『脊振の自然に魅せられて』夏の花をめぐる山歩き
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コバギボウシの撮影へ
脊振山駐車場を利用すると、脊振山系に咲いている夏の花に簡単に会いに行くことができる。8月6日(木)に向かった。午前8時時点では、脊振山駐車場の気温は23度と市街地の気温と比べて6度くらい低く、霧に覆われて風も強く、寒さを感じるほどだった。熱中症予報が出ていた市街地から比べるとまるで「別天地」である。
キジカクシ科のコバギボウシを撮影するため、さっそく駐車場から脊振山頂へ向かって歩いた。
「ギボウシ」(擬宝珠)という名前の由来は、花の蕾の形が橋の欄干の上部に付いている玉ねぎのような「擬宝珠」に似ていることによる。コバギボウシはちょうど見頃で、灯篭の周りで強風に煽られてたくさんの紫色の花が揺れていた。じっくりとカメラを構えて、オートモードで花を撮影した。
そこから2分くらい歩いて脊振山頂へ上がったが、霧に覆われた山頂からは遠くの景色が何も見えず、うっすらと丸いレーダードームが浮かんでいるだけだった。
脊振山頂を下り歩いて、矢筈峠へ向かった。ここから100mくらい続く木道から見るブナ林は、木々が霧に浮かんでいる幻想的な光景だった。山は秋の装いを始めていて、登山道から見えるムシカリ、ヤブデマリなどの樹木は赤い実を付け始めていた。
絶滅危惧種のオニコナスビ
「脊振山―椎原峠 縦走路」の矢筈峠から登山道を10分も下ると、絶滅危惧種のオニコナスビ(鬼小茄子)が咲く場所に着いた。今年は花の数が少なく細々と咲いていた。オニコナスビは、地面から少し伸びたところに直径1㎝くらいの小さな黄の花を咲かせる。「オニ」という険しい名前が付いているが、サクラソウの仲間で夏に咲く花は実に可愛い。
「絶滅危惧種のオニコナスビの花が脊振山直下に咲いている」という情報がインターネットで拡散し、大勢の登山者が知ることとなったため、開花を迎える7月末頃になると、オニコナスビの花を求めて多くの登山者がやってくる。撮影に夢中で気づかないうちにオニコナスビの根元を痛めていることがあるため、オニコナスビの花の周辺には登山者に踏み荒らされた跡が多く残り、痛々しいほどだった。オニコナスビの花を保護するため、登山道の石を拾って踏み荒らされた辺りに敷き詰めた。オニコナスビは少しずつ蔓を伸ばして健気に生息地を広げているため、そっと眺めてほしいものだ。
西日本最大規模のオオキツネノカミソリ群生地
脊振山系にはオオキツネノカミソリの群生地が2カ所ある。1つは西日本最大規模のオオキツネノカミソリの群生地である井原山(標高983m)直下の水無渓谷だ。開花期の7月末から8月初めには、咲き誇った花の数に圧倒されるほどで、各地から多くの人がこの花を求めて訪れる場所だ。
もう1つは脊振山直下の矢筈谷の標高500~700m付近にある群生地だ。開花期は水無渓谷より10日ほど遅い8月のお盆頃で、花の数は水無渓谷ほど多くないが、ひっそりと咲いていて愛おしい。
オニコナスビの保護作業を終えて登山道を少し下ると、オオキツネノカミソリのオレンジ色の花が咲く群生地に着いた。この日のオオキツネノカミソリの花は、7分咲きぐらいだった。1人の女性の登山者が登ってきて、開花期間について「あと1週間ぐらいですかね」と尋ねられたため、「1週間で(花は)なくなるでしょうね」と言葉を返した。見頃を迎えるお盆ころに、オオキツネノカミソリの花にもう一度会いに行きたい。
オオキツネノカミソリのお花畑を歩く女性の後ろ姿をビデオカメラで撮影すると、女性登山者が静かな山のなかを歩く姿が綺麗に写っていた。
この日は、縦走路から登山道を下った。2020年8月11日
脊振の自然を愛する会
代表 池田友行関連キーワード
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