映画効果で注目度増す「事故物件」 殺人現場となった物件の悲惨な現実(後)
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映画『事故物件 恐い間取り』が大ヒットし、最近また注目度が増した「事故物件」。自殺や事故死、殺人事件があったマンションやアパートは、家賃が安いことなどから意外に人気があるという。ただ、殺人事件の現場として大きく報道された物件は、やはり悲惨な状況に陥りがちなのが現実だ。
殺人現場物件の跡地の再利用方法は…
殺人現場となった物件が取り壊されたのち、新たに住宅が建てられ、人が暮らしている例もある。
たとえば、2005年発生の広島小1女児殺害事件。ペルー人のヤギ無期懲役囚が被害女児にわいせつ行為をし、殺害した現場であるアパートの建物は取り壊され、現在は一戸建の住宅が建っている。2009年に発生し、今も未解決の板橋資産家夫妻殺害事件も、殺害現場である被害者夫婦の豪邸が取り壊され、跡地には建売住宅が建ち並ぶ。
ただ、殺人現場の物件が取り壊された場合、跡地の使い道として最も多いのは、駐車場だ。
たとえば、2008年に16人が死亡した大阪個室ビデオ店放火殺人事件。現場の個室ビデオ店が入っていた雑居ビルは、場所が南海難波駅近くの繁華街だったこともあり、跡地がコインパーキングとなった。
また、1980年代末に社会を騒がせた首都圏連続幼女誘拐殺害事件では、宮崎勤元死刑囚の実家が事件後に取り壊され、跡地が駐車場になった。ただ、地面は舗装されておらず、利用者はほとんどいないようだ。
家族が殺された家で遺族が暮らし続ける悲劇
殺人現場となった物件で何より悲惨なのは、被害者の遺族が事件後も住み続けるパターンだ。
たとえば、2010年に起きた石巻市3人殺傷事件。犯行時18歳だった千葉祐太郎死刑囚が元交際相手の少女の家に乗り込み、交際に反対する少女の姉ら3人を牛刀で刺し、うち2人を殺害した。現場の一戸建住宅は取り壊され、更地となったが、近所の男性はこう話す。
「あの家は事件後、被害者のお祖母さんが1人で暮らしていて、お祖母さんが亡くなってから取り壊されたんです」
自分の家族が殺された家で人生最後の時間を1人で過ごした女性はどんな思いだったろうか。
2012年に福島県の会津美里町で50代の夫婦が高橋明彦死刑囚に自宅で殺害された事件でも、被害者夫婦の夫の90代の実母は、息子夫婦が殺害された現場である家で暮らし続けていた。遺族が高齢の場合、家が殺人現場となっても引っ越しできず、こんな悲惨な目に遭うわけだ。
現実に殺人現場となった事故物件は、映画のようなエンターテインメントにはなり得ないのだ。
(了)
【取材・文/片岡健】
※死刑確定者のうち、現存者の呼称は「死刑囚」、物故者の呼称は「元死刑囚」としました。
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