【横田一の現場レポート】コロナ禍で需要落ち込みでもリニア建設に固執~背景に守旧派土建政治連合(後)
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レベルの低さを露呈した、自民党リニア特別委
アフターコロナ時代に突入してもなお、コロナ前のリニア推進論を口にするだけの〈維新コンビ〉と対照的なのが、JR東海や国交省、さらに自民党国会議員らと対等に渡りあう川勝平太・静岡県知事だ。トンネル工事による水枯れ(大井川の水量低下)を懸念し、いまだに着工を認めない姿勢を貫いている。7月22日の「自民党リニア特別委員会」(古屋圭司委員長)のヒアリングでは、冒頭で「大推進論者」と切り出して煙に巻く一方、水問題についてまったく譲らない姿勢を貫いた。
特別委員会へのリモート参加を終えた後、川勝知事は県庁内で会見に臨み、会談内容を説明した。質疑応答になったところで、「大推進論者」と発言したことを含めて次のような質問をした。
――(国交省有識者会議で明らかになった新たな問題の)地下水が300m以上低下の話が出たのか。(川勝知事の)推進論というのはコロナ前の話だと思うが、コロナ禍においては採算性や必要性、収益性などを含めて再検討するのが、国家プロジェクトを検証する国会議員の役目でもあるし、周辺知事の役割とも思うが、その点はいかがか。
川勝 いい質問です。まず、上流部で地下水位が最大300m下がることはこの間の(4回目の)有識者会議で出た資料ですね。これについてはだれも言及しなかったし、その話は出なかった。今回は(会議参加者)1人5分(の時間のなか)で、これまで取り組んできたリニア推進のさまざまなプロジェクト、用地買収がうまくいっているのかというレベルの話です。いまおっしゃったようなコロナ前の議論に終始した。しかし今、そういう議論が起こってきている。安倍首相自身がオンライン、リモートを国家的なプロジェクトとして推進するとおっしゃっているので当然、その議論は出てこないといけない。今回はそれぞれの現状とこれまでの歴史を簡潔にまとめることが求められたので、その話まではいかなかった。
このことは、自民党リニア特別委のレベルの低さを暴露したに等しい。この日の議論はコロナ前の総括にとどまり、当然進めるべき「コロナ後のリニア見直し議論(採算性や必要性などの検証)」が抜けていたというのだ。同時に、自民党国会議員や静岡県以外の知事らが建設一辺倒であることも露呈した。7月16日の国交省有識者会議で新たに浮上した南アルプス国立公園内での「地下水が300m以上低下」について、特別委員会参加者の誰も触れなかったからだ。
川勝知事は小泉環境相との面談にも意欲
この地下水位低下について川勝知事は、7月21日の大井川上流での現地視察でも問題視。「(南アルプス)ユネスコエコパークの資源に影響を与えない」という環境大臣の意見を紹介したのに続いて、「地下水位300m低下」が生態系に大きな影響を与えるとして、「トンネル工事が認められない方向性もある」と記者団に語っていたのだ。
その大井川河川敷での囲み取材で、私が「エコパークへの影響で小泉大臣と意見交換する考えはないのか」と聞くと、川勝氏は笑顔を浮かべながら、小泉環境大臣との面談に意欲的な姿勢を見せた。
「それはもう大好きですからね、気持ちの良い青年ですね。(環境)大臣になっていただいて、いま黒のものを白と言い、横のものを縦にするようなことが横行しているではないか。(霞が関には)似たような体質がある。そういう中で、正論を吐く1人ではないかと思っていて、大変、私としてはお目にかかりたいと思っている」(川勝知事)
両者の面談が実現する可能性は十分にある。小泉大臣も6月30日の会見で「(川勝知事から)面談の依頼があれば、喜んでお受けしたい」と答えていたからだ。リニア中央新幹線のトンネル工事による南アルプス国立公園の環境破壊の懸念について川勝知事と小泉大臣が連携し、自民党国会議員や維新コンビら推進派と対峙する可能性が出てきたのだ。
コロナ禍におけるリニアをめぐる対決の構図がはっきりしてきた。それは「コロナ前の計画固執の守旧派土建政治連合(吉村知事や自民党議員ら) 対 環境重視の見直し派(川勝知事や小泉環境大臣ら)」というものだ。リニア中央新幹線をめぐる攻防から目が離せない。
(了)
【ジャーナリスト/横田 一】
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