【ポスト安倍】「総裁選レース」の行方は?
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突然の安倍首相の辞任表明で、ポスト安倍を決める自民党総裁選レースが一気に本格化した。菅義偉・官房長官と岸田文雄・政調会長と石破茂・元地方創生大臣の3候補が軸との報道が相次いでいるが、中でも最有力なのは菅氏に違いない。
禅譲狙いだった岸田氏は一時期最有力と見られていたが、安倍首相の信頼が最も厚かったのに期待感が高まらないどころか、「発言内容が不明瞭」「選挙の顔にならない」といった発信力の乏しさが目立つようになり、30万円給付案がひっくり返された調整力不足も露呈。憲法改正を託して院政を狙った安倍首相も「途中でさじを投げた」といった情報が流れるなど、脱落感が鮮明になっていった。
実際、辞任会見で安倍首相は「(後継三候補に)名前があがっている方々はそれぞれ有望だ。政策を競い合う中で決まっていくだろうと期待している」と述べるだけで、後継指名をしなかった。最大の後ろ盾を失った岸田氏が、厳しい戦いを強いられるのは確実なのだ。
ポスト安倍の世論調査第1位の石破氏は、突然の辞任表明で苦戦必至の状況に追い込まれた。総裁選規程では「党員投票と国会議員票(394票)」が同数とされているが、緊急の場合には党員投票をしない代わりに「都道府県連代表(144票)と国会議員票(394票)」で代替することが可能。しかも党執行部は今回、スピード重視の方針のため、党員投票なしとする可能性が高い。
党内議員には不人気だが、全国的には人気がある石破氏にとって、党員投票は総裁選勝利の絶対的条件なのだ。「党員の(総裁選投票の)権利をきちんと尊重するのが国民政党たる自民党だ。簡便なやり方を取るべきではない」と党員投票実施を訴えているのはこのためだが、安倍首相批判を繰り返してきた石破氏の要求を党執行部がすんなり受け入れるとは考えにくいのだ。
残るは菅氏。政権ナンバー2の官番頭役として安倍政権を支えてきた実績は十分で、主要政策を引き継ぐ上でも適任といえる。ただし、不支持率が支持率を上回った前政権のマイナスイメージがつきまとい、野党がこれまでの安倍政権批判をそのままぶつけることも可能だ。官房長官が首相に格上げした“安倍継承政権”では新味に欠ける上に、野党にとって攻めやすいともいえる。
こうした事態を避けるために、もともと黒子役が得意な菅氏が官房長官を続けながら、フレッシュ感を与えることができる石破氏や河野太郎防衛大臣らを担ぐという選択もありうる。「本命は菅氏で穴馬が石破氏や河野氏」というのが現時点での総裁選レースの見通しだが、9月15日目途の自民党総裁選から目が離せない。
【ジャーナリスト/横田 一】
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