【凡学一生の優しい法律学】日本学術会議委員任命拒否事件(3)橋下氏の詭弁(中)
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(5)橋下詭弁の完全崩壊
橋下氏は、菅総理大臣は任命拒否権をもつがそれには理由をつけなければならないとし、「学問的理由ではなく審議会のバランスを考慮したものなら理由は立つ」とまで説明を加えた。ここまで詭弁を弄するからには、論理破綻を相当に自覚したものと考えられる。
まず、橋下氏のいう「理由をつけなければいけない」ことの法的根拠がまったく不明である。通常、理由をつけなければならないものに理由をつけなければ、それは直ちに違法である。菅総理大臣は理由を付けず任命拒否をしており、その時点で違法行為であることは確定している。橋下氏の論理は、この行為の必要要件までも無視している。
まさか、橋下氏まで「不適切であるが違法ではない」というヤメ検の2番煎じの論理を使うつもりではあるまい。1000%断言できるが、菅総理大臣は任命拒否の理由を公表することはない。橋下氏は、そのこともわかって言っている。もし橋下氏がダメな場合とした「学問的理由で拒否した場合」がどうなるかを考えると、橋下氏の論理が滅茶苦茶な詭弁であることが逆に証明される。
ここではまず、橋下氏も良く知る裁判の場合として考える。裁判官は判決に理由を付さなければならないと訴訟法で規定されているが、理由として形式的に述べられた内容がデタラメであることは少なくない。それでも実は直ちに違法無効となるのではなく、単に上訴できるのみである。つまり、形式的に理由が付されていれば適法であり、日本の裁判では上訴でデタラメな理由の判決がひっくり返ることほとんどない。上級審がデタラメな主張そのものを認めないためである。
菅総理大臣の拒否理由が学問的な理由とすると、法的には何にも動かず、ただ野党が騒ぐのみである。少なくとも、その場合の法的争訟の規定は存在しない。つまり、菅総理大臣のやりたい放題の世界という背景があり、橋下氏の詭弁はこの「デタラメ世界」を隠蔽する効果をもつ。
次に、日本学術会議法には、なぜ総理大臣の任命拒否に関する条文が存在しないのか。それは、総理大臣が学術会議の自治的な決定である推薦を拒否する場合をまったく想定していないためである。法文で「推薦する」と明文の規定があるため、それを否定することは明白な法令違犯である。
厳密にいえば、総理大臣は任命することができるが、学術会議の推薦を否定できるとの文言はないため、総理大臣は学術会議の推薦どおり任命するしかない。一般の任命権者の自由な裁量による任命とは、本質的に異なる。橋下氏の論理は、すべて「任命する」=「一般の自由裁量による任命権」という独善解釈が背後にある誤った議論である。
(つづく)
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