前駐ベトナム大使・梅田邦夫氏特別講演レポート「日本にとってのベトナムの重要性」(3)
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NetIB-Newsでは、DEVNET INTERNATIONALから提供いただいた前駐ベトナム日本国大使・梅田邦夫氏の講演レポート((公社)ベトナム協会)を紹介する。今回は前回に引き続き「ベトナムが日本にとって重要になった2つの理由」について。
このように中国が攻撃的になるなかで、ベトナムは、国際社会のなかで自分の立ち位置をどこにおくかについて、検討を重ねています。あるアメリカ人は、東南アジア諸国のなかでもっとも高い「戦略的思考能力」を有しているのはベトナムであると語っていました。
また、中国の動向は「ベトナム自身の存亡」に直接影響します。ベトナムの歴史は、中国への抵抗の歴史です。従って、ベトナムの中国分析は、世界でもトップレベルにあります。対中政策もしたたかです。2017年、ベトナム歴史協会会長を長年務められた故ファン・フイ・レー先生が、私に次のように語りました。
「現在の国際情勢の下で、個人、国家、国際システムのいずれのレベルから分析しても、日本はベトナムにとって、もっとも重要かつ信頼できるパートナーである。日本とベトナム間には自然のパートナー・シップが醸成されている」ベトナムの多くの指導者も、日本の指導者との会談の場のみならず、報道陣がいる場においても、「日本はベトナムにとって、もっとも重要かつ信頼できるパートナーである」とたびたび発言されます。
逆に、日本からベトナムを見てどうでしょうか。私自身は、次のように考えており、ベトナム勤務期間中、いろいろな機会に述べました。
「中国の超大国化と南シナ海、東シナ海における「力」の行使、ASEAN分断化などが顕著になる情勢下、東南アジア諸国のなかで、ベトナムは、日本にとって安全保障分野でもっとも信頼できる国となりました。ベトナムがより強く、より繁栄した国になることは、ベトナムのために重要であるだけでなく、地域全体の繁栄と安定にとっても重要である」実際、日越間の安全保障対話、防衛協力、海上警察間協力は、この3~4年間に飛躍的に緊密化しています。
たとえば、この2年間に、日越防衛大臣の相互訪問に加え、日本からは統合幕僚長、陸幕長、空幕長、海幕長の4名がベトナムを訪れ、ベトナムからも総参謀長が訪日しています。護衛艦「いずも」「むらさめ」をはじめ海上自衛隊および海上保安庁の艦船も毎年数隻寄港しており、18年には、ベトナムのフリゲート艦が史上初めて日本(横須賀、堺)に寄港しました。また、日本は、高速ボート一隻と巡視船(中古)3隻を無償供与したのに加え、円借款を活用し、新造巡視船6隻を建造予定です。ベトナムへの3つの感謝
この20年の自分自身の仕事を振り返ると、次の3つの点で、ベトナムに対しとても感謝しています。これらの点は、ベトナムとの関係を担当する方々には、ぜひ記憶にとどめておいていただきたいと思います。
(1) 国連安全保障理事会改革
1つ目は、05年のことです。当時、ニューヨークの国連本部では、第2次世界大戦終了60年周年を迎え、安全保障理事会改革の議論が熱を帯びていました。
日本は、ドイツ、インド、ブラジルとともにG4というグループをつくり、安全保障理事会の常任理事国を増加させる観点から、「G4決議案」を作成し、各国の支持をうるべく、働きかけを強化しました。この動きに対し、イタリア、スペイン、アルゼンチン、メキシコ、パキスタン、韓国、中国などが反対運動を開始しました。イタリアとスペインは、ドイツに反対し、アルゼンチンとメキシコはブラジルに反対。パキスタンはインド、中国と韓国は日本に反対でした。
とくに、中国はG4決議案の実現阻止のために、世界中で反日キャンペーンを展開し、また、国内では反日暴動まで起こしました。その結果、当初、日本支持を表明していた国も公には口を閉ざすようになり、アセアン10カ国のなかで日本支持を最後まで明言してくれた国は、シンポールとベトナムでした。
結局、G4決議案は、採択にかけられることはなく、日本は平常時に大きな改革を実現することの難しさをいやというほど強く認識させられました。あれから15年が経過しましたが、安全保障理事会改革の議論は、現在も国連の場で続いています。
ちなみに、日本が立候補する国際選挙において、ベトナムはほぼ100%日本を支持してくれています。(つづく)
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