国の「太陽光・風力発電推進」どこまで本音?再エネ政策に漂う不透明感(前)
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認定NPO法人環境エネルギー政策研究所 所長
飯田 哲也 氏洋上風力バブルでも、相変わらず向かい風が吹く日本の再生可能エネルギー。燃料費ゼロでも多額の初期投資と送電系統の空き容量などの問題から、太陽光・風力発電は政策なしには進まない。自然エネルギー政策専門家であり、認定NPO法人環境エネルギー政策研究所・所長・飯田哲也氏に聞いた。
エネルギー需要減も再エネはシェア増
――再生可能エネルギーの現状を教えてください。
飯田 世界は「再エネ&電気自動車化」へと急速にシフトしています。ガソリン車やディーゼル車など化石燃料車の売上が減少するなか、原油安でもテスラの電気自動車の売れ行きは落ちることなく、テスラ株は2,000ドルを突破して時価総額でトヨタを抜き世界最大の自動車会社となりました。コロナ禍で飛行機や自動車などの輸送燃料ニーズの減退が著しいため2020年の世界エネルギー需要予想は前年比6%減ですが、発電時に燃料が必要ない太陽光や風力発電などは増加しているため、再生可能エネルギーの電力シェアがさらに高まると予想されています(国際エネルギー機関(IEA)調べ)。
太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーは「天気まかせで不安定」と言われていますが、発電方法のデメリットに目を向けるよりも、自然変動する発電量に対応できるように送電系統を構築することのほうがむしろ必要ではないでしょうか。
これまでは、昼夜問わずに安定した「ベースロード電源」として石炭火力や原子力発電などを利用し、電力需要が増えベースロード電源のみでは足りない場合に「ミドル電源」として天然ガス発電を稼働し、1日のうち電力需要が高い時間帯のみ発電する「ピーク電源」として石油火力や揚水発電を稼働するという使い分けをしてきました。
しかし、燃料費が不要で(つまり限界費用が安く)自然変動する再生可能エネルギー(太陽光発電および風力発電)の発電量が急速に増加しており、さらに増やす必要があるため、今までの使い分けは通用しない時代になっています。太陽光や風力などの再生可能エネルギーを最大限に利用できるよう、自然変動発電量を柔軟に送電系統で受け止められる仕組みにパラダイム転換すべきだと考えています。
電力需要量のほとんどを供給できるほど太陽光発電が普及している九州電力管内では、電力供給過剰で何度も太陽光発電の出力抑制がなされましたが、送電系統を整備して効率の高い蓄電池を利用できれば、従来型のベースロード電源に頼らなくても再生可能エネルギー中心で電力をまかなえます。
「CO2排出量の2050年実質ゼロ」を世界が目指していますが、コロナ禍によるロックダウンや自粛などで経済に急ブレーキがかかり、第二次世界大戦以降で最大の前年比減少になると見込まれていますが、それでも20年のCO2排出量の予測は前年比8%です。これほどの経済停滞でも、50年までに温室効果ガス排出ゼロという目標からはほど遠い状況なのです。つまり経済縮小では、気候危機への対応は不可能だと立証されました。日本でも、約120兆円の予算をかけてインフラを置き換える「欧州グリーン・リカバリー」を見習い、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー体制に根こそぎ変えることが不可欠です。
欧州グリーン・リカバリーでは、増加が著しい太陽光や風力などの再生可能エネルギーの送電系統の整備の推進などによるエネルギー分野のCO2削減や、建物の改修によるエネルギー消費量の低減、再生可能エネルギーを利用したEV車(電気自動車)の普及などの省エネの交通の整備などを支援します。また、再生可能エネルギーへの転換をサポートし、エネルギー貯蔵技術などの関連インフラなどへの投資を加速させます。
(つづく)
【石井 ゆかり】
<プロフィール>
飯田 哲也(いいだ・てつなり)
1959年山口県生まれ。京都大学工学部原子核工学科、東京大学大学院先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。認定NPO法人環境エネルギー政策研究所所長。日本のFITの起草者で、自然エネルギー政策では、国内外の第一人者かつ日本を代表する社会イノベータ。国内外に豊富なネットワークをもち、REN21運営委員、自然エネルギー100%プラットフォーム理事などを務め、2016年には世界風力エネルギー名誉賞を受賞。日本でも国・自治体の委員を歴任。著書として、『北欧のエネルギーデモクラシー』(新評論社)、『エネルギー政策のイノベーション』(学芸出版社)、『1億3,000万人の自然エネルギー』(講談社)、『エネルギー進化論』(ちくま新書)など多数。関連キーワード
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