【縄文道通信第44号】縄文道は未来道―縄文文化の影響は未来永劫に続く―「和巧絶佳」 美術展 印象記(後)
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(一社)縄文道研究所
NetIB-Newsでは、(一社)縄文道研究所の「縄文道通信」を掲載していく。
今回は第44号の記事を紹介。
縄文のスタイルがまさに息吹く
2人目は漆・螺鈿の工芸家の橋本千毅氏である。縄文早期前半9,000~8,000年前の北海道の垣ノ島遺跡で発掘された、赤い糸で織られた髪飾りや腕輪の装飾品が、中国より古く世界最古といわれる漆でつくられていることが判明している。広く知られていることだが、漆は英語で「JAPAN」 であり、ちなみに陶器は「CHINA 」とそれぞれ国名を表している。
漆はウルシの幹から樹液を取り出して加工したもので、耐熱性、耐久性があり、時間が経っても強靭な特性をもつため、日本では古くから漆工芸が発展してきた。漆は現在では、漆工芸だけでなく、接着剤にも使用されている。
橋本氏は48歳で、文化庁で蒔絵や螺鈿の工芸作品の修復技術を積み重ねてきた経験を持つ。とくに漆の製造工程は多岐に亘るが、下地、塗り、研ぎ、蒔絵、平文、螺鈿のすべての工程を自分の手で行っている。螺鈿「鸚鵡(おうむ)」や蝶牡丹螺鈿蒔絵箱などは、鳥や蝶のモチーフを使い、伝統に裏付けされた螺鈿技法を駆使した重厚さと品位をもつ。まさに縄文時代からの漆工芸を地道に引き継ぎながらも独創力な装飾性があり、筆者は縄文文化の進化を通じての息吹を感じた。
3人目は、染技術を駆使したテキスタイル作家の安達大悟氏である。縄文時代の織物としてアンギン織りや網代織りがあるが、当時は木・竹・わら葦などの素材を使って織り、そして編む作業を通じて、衣服をつくっていた。一枚の布を使って頭から被る貫頭衣が主流であることが特徴で、これが後に和服のもとになった。
安達氏は、奈良時代に生まれた板締め絞りの技法を使用している。安達氏のテキスタイルアートは空間を広く使い、多様な染め方と斬新な装飾を施すことで、空間とダイナミックに溶け込んだ作品になっている。広い空間を占める安達氏のテキスタイルは非常にエネルギーとダイナミズムを感じさせる、縄文的パワーそのものだ。
パリコレクションで成功し、「セッションワン」と命名された三宅一生氏の作品は、縄文の貫頭衣からヒントを得てつくられたという。すなわち、一枚の布でシンプルに完結させて、ダイナミズムとパワーを引き出す手法で、テキスタイル芸術も縄文のスタイルがまさに現在も息吹いているのだ。
新里氏の「光」磁器、橋本氏の漆器・蒔絵・螺鈿芸術、そして安達氏の板締め絞り・テキスタイル芸術のすべての作品には、縄文時代から脈々と引き継がれてきた美意識とパワーが息吹いていることを強く感じた。この縄文時代の息吹は、これからも変化しながら次世代芸術に活かされていくだろうという確信をもった。
(了)
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