映画効果で注目度増す「事故物件」 殺人現場となった物件の悲惨な現実(前)
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映画『事故物件 恐い間取り』が大ヒットし、最近また注目度が増した「事故物件」。自殺や事故死、殺人事件があったマンションやアパートは、家賃が安いことなどから意外に人気があるという。ただ、殺人事件の現場として大きく報道された物件は、やはり悲惨な状況に陥りがちなのが現実だ。
撮影に激怒した有名死刑囚宅の大家
「いま撮っていた写真、何かに載せるつもりですか? そんなことしたら訴えますよ!」
今から5年前、大阪府池田市。「ある事件」と関係がある、小さなマンションを撮影していたら、大家だという男性に激怒された。
そのマンションには、2001年に大教大池田小学校で児童8人を刺殺した宅間守元死刑囚が住んでいた。この時点で事件から14年が過ぎていたが、入居者が集まらず、大家は困っていたらしい。殺人事件の現場になったわけではなくとも、「宅間守の自宅」として報道されただけで、不動産としての価値は急落してしまったわけである。
興行収入が20億円を超えた映画『事故物件 恐い間取り』では、亀梨和也演じる売れない芸人がテレビの企画で住んだいくつかの事故物件で次々に霊が現れ、観客をハラハラさせた。かたや、現実の事故物件では、霊ではなく、生身の人間の怒りや憎しみ、悲しみが渦巻いている。
以下、筆者が取材した実例を紹介しよう。
殺人現場となった物件への愛情を失う大家たち
殺人事件の現場として大きく報道された賃貸物件は、家賃が安くとも空き部屋のままであるケースが多い。
たとえば、松永太死刑囚が妻の家族や知人をマインドコントロールし、殺し合いをさせていた北九州市の監禁殺人事件。現場となったマンションを筆者が訪ねたのは2017年のことだが、2002年の事件発覚から15年が過ぎてもまだ空き室のままだった。
窓から室内をうかがうと、段ボール箱などが積み重ねられ、物置のようだった。マンション全体を見ても、松永が住んでいた部屋以外も空き部屋が多いうえ、建物の老朽化した部分が修繕されず、花壇も荒れた状態で放置されていた。大家は物件への愛情を失っているのだろう。
2004年発生の奈良小1女児殺害事件の小林薫元死刑囚が住んでいたマンションの部屋や、2014年発生の神戸小1女児殺害事件の君野康弘無期懲役囚が住んでいたアパートの部屋も長く入居者不在だった。いずれも小さな女の子がわいせつ目的で連れ込まれ、殺害された現場だから無理もない。
とくに君野無期懲役囚が住んでいたアパートは、外壁やベランダでツタが伸び放題で、不気味な様相だった。あれでは、なおさら入居者は現れないだろう。
一戸建は取り壊されることが多いが…
一戸建の賃貸住宅の場合、殺人事件の現場であることなどが大きく報道されると、大家が取り壊すことが多い。
たとえば、2005年に起きた兵庫2女性殺害事件。高柳和也死刑囚は、相生市にあった一戸建の借家で被害女性らを撲殺し、遺体を解体した。建物は当時からボロボロだったが、事件後に大家が取り壊し、跡地は草木が生い茂る更地となっている。
一方、2009年に発覚した鳥取連続不審死事件。上田美由紀死刑囚が5人の子どもらと暮らしていた長屋風の借家はゴミ屋敷化していたが、あの家も事件後に取り壊され、跡地は小さな畑となっている。
「建物を取り壊すだけでもお金がかかったのに、ゴミの処理も大変でしたよ」とため息をついたのは、大家の女性だ。あの事件では、こんな二次被害も起きていたのだ。
(つづく)
【取材・文/片岡健】
※死刑確定者のうち、現存者の呼称は「死刑囚」、物故者の呼称は「元死刑囚」としました。
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