『脊振の自然に魅せられて』「花の貴婦人・ナツエビネ」
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ナツエビネ鑑賞を楽しむ山歩き
エビネの仲間はほぼ春に咲くが、夏に咲く「ナツエビネ」がある。ナツエビネの花は優美で気品があり、淡い薄紫は涼しさも感じる。
山で出会った花好きの人から、脊振山の山中の谷にナツエビネが咲いている場所を教えてもらった。ナツエビネが自生している場所は、毎年、春に咲くマンサクやムシカリの樹木の花を観賞に行く、藪漕ぎルートの谷のなかであった。
沢にゴロゴロと転がっている石に気をつけて、上流へ向かって歩みを進めた。冷たい水の感触が心地よい。はたしてナツエビネの花に出会えるだろうかと期待が膨らんだ。
「おー、咲いとるばい!」
ナツエビネは、エビネの特徴である緑の縦縞がある長い葉から50㎝ほど茎を伸ばし、淡い紫の花をたくさんつけていた。花との出会いに満足してスマホやカメラで撮影したのちに、ナツエビネの側に座って休憩を楽しんだ。花の鑑賞を楽しむ脊振の山歩きとなった。
ナツエビネの花の命は1週間
さらに谷を奥へ進むと幅5mで落差が30mくらいの小滝があり、滝しぶきを体に浴びながら小滝の横の谷を登ると、ミヤコザサがみえてきた。ミヤコザサが現れたということは、縦走路が近い証拠である。脊振山系では、標高800mあたりからミヤコザサが自生している。
ミヤコザサの藪漕ぎをして、アスファルトの自衛隊道路に出た。標高が900mと高いため、市街地よりも気温が6度近く低い。爽やかな風が、汗まみれの体を冷やしてくれた。
自衛隊道路に腰を下ろして、昼食とる。山での至福のひと時である。緑の山容の向こうに気象台の丸いレーダーが見えていた。時折、蝉の声が聞こえてくる。
今年も新しい仲間を誘って、「ナツエビネの貴婦人」に会いに行った。ナツエビネの花の命は1週間で、時期を過ぎると次に鑑賞できるのは1年後になってしまう。花との出会いは一期一会である。毎年、ナツエビネとの出会いを楽しみにしている。
エビネの仲間は、その多くが園芸向けとして販売するための盗掘や森林伐採により、自然に自生するものは数がどんどん減っている。
2020年8月21日
脊振の自然を愛する会
代表 池田友行関連キーワード
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