ストラテジーブレティン(260号)ポスト安倍は「安倍」~安倍政権の歴史的貢献と日本政局~(後)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。今回は2020年8月31日付の記事を紹介。
市場の最前線での40年にわたる観察者の立場から、安倍政権が成し遂げた偉業は特筆に値する、と考える。数十年後の歴史家は、安倍政権時代を日本の新たな発展の土台をつくった画期的な時代として記すだろう。
数多くの功績を枚挙にいとまがないが、(1)外交機軸の再設定、(2)デフレ脱却と経済成長軌道の設定、(3)未完ではあるが、行政、企業統治、働き方などの諸改革、の3つが特筆される。(2)最強のデフレファイター、だが財政健全化路線に足をすくわれる(つづき)
財政健全化路線で成長とん挫は悔恨である
安倍政権の後半に経済成長率が息切れしたのは、2度にわたる消費税増税と、財政再建路線、プライマリー財政バランスの改善の影響が圧倒的に大きい。プライマリーバランスはアベノミクスのスタート時点の13年から19年にかけて、対GDP比-9%から同-2%と同+7%改善したが、それは財政が毎年GDPの1%の需要を奪い続けたことを意味する。
アベノミクスの第2の矢である財政は大きく逆走したといえる。消費税増税は三党合意の縛りによるもので安倍氏の本意ではなかったが、それに足をすくわれたのは、悔恨の極みといえよう。
アベノミクス第3の矢である、諸改革も着実に進展した。
(1)働き方改革、女性参画、教育無償化
(2)タテ割り行政の是正、内閣人事局、官邸主導、内閣の指導力発揮
(3)コーポレートガバナンス改革、GPIF、郵貯改革
(4)法人税減税
(5)TPP参加などいずれも首相の指導力で実現したものである。
(3)ポスト安倍は「安倍」
安倍氏の存在感、求心力は圧倒的に高まろう、再登場は必至
これほどまでに成果を上げた不世出の政治家ともいえる安倍氏は、依然として議員であり続ける。安倍退陣の結果、メディアによる安倍批判は消滅し、実績と政策が検証され、安倍氏の評価は大きく高まるだろう。
安倍氏の健康治療次第であるが、完全治癒すれば第三次安倍政権、不安が残れば、最高顧問・副総理格で始動、キングメーカーになる可能性が高い。年齢も65歳と、まだ引退する年でない。
つまり「ポスト安倍」は「安倍」なのであり、次期首相は安倍政権との継続性と、安倍氏再起のためのつなぎの役割をはたす政治家が望ましいということになる。トランプ再選となれば安倍再登場を望む声が高まるだろう。安倍氏は米国史上唯一大統領を4期務めたFDR(フランクリン・ルーズベルト)のような存在になるかもしれない。
安倍政治の継続性が確信されれば、市場は高評価を
新内閣は暫定政権で、自民党両院議員総会で選出されるため、カギを握っている二階自民党幹事長は安倍4選論者であったことを考えると、菅官房長官が短期リリーフの任を務める可能性が高い。
次期政権に期待される政策は、
(1)対コロナ対策(純粋な行政的項目)
(2)リフレ政策と改革
(3)デジタル化の推進である。
各種改革の旗振り役でもあった菅氏は、改革とデジタル化推進者としては最適任といえる。短期暫定政権であるゆえに、憲法改正など長期課題は封印されるだろうが、その状況に外国人投資家は好感をもつのであれば、株価は新首相の誕生をポジティブにとらえるのではないか。
(了)
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