2024年09月09日( 月 )

【凡学一生の優しい法律学】三権分立論の嘘(4)

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 日本国民の大部分が、日本は三権分立の民主主義国であると信じている。しかし、彼らは政治的制度について論理的にも事実実証的にもまったく確認することなく、「制度の建前=真実」という極めて稚拙な認識をもってはいないか。
 日本が真の意味で民主主義に基づく三権分立国であるかどうかは、憲法の記述と現実に発生した政治事件の顛末を検討・検証すること確認できる。大事なことは、「自分が信じる日本社会が嘘の社会であることを実感するために憲法を読む」という視座で臨むことであり、「難しい」「難解」と思い込む自己の内面がそもそも「誤った認識に毒され、洗脳されている」ことを知るべきである。

国政調査権の機能不全が露呈した桜を見る会事件

 行政権の執行について国政調査権が否定され、制度の無機能が露呈した事件の1つが、桜を見る会事件である。この事件では、担当行政庁による記録公文書が明らかに違法に廃棄処分され、事件の真相が隠蔽されているという客観的事実がありながら、野党議員による真実究明は断ち切られた。

 その最大の理由は、「国政調査権」が議院の固有権として構成され、それぞれの国会議員には国政調査権はないかのような解釈が大手を振っているからである。国政調査権は議院の決定でしか実行できないという論理は、国会の多数党の賛成がなければ発動できず、政権与党による政治行為はいかなるものも国政調査の対象になり得ないことを意味する。

 滅茶苦茶な法解釈であるが、国会の証人喚問という手続がそのように規定されていることから、国会議員が持つ立法権執行に必要な国政調査権を否定してしまった。国会議員は1人ひとりが主権者から委任された立法権の執行に必要な国政調査権を有しており、正当な権利行使として認められる。その結果、集大成としての証人喚問は国会の議決が必要であるにすぎない。

 野党の合同調査委員会は、桜を見る会事件に関して、担当行政庁が参加者名簿を違法に破棄したため、それに代わる資料として安倍晋三事務所から提出されていた参加申請書の開示を求めたが、個人情報の保護を理由に行政庁から開示の拒否を受けた。
 個人の利益が、公益に優先する逆理の論理である。このような不当な対応をされた場合に、権利者が法的責任を追及すべきということを野党の国会議員が知らないお粗末さが問題である。

 国会議員の正当な業務行為が公務員の正当な業務行為と衝突しており、法的に解決する手段は裁判のみである。野党の国会議員には、公務員の行為は法的にはすべて「行政処分」であるという基本知識が完全に欠けている。

国家賠償請求訴訟を提起すべき

 野党議員が行うべき第1の方法は、当該公務員の処分取消の行政訴訟と、かつ当該公務員の行為が正当行為に名を借りた不当不正行為であれば同時に民事賠償請求訴訟を提起する必要があるため、国家賠償請求訴訟を提起することである。立法権と行政権の対立を、司法権に介入してもらって解決する方法である。

 結果は敗訴であったとしても、重要なのは判決理由の法的理論的構成である。法的論理が世界の法的知性の批判に耐えうるものかどうかという点が、民主主義の成熟度であるためである。
 

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