2024年09月09日( 月 )

傾斜マンション問題:ベルヴィ香椎の建替えは実現するか? 区分所有者たちに不満の声(後)

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 分譲マンション「ベルヴィ香椎 六番館」(福岡市東区)の傾斜問題に関し、販売会社である「JR九州」「福岡商事」「若築建設」の3社は「補修」「買い取り」「建替え」の3つの案を示し、8月30日に区分所有者に対して建替えに関する説明会を開催する予定であったが、急遽内容を変更し、補償に関する説明しか行われなかった。
 この説明会をめぐる動きについて、構造設計一級建築士の仲盛昭二氏(一級建築士)に話をうかがった。

 -六番館の佐々木特別理事は、これまで、テレビ局や新聞社に積極的に公開し報道をさせていましたが、8月30日は報道陣をシャットアウトしました。これはどういう意図があったと思われますか?

 仲盛 報道されては不都合なことがあったのでしょう。西日本新聞の記事には表面的なことしか書かれていません。これは佐々木特別理事たちが情報を公開しなかったからです。六番館の区分所有者から佐々木特別理事たちに対する批判的な意見が出ており、それらを報道陣に知られたくないのだと思います。

 -六番館の建替え決議と団地全体の承認決議が済めば、スムーズに建替えへと進むのでしょうか?

 仲盛 もし 六番館の建替え決議と全体の承認決議が成立したとしても、建替えは不可能です。なぜなら、法的に認められない状況があるからです。

 -以前、仲盛さんは、ベルヴィ香椎の六番館とそれ以外の棟も含めて構造計算に問題があると指摘されていました。

 仲盛 私なりに検証をし、構造計算の不備を把握したので、特別理事の佐々木氏に「管理組合が保管している六番館の構造計算書を確認したほうが良い」と助言しました。佐々木氏からは「構造計算書を探したが無かった」と返事がありました。
 しかし最近、区分所有者の方からの情報により、六番館の構造計算書が存在したことが明らかになりました。なぜ、佐々木特別理事は「六番館の構造計算書はない」と嘘をいったのでしょうか?それは、構造計算書を検証することによりその計算の不備が判明すれば、六番館以外の棟の構造計算も検証しなければならず、その結果、六番館だけの問題で済まされなくなるからです。他の棟を置き去りにして六番館の建替えのみを争点に販売会社側と交渉してきた佐々木特別理事にとって、すべての棟の建替えとなれば、販売会社側が逃げるしか選択肢がなくなるので、六番館の建替えだけで早く合意したかったに違いありません。

 -六番館を建て替えたとしても、他の棟に構造スリットや構造計算の問題が残った状態になりますね。

 仲盛 建物が合法であることが行政判断の前提条件ですから、団地として認定された数棟のなかに、違法状態の建物があれば、団地の認定にも影響します。これらは、構造計算書と図面を見れば判断できるので、建替え決議の前に確認しておかなければ すべてが無駄になってしまいます。
 佐々木特別理事は「福岡市が建替えを承認した」と言っていますが、違法建築物が存在することを前提に福岡市が承認したという公文書があるはずなので、その公文書を開示すべきだと思います。

 -すべての棟の問題となった場合、販売会社側の負担は相当に大きくなりますね。

 仲盛 先ほど話したように、ベルヴィ香椎は竣工から20年の除斥期間という、いわば時効的な期間を過ぎています。販売会社側は安全地帯にいるので、いつでも開き直ることが可能であり、このことを認識しているから区分所有者に不利な条件を強気で提示しているのです。販売会社側は、ベルヴィ香椎の内部でもめることを望んでいるのです。

 -六番館以外の棟の区分所有者としては、大きな欠陥が問題となっていた六番館が建替えられ適法な状態となった場合、今度は、六番館以外の棟が違法状態として残されることになるのですか?

 仲盛 六番館だけの建替えが決議され、全体の4分の3以上で承認され、六番館が建替えられれば、当然、六番館以外の棟は違法状態として残されることになります。六番館以外の区分所有者が、このことをわかっていながら六番館の建替えを承認するとは考えられません。
 六番館の区分所有者としても、部屋ごとに迷惑料の査定をされるのですから、販売会社や佐々木特別理事らに対する不満が爆発すると思います。
 客観的に見ると、佐々木特別理事の不手際により、販売会社側の思惑通りに進んでいるように感じられます。佐々木氏が全体の管理組合の理事長に就任するという話も聞いています。全体の管理組合の理事長に就任することにより、これまでの不手際が明るみにならないようにしようとしていることは推察できます。

(了)

【桑野 健介】

(前)

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