お互いが信頼していれば戦争は発生しません。人間は、生来、支え合い、助け合い、生きている存在です。このような基本的で、もっとも大切なことを、それぞれの宗教の立場で、それぞれの良さを生かすことを説いていく必要があると思います。宗教観などをめぐって各宗教教団が競い合う必要はありません。
このようなことを申し上げるのは、今回たとえワクチンが開発されたとしても、今後人類が生きて行く上での根本的な問題の解決にはつながらないと思えるからです。同じような危機が、さらに高い頻度で起きていく可能性があります。しかし、どのような危機が襲ってきたとしても、人類全体が、信頼の絆と弱者への労わりの心を忘れなければ、社会混乱や社会不安などを起こすことなく危機を乗り越えていくことが可能になります。
(つづく)
【金木 亮憲】
<プロフィール>
村石 恵照(むらいし・えしょう)
武蔵野大学客員教授・東京仏教学院講師・光輪寺住職。外国政府機関勤務、出版社経営、英文毎日コラムニストなどを経て武蔵野大学政治経済学部教授(2012年3月まで)。日本ビジネスインテリジェンス協会(BIS)副会長。研究領域は仏教学・日本文化論・イギリス思想(ジョージ・オーウェル)など。
論文・著作として”A Study of Shinran's Major Work; the Kyo-gyo-shin-sho”『東洋学研究』第20号、『旅の会話集(15)ハンガリー・チェコ・ポーランド語/英語 (地球の歩き方)』、『仏陀のエネルギー・ヨーロッパに生きる親鸞の心』(翻訳)、『オーウェル―20世紀を超えて』(共著)、「いのちをめぐる仏教知のパラダイム試論」『仏教最前線の課題』、『Gentle Charm of Japan』など多数。関連記事
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