コロナワクチンの熾烈な開発競争(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
新型コロナウイルスの経済的な被害が、徐々に広がりつつある。一方、新型コロナウイルスで、世界的ではすでに50万人以上の人がなくなっており、感染拡大も続いていて、感染者数は1,000万人を上回る。
感染拡大を防ぐために取ったロックダウンなどの規制が経済に大きなダメージを与え、その損失は数兆円以上の規模に達しつつある。新型コロナウイルスを一日も早く終息させるために、ワクチンや治療薬の開発が喫緊(きっきん)の課題である。
今回は、ワクチンの開発状況などについて取り上げてみよう。
人体には、すばらしい防御システムである免疫が働いている。1日に約5,000個のがん細胞が人体に発生しても、人間がガンに罹患しないのは免疫のおかげである。細菌やウイルスなどが外部から人体に侵入すると、人体の免疫細胞は、自分と自分でないものを識別する。
その後、外部から侵入者である細菌やウイルスなどの抗原に対抗するため、免疫細胞は抗体を生成させる。この抗体がウイルスと戦うことで、ウイルスは中和され、感染を防ぐことができるわけだ。しかし、新型コロナウイルスのように今まで存在しなかった、まったく新しいウイルスの場合には、人体には抗体が存在していないため、ウイルスにやられることになる。
しかし、2回目にそのウイルスが侵入したときには、人体には抗体ができているので、効果的にウイルスに対応できるようになる。ワクチンとは、病原菌やウイルスなどを弱くして、人体に入れておくことで、抗体を生成させ、同じ病原菌やウイルスが侵入したときに、うまく対応できるようにする仕組みだ。
すなわちワクチンとは、人為的に人体に病原菌やウイルスに対する免疫能力を備えさせる薬である。人体の免疫細胞には、B細胞とT細胞があり、B細胞は抗体をつくり、T細胞は外部から侵入した菌である抗原を攻撃する役割を担う。ところが、ワクチンが人体に抗原を生成させる方法には4つがある。
まず1つ目の方法は、核酸ワクチンである。核酸ワクチンはタンパク質の設計情報をもっているDNAやRNAを人体に入れることで、抗原を生成させる方法である。抗原を人為的に生成させることで、結果的に人体に抗体をつくらせる原理だ。この方法の弱点は、今までこの方法で開発されたワクチンがなかったことだ。
2つ目の方法は、抗原の一部を体に入れてやる方法である。口蹄疫、肺炎などのワクチンは、この方法を使ったワクチンで、事例が多いことが特徴である。今回の新型コロナウイルスワクチンの開発においても、約4割は、この方法でワクチンを開発している。しかし、新型コロナウイルス向けのワクチンのなかで、この方法で臨床試験に入った事例は、まだない。
3つ目の方法は、抗原をつくる遺伝子を、他の安全な遺伝子に組み入れて、人体に注入する方法である。現在開発中のワクチンの17%は、この方法で開発されている。
4つ目の方法は、従来のように抗原を弱くしたり、不活性化したりして人体に入れる方法である。遺伝子工学が発達したことによって、従来の方法よりも、遺伝子工学を活用した技術が今では多く用いられている。
(つづく)
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