注目度が増してきた米半導体企業エヌビディア(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
コロナ禍でも成長を続けている「エヌビディア」(NVIDIA)という米国半導体企業を知っているだろうか。エヌビディアは米半導体企業の「王者」であったインテルを追い抜いて、時価総額1位となっただけでなく、将来においてももっとも有望だと見られる半導体企業でもある。今回は同社の動向に注目する。
ソフトバンクが売却予定のARM買収か?
ソフトバンクは2016年に320億ドルでARMを買収したが、赤字決算のよる資金確保が必要となり、ARMの売却を検討している。ソフトバンクはARMの売却の件で、「エヌビディア」とコンタクトを取ったことを認めている。
「エヌビディア」がARMの買収に成功したら、GPUのみならず成長の源泉となるCPUまで手に入れることができるというメリットがある。最高経営責任者のジェンスン・フアン氏はAMD出身であるためCPUのことを熟知しており、CPUへの思いも強いのかもしれない。
しかし、「エヌビディア」がARMを買収すると、ARMと競合する多くの半導体企業は「エヌビディア」への反発を強め、同社陣営から離れる可能性もある。とくに、アップルは今までインテルのCPUを使っていたが、性能向上に限界を感じたため、ARMの基本設計図を購入してチップを自社で開発することを狙っている。
「エヌビディア」はGPUに集中することで、GPU分野で最も有力な企業となった。競争が激化するCPUとGPUの両方の市場で戦うとなると、むしろ力が分散してしまい、どちらの分野でも成功できなくなってしまうリスクにも直面する。一部の専門家は「『エヌビディア』は今のままの状態で成長を続けるのが望ましい」と指摘している。
半導体王者だったインテルは苦境
これまで半導体業界の王者であったインテルの道のりは険しい。インテルは半導体の設計と製造を行う世界でも稀な企業の1つであるが、製造技術の壁に阻まれ、今では苦境にある。加えて、パソコン分野のCPUでは技術力を高めたAMDと競合するようになり、モバイル分野のCPUではARMに技術的に先行されており、インテルはあまり力を発揮できていない。
インテルが今でも有力であるのはサーバー分野のCPUのみであり、同分野では9割以上のシェアを占めている。CPUの設計は複雑で性能を向上させるのが難しく、簡単に参入できる市場ではなかったため、今までインテルの牙城となっていた。しかし、半導体市場の重点は膨大な計算処理へと移り変わり、「エヌビディア」の時代となりつつある。もしソフトバンクがARMを売却したら半導体市場で最大規模の取引となり、半導体業界に大きな変化をもたらす可能性を秘めている。どの企業がARMを手に入れるのか、半導体業界の動きから目が離せない。成長が著しい「エヌビディア」は半導体業界に留まらず、他の業界から見ても今後も注目を続けるべき企業だと筆者は考えている。
(了)
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