2024年11月21日( 木 )

大工仕事から総合建設業へ発展 九州全域を視野にその可能性を広げる

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(株)OZ工務店

単なる手間請負から設計・完成まで 家づくりのすべてを請け負う仕事へ

福岡市城南区に本社を構える。ここから九州全域への進出が始まる
福岡市城南区に本社を構える。
ここから九州全域への進出が始まる

 大工の棟梁を生業としていた父親のもとで約2年、その後、知人のもとで勉強を数年重ね、24歳で独立した(株)OZ工務店の代表取締役・小川和敏氏。現在では現場監督12名、設計技術者3名、そして営業、事務スタッフを率い、多彩な建築物を世に出す総合建設会社として日々存在感を高めている。

 「意外に思われるかもしれませんが、高校は建築科ではなく繊維工学科でした。いったんはある企業に就職したのですが、水が合わずにすぐに辞めて大工の父親のもとで働き始めました。でも親方が父親ということで甘えがあったため、その後、知人のもとで勉強をし、24歳で大工として1人立ちしました」。

 それからしばらくは弟子と2人で手間請け仕事を繰り返していたが、転換点となったのは高校時代の友人の家づくりをまるごと引き受けたことだったという。

 「設計から完成まで、すべてを請け負う初めての機会でした。はたして自分にできるかどうかさえわかりません。しかし、この経験がその後の私にとって大きなステップになります」。

 友人の家づくりを完遂したことで、小川氏は家づくりに対して大きな自信を得る。また、手間請けとは違う仕事の面白さを体感できたことで、工務店の営業方針を新築の設計から完成まで請け負うことにシフトする。

 現場監督などの専門職を雇い入れ、事業拡大を狙うとともに2005年には工務店を法人化し、自らを事業家の立場へ。しかし、大工といえば専門職の元祖的職業だ。職人と経営者の立場を両立するためにどう折り合いをつけたのだろうか。

 「そう決意した際に、それまで大切に扱ってきた大工道具一式をすべて若手に譲りました。もちろん今でも現場指導することはありますが、基本的にはすべて社員たちに任せています。著名な実業家の著書のなかで、『社長の仕事は部下に仕事を任せること』と説かれているのですが、まさしくその通りだと思います」。

感性に訴求するデザイン性だけでなく性能にもこだわり、顧客を心底満足させる

 自社設計の建売住宅や注文住宅を中心に、デザイナーズアパートなども手がけ、住空間を楽しみたいというユーザーから高い評価と支持を集める。同社が手がける注文住宅や建売住宅などの施工例を見ると、洗練されたデザインが特徴的でいかにも現代のニーズにマッチしているが、その魅力は外見ばかりではない。

 最近では、耐震、省エネ、劣化対策、維持管理対策などの点で最高クラスの等級3を得た2020年基準品質クリア住宅「ONE’S  CUBE」を手がけ、大きな反響を得た。使用している「FFC免疫加工」も目を引く。

 「今の木材は酸性雨や汚れた大気の影響で人体にとって決して良いものとは言い切れなくなっています。建材やクロスなどに至っては化学薬品などを使っていますから、場合によってはアレルギーやアトピーを引き起こす原因になります。しかし、FFC免疫加工技術を使えば、建材やクロスなどに含まれる水分に水溶性の鉄ミネラルを浸透させることができ、化学物質による害を最小限に抑えることができます」。実際、その効果はハーバード大学や国内の研究機関によって証明され、ユーザーからは子どもの鼻炎が改善したという声もあるという。

福祉関係の施設も数多く手がけている。写真の介護施設もその一例
福祉関係の施設も数多く手がけている。写真の介護施設もその一例

新規開業クリニックに深く関わることで医療に特化した新しい展開を図る

 そして今、新たに事業開拓の可能性を見い出しているのが、医療分野の建築だ。クリニック開業などを支援する(株)医歯薬ネットと連携。同社が手がける案件の北部九州エリア内での施工を担当し、整形外科、産婦人科などのクリニックの建築を行う計画だという。かつての手間請け時代と圧倒的に異なるのは、単に施工会社として連携するのではなく、施主である開業医と設計の段階から接点をもち、機能重視、独自性を演出するプランを通し、施主からの絶対的な信頼を得ていくことだ。

 「当社では現在、20代から60代まで各年代の社員が力を発揮しています。1つの案件を成功させるためには、営業も施工管理も職種を超えてアイデアを出し合って進めなければなりません。日ごろから社員同士のコミュニケーションはとても大切にしています」。トップダウンで上司が一から十まで指示することなく、社員に大きな裁量権を与えることで、個々の能力を最大限に発揮してもらうという。今後の建築では、とくにそうしたやり方が功を奏していく。

九州全域、そして沖縄へと事業を拡大し OZ工務店にしかできない仕事を実現へ

 福岡市に拠点を置きながらも、今後は九州全域に事業エリアを拡大していきたいと語る小川氏。とくに注目しているのが沖縄だ。従来、木造住宅が少なかった沖縄では、これまでになく木造住宅のニーズが高まっている。木材流通やプレカット工場などの必要な体制も整いつつあることから、進出計画は日増しに現実味を増している。

 「沖縄では大工が不足しています。長年住宅建築に関わってきた当社としては、今後、大工の育成にも関わることができたらと考えています。設立以来培ってきた技術を提供し、大工の育成を通して沖縄の発展に貢献できたら最高です」。

 一介の職人から事業を起こし、幅広いニーズに対応できる技術力を備えた強みを活かし、住宅から医療・介護施設やオフィスビルなどの建築物に至るまで活躍の領域を広げる小川氏。OZ工務店は総合建設業としてさらなるステップアップを目指す。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:小川 和敏
所在地:福岡市城南区茶山4-3-36
設 立:2005年9月
資本金:3,230万円
TEL:092-836-5800
URL:https://ozkoumuten.co.jp


小川 和敏 氏<プロフィール>
小川 和敏
(おがわ かずとし)
1967年3月13日生まれ、福岡市早良区出身。福岡工業高等学校卒。大工として修行した後、97年に小川工務店を創業。事業拡大にともない、2005年に(有)OZ工務店を設立し、07年には(株)OZ工務店に商号変更。娘たちが成人した現在、趣味は夫婦で楽しむドライブと美食探訪。

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