2024年12月22日( 日 )

佐世保児相に突然引き離された親と子(5)

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長崎県・佐世保児相もう一つの「闇」

 3月31日、佐世保市職員が送り届けた当時8歳の男児について、『家庭調査(訪問)なき、養護施設入所ありきの一時保護』を続けている佐世保こども・女性・障害者支援センターの児童相談所部門(以下、佐世保児相)。自宅近くの公園で友だちと遊んでいた男児を、自宅に出向かず、佐世保児相に送り届けたという『緊急性』への疑問や、その後の対応に関する不信感は、両親だけでなく、その支援を行う児童委員、医療関係者の間にも根強く残る。

連鎖する責任転嫁

sasebo_sien 「あくまでも一時保護」と、11月11日に男児の母親と面談した佐世保児相の所長は伝えた。しかしそれは、男児の施設入所について承認を求める司法への申し立てが、両親の抗告によって現在、福岡高裁で審理されているためだ。佐世保児相は施設入所を前提に話を進めており、これまでにも度々、司法(家裁)の承認を正当化の根拠にし、一時保護の長期化について所長は、裁判所の審理に時間がかかることを理由にする。

 一方、男児を佐世保児相に送り届けた佐世保市子育て応援センターは、「一時保護を決めたのは児相」とうそぶく。実際は、児相職員の立会いはなく、緊急保護の必要を判断したのは市職員。8カ月におよぶ家族の離別の発端において、市の判断が大きなウェイトを占めていたと言える。佐世保市、佐世保児相、そして司法へと続く責任転嫁。それは裏返せば、不十分な調査によって、自信を持って自らの判断を正当化できないことの証左ではないだろうか。

 もっとも一旦男児を預かった上で、調査をすることは可能なはずだが、ここにおいて、なぜか佐世保児相側は、両親側が求める家庭への調査や指導、資料などの提供、児童委員による男児との面談などを拒み、佐世保児相が虐待とする内容への同意を求めてきた。佐世保児相を訪れたのは、両親、祖父母、父親のおじといった男児の親族をはじめ、父親の職場の上司、児童委員、小児科医など。家族との長期にわたる別離が男児の生育に与える悪影響を危惧する立場に立つ、これら複数の関係者が、頑なな佐世保児相側の対応に不信感を募らせている。

施設で男児が右大腿部疲労骨折

 ともかく男児は小規模住居型養育事業者(名称・場所については両親側に秘匿されている)のもとに一時保護委託されている状況にある。児童福祉法第33条の2の規定で、佐世保児相の所長は、男児の監護、教育および懲戒に関し、その福祉のために必要な措置をとることができるが、この点において疑問が生じる事態が発生した。11月20日、男児が施設において右大腿部を疲労骨折したことが11月20日、佐世保児相から母親に電話で告げられたのだ。

 翌21日、母親は支援者の小児科医とともに佐世保児相に詳しい状況を確認に向かった。その小児科医によると、「把握していないのか、疲労骨折の原因について説明はなされなかった」という。「9歳の子が大腿部を骨折することが驚きだ。どれだけの負荷がかかったのか、普通ありえない」と、小児科医は驚きを隠さない。

 佐世保児相側の説明では、9月末から足の痛みを訴えていた男児は、10月に病院でMRI検査を受け、11月になって右大腿部の疲労骨折と診断され、11月19日、児相に連絡があったという。11月11日の面談で、児相所長は母親に、男児に何かあれば報告する旨を伝えていたが、痛みの訴えから約2カ月間、そのことに関する報告は一切なされていない。右大腿部の疲労骨折の原因について説明ができないということも甚だ疑問だ。

 男児の両親と3人の姉弟は11月24日、大村市で行われた食品添加物と向精神薬の危険性に関する講演会にゲストとして招かれ、会場の参加者に、家族が置かれている現状について語った。会場からは驚きの声も上がり、会終了後、協力を申し出る人や助言を行う人が両親の元に集まっていた。

(つづく)
【山下 康太】

 

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