時代の荒波を乗り越えるためホールディングス制導入
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(株)アキラホールディングス
時代の動きを見据え、グループ一丸となり 力強く牽引していく持株会社体制へ
2020年1月、福岡市中央卸売市場の鮮魚市場で仲買を営む(株)アキラ水産は、新たに(株)アキラホールディングスを設立し、持株会社体制へと舵を切った。
新体制構築により、6月から施行された改正卸売市場法に柔軟に対応する体制が整った。企業価値を高めるとともに、規制緩和によって起こり得る新規参入勢力に正面から対抗していくのだ。この新法の施行により業界そのものの有り様が変わっていくかもしれないが、アキラグループはそれをむしろ追い風にする。
これまでのアキラグループは、福岡鮮魚市場で取扱量トップの総合仲卸アキラ水産を主軸に、マグロを取り扱う仲卸の「コウトク水産」、貝類や高級食材仲卸の「安部水産」、冷凍、塩干物を販売する「四季海鱻」「一心」、そして加工・通販を手がける「アキラ・トータルプランニング」という構成だった。今後はアキラホールディングスの元にアキラ水産およびこれら5社が連なるかたちとなり、各社がより突破力を発揮しやすくなった。
トップは水産業全体をリードしてきた立役者ともいえる存在
さて、一昨年に同グループは記念すべき創業100周年を迎えている。近年減り続ける魚食の復活を掲げ、長年、福岡の食卓に新鮮でおいしい魚を届けてきたという自負をもつ企業体だ。魚介類の仲買や加工、販売を行う海産物のエキスパートとの呼び声も高いが、ここまでの足跡をたどると、その歴史は1918年、つまり1918年まで遡ることになる。
現代表取締役CEOである安部泰宏氏の祖父・栄次郎氏と叔父・明氏、そして泰宏氏の父・篤助氏が、現在の柳橋連合市場で「明市場」として開業したことが始まりだ。連日、多くの客でごった返していた当時の同社。仕入れた魚をほぼ原価で売ったため、客は大喜びだったという。売るほどに、店内には魚を入れていた空の木箱が積み上がる。この有り様から「箱儲け(カラ箱の買取賃分だけが儲け)」とまで言われ、以後、その薄利多売の商売のやり方は、同社のDNAである「顧客第一主義」へと発展していく。
やがて鮮魚、青果、乾物にとどまらず呉服まで取り扱う「明百貨店」へと拡大。戦中、戦後を経ても「顧客第一主義」のDNAは受け継がれ、安部泰宏氏がトップに立つと、さらに時代のニーズに合わせた業容拡大が加速する。60年代に入ると同氏は、「スーパーマーケットの時代がやってくる」といち早く見抜き、即座に量販店向けの品ぞろえに変更し、狙い通りに業績を拡大させていった。
そうした事業家としての手腕を評価され、安部氏は全国水産物卸組合(連)副会長、九州地区水産物卸組合(連)会長、福岡市鮮魚仲卸(協)理事長などを歴任。福岡魚食普及推進協議会会長として、魚食普及イベント「市民感謝デー」を毎月開催するなど、水産業全体をリードしてきた立役者といえる存在だ。また、こうした数々の貢献から2005年に藍綬褒章、11年に旭日雙光章を受章している。
多様化する社会動向や顧客ニーズに対応できるよう経営基盤を強化
昨今、水産業を取り巻く環境は激変している。その大きな理由の1つが漁獲高の減少だが、そこにきて若者の「魚離れ」が追い打ちをかけるようにのしかかる。しかし、安部氏はこう分析する。「魚が売れないのは調理の手間がかかるからだ。その面倒なところを我々がすべてやれば、きっと喜んで食べてもらえる」。
2000年代になると、取引先小売店の加工作業の軽減のために、魚を捌いて卸す1次加工や2次加工、パッキングまで施す3次加工までを自社で手がけるようになる。08年ごろからはグループ会社でオリジナル加工品の開発にも着手。明太子の「あきらめんたい」や「アキラの鯛茶」が商品化され、これらは今も人気のロングセラー商品となっている。
さらに16年には古賀工場を新設。市場内の自社加工場をリニューアルし、「焼く・煮る・揚げる・蒸す」まで行うことで、より安心な鮮魚の加工やオリジナル商品の製造に力を注ぐ。どうすれば魚を食べてもらえるかを顧客の目線で考え、すかさず行動に移すことで常に時代を先取りしたことはじつに見事だ。
同社の場合、総合仲卸事業にとどまらず、冷凍・塩干物事業、加工・通販事業、直販事業と多岐にわたっていることが大きな強みだ。漁獲量によって不安定になりがちな水産業界にあっても安定した経営が実現できることには、それだけの理由がある。しかもそれはさらに進化を続ける。市場外への新たな流通ルートの開拓に取り組む一方、品質管理マネジメントシステムのISO9001の認証を取得した。
グループ各社では卸売市場のHACCP(衛生管理基準)対応の考え方を取り入れた衛生管理に取り組んでおり、アキラ・トータルプランニングでは、非認証水産物の混入防止を確保するCoC認証も取得するなど徹底している。社内改革を図るとともに、仲卸の枠を超えて加工や小売にも積極的に参入し、多様化する社会動向や顧客ニーズに的確かつ柔軟に対応できる経営基盤の強化を進めているのが、今日のグループの姿だ。
持株会社制移行にともない、安部氏が「アキラ水産」の会長に、現場指揮を執ってきた副社長・上田浩祐氏が社長に就任した。上田氏は魚食普及のために教室を開講するなど、業界を底辺から支えることに熱心な人物だ。
上田社長は、「挑戦し続けることがアキラグループのDNA。水産業界全体の発展を目指すことが自社の成長につながる。そんな時代になってきました。現場主義、顧客第一主義の私たちの価値がますます認められるよう、市場全体の発展にさらに寄与していきます」と決意を語る。組織整備によりさらに躍進するアキラグループの今後に、期待する人は多い。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:安部 泰宏
所在地:福岡市中央区長浜3-11-3-701
設 立:2020年1月
資本金:4,850万円
TEL:092-711-6601
URL:https://www.akirasuisan.co.jp
<プロフィール>
安部 泰宏(あべ やすひろ)
1939年3月29日生まれ、福岡市出身。大濠高校卒。趣味はゴルフ。全国水産物卸組合(連)副会長。九州地区水産物卸組合(連)会長。福岡市鮮魚仲卸(協)理事長。福岡魚食普及推進協議会会長。福岡城西ロータリークラブ会長。2005年4月藍綬褒章、11年6月旭日双光章。福岡商工会議所で卸売商業部会長)などを経て14年から副会頭。法人名
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