2024年11月25日( 月 )

新型コロナ、インフルエンザの救世主はワクチンより「免疫力」(前)

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七合診療所 所長 本間 真二郎 氏

世界で開発が進む新型コロナのワクチン。米国の国立衛生研究所(NIH)でワクチンの研究に携わっていた七合診療所所長・本間真二郎氏は、「重症化のリスクがない場合には、ワクチンの接種は効果とリスクを天秤にかけて個人の判断にゆだねるべきではないか。普段の生活のなかで人が本来もつ免疫力、治癒力を高めることが重要だ」と語る。

トランプ氏「ワープスピード・ワクチン」の真相

本間真二郎氏

 米国の国立衛生研究所(NIH)でロタウイルスのワクチンの研究に携わっていた七合診療所(栃木県那須烏山市)所長・本間真二郎氏は、「病気のある人や高齢者など重症化のリスクがある場合には、新型コロナウイルスはもちろん対策が必要だ。しかし、そうでない普通の人は世の中の『空気』で全員がワクチンを接種するのではなく、ワクチンを打つ、打たないは、その効果とリスクを天秤にかけて個人の判断にゆだねるべきではないか」と語る。その理由を本間氏は、以下のように説明した。

1:日本ではインフルエンザより死亡者が少ない

 コロナは6カ月強で約1,500名が亡くなっているが、一方でインフルエンザは毎年1~4万人が超過死亡(※1)している。インフルエンザのときは、ここまでの自粛をしていただろうか。本間氏は「病気のある人や高齢者など重症化のリスクがある場合を除き、ワクチンを打つことが必要かを冷静に考えてほしい」という。

2:遺伝子ワクチンのリスク

 今開発されているコロナのワクチンの約3分の1は、「遺伝子ワクチン」と呼ばれるDNAワクチン、RNAワクチンだという。トランプ氏の「ワープスピード・ワクチン」発言のように、通常のワクチンなら5~10年以上かかる開発期間を極めて短縮できるためだ。現在は、コンピューターに設計図を入力すると、遺伝子ワクチンとなるDNAやRNAを無限に人工合成できる。しかし、遺伝子ワクチンは今まで人に使われたことがないため、販売後の臨床試験データがなく、その効果や副作用などは未知数だという。

 本間氏は「遺伝子ワクチンは、人の遺伝子に影響を与える可能性があるため、何かの原因でワクチンに入っている遺伝子が人の遺伝子に組み込まれる可能性があると懸念している。実際に古代から人の遺伝子はウイルスによって組み変わってきており、人の遺伝子のおよそ10~30%がウイルス由来ではないかと言われている。しかし、これは自然に起きている現象であり、人工物を入れるのとはまったく次元の異なる話である」と語る。

3:抗体ワクチンの効果に懸念

 本間氏は、「まだ結論は出ていないが、新型コロナウイルスの感染を阻止する『抗体』はあまり効いていない。抗体はおそらく新たな感染を防ぐ効果はあるが、一度感染すると治療・回復にはあまり効果がないため、従来型の抗体をつくるタイプのワクチンはあまり期待できない」という。

 ウイルスや病原菌から体を守る免疫力には、まずウイルスが体に侵入し、感染するのを防ぐ皮膚や白血球などの自然免疫と、感染症にかかったときに治して回復させる抗体や細胞性免疫(※2)などの獲得免疫がある。これまでの感染症対策では、感染を防ぎ、感染しても治す抗体をつくることがゴールだったが、今回は抗体のみでは通用しない可能性がある。新型コロナウイルス対策では、体がもともと備えている自然免疫力と細胞性免疫がカギになるようだ。

4:抗体の副作用

 以前に流行したSARSでは、抗体があると病気が重症化する抗体依存性免疫増強(ADE)という副作用のリスクが原因で、これまでワクチンが開発中止になってきた。そのため、SARSに近い新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗体ワクチン開発でも、命に関わるADEのリスクが懸念されている。同じコロナウイルスの仲間であるMARSでもADEのリスクが原因でワクチンができていない。

(つづく)
【石井ゆかり】

※1インフルエンザの超過死亡:インフルエンザ関連の死亡
※2 細胞傷害性T細胞(CTL)やマクロファージが直接ウイルスなどを攻撃する免疫反応

<プロフィール>
本間 真二郎(ほんま・しんじろう)

1993年札幌医科大学を卒業。全道の中核病院・地方病院に小児科医として勤務。2001年米国、国立衛生研究所(NIH)に留学。専門はウイルス学・ワクチン学で、主にノロウイルス、ロタウイルスの研究に携わる。05年帰国。札幌医科大学新生児集中治療室(NICU)室長を経て、09年に退職。09年自然派の医療を実践するために、栃木県那須烏山市に移住。現在は、地域に密着した医療に携わりながら、プライベートでは「農的生活」を送っている。 皆で米づくりを、個人的には自然栽培で季節の野菜と穀物を育て、調味料を自給自足。著書に『病気にならない暮らし事典』、『病気にならない食と暮らし』(セブン&アイ出版)、『自然に沿った子どもとの暮らし・体・心のこと大全』(大和書房)『感染を恐れない暮らし方 新型コロナからあなたと家族を守る医食住50の工夫』(講談社)など。

 

(後)

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