2024年11月23日( 土 )

住宅建設の材料をオールラウンドに扱いジャスト・イン・タイムで届ける

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(株)キユーハウ

プレカット加工需要の拡大とともに グループの業績が飛躍的に伸びる

福岡、熊本、鹿児島、宮崎の拠点で九州全域を商圏とする
福岡、熊本、鹿児島、宮崎の拠点で九州全域を商圏とする

 ハウスメーカーや工務店、建設会社などに建材と木材をそれぞれ販売する。つまり、住宅を建てるために必要な材料をオールラウンドで取り扱っているのが、(株)キユーハウだ。しかもジャスト・イン・タイムでの商品提供を強みとし、とくにプレカット(木材を工場であらかじめ切断しておくこと)加工ではその名を九州全域に轟かせている。

 同社は福岡市東区の本社を司令塔に、福岡・熊本・鹿児島・宮崎に8つの営業所を構え、プレカット事業部を展開する。また、グループ企業の九州ハウジング(株)、(株)キューロジ、(株)ケイ・シー・エムと有機的に連動することで、多彩な事業展開を図ることも同社の特色の1つだ。

 グループ全体の従業員数は200名にも達する。その中心に立ち、巧みな舵取りを見せるのが代表取締役・岩永彬氏だ。大手ハウスメーカーでの経験を経て同社に入り、父親である岩永清氏の後継として2001年に社長に就任した。清氏が始めたプレカット加工事業をグループの主軸事業にまで発展させたのは彬氏の大きな功績だ。

 「プレカット加工がスタートしたのは1989年です。そのころはまだあまり認識されていなかったため、取引先の評判もあまり芳しくはありませんでした」。木材の加工を工場でやってしまうというのだから、腕に覚えのある大工ほど気分のいいものではなかっただろう。自分たちの仕事が取り上げられてしまうといった感覚だったことは想像に難くない。

 しかし、その利便性はやがて誰もが認めるものになっていく。社長に就任した直後の2002年には、本社内に本格的なプレカット工場をつくり、顧客に向けてその魅力を強くアピールした。さらに07年にはパネルプレカット工場を増設し、さらに精度の高い加工木材の提供を可能にしたことで、そのポテンシャルは飛躍的にアップすることになる。従来から取り組んできた、建材や住宅設備機器販売とのシナジー効果も大きかった。プレカット加工製品の需要は一気に拡大していく。

 岩永氏によれば、そこには前社長の緻密な戦略もあったという。プレカット加工を受注する過程では建物の設計図を見ることができる。当然、図面を見ればどんな設備機器が求められるかもわかるから、住宅設備機器の営業上、そのアドバンテージは絶大だ。つまり、親子二代に渡る連携プレイが見事に花開き、同社は伸びるべくして伸びたといえる。

大きな自信の背景にあるのは無借金経営という抜群の健全体質

精度の高い木材加工を可能にするプレカット加工工場。写真は本社内の工場設備機械
精度の高い木材加工を可能にするプレカット加工工場。写真は本社内の工場設備機械

 かつての建築木材業界は地場企業が大小ひしめき競い合っていたが、今は少々状況が違う。競合他社が少しずつ脱落していくなか、同社が着実に力を伸ばせたのは、事業の可能性を俯瞰的に模索し、時代のニーズを的確につかんできたからにほかならない。国内産の木材を使い、地域の林業や木材産業関連事業者との連携を重視するという姿勢も功を奏した。木材自給率の向上や森林再生につながることから、公共施設のニーズは高い。14年にはグループの九州ハウジングで、国内最大級の大断面加工機を導入。大型の非住宅建築、たとえば幼稚園や小学校といった建物の建設に対応できる木材のプレカットまで可能にするなど、あらゆる場面に活躍の場を広げている。

 とはいえライバル企業の存在が無視できない環境であることは現在も変わらない。相手となるのは関東や関西からやって来る大手の同業他社たちである。しかし岩永氏は泰然と構える。これまでの実績があることはもちろん、無借金経営という抜群の健全体質が大きな自信の背景にある。

 「新しいことをやる必要はないと考えています。今やっている事業に付随するカタチで、少しずつ領域を広げていければいい。その意味で、社員たちには自分たちの役割をしっかりはたしてもらうことを求めています」。実際、グループの総合力を駆使すれば他社が真似のできない領域で事業を拡大することも可能だという。

採用基準は、人として基本的なことをきちんとやれる人材

 とはいえ、あまり格好良いことは言いたくないと控えめに語る岩永氏。社員たちに対してできないことは約束しないが、会社としてできることは可能な限りやっていきたいという。時代の流れに応じるべく、労働環境の改善にも意欲的だ。たとえば、新しいシステムを取り入れることで仕事が軽減されるのなら、それは積極的に導入する。

 中小企業では珍しいことだが、例年10名前後の新卒採用を長年に渡り継続している同社は、プロパー社員の占める割合が極めて高い。もちろん、中途採用者もいるがそれはわずかだ。

 新卒で入って来る社員たちがもつポテンシャルについてはあえて説明するまでもないが、同社ではそうして入社してきた彼らのために教育や福利厚生にも他社以上に力を注ぐ。建築士やフォークリフトの運転技能、玉掛け技能といった専門資格の取得をバックアップすることはもちろん、保有資格に相応の手当を用意することでモチベーションを高めていく。

 岩永氏が考える採用基準は「約束をしっかり守れる人」。人として基本的なことをきちんとやれる人材だという。入社時は、本人の希望で営業や購買を担当する総合職と、その他の専門的な職域を担当する社員に振り分けられる。基本は実力主義だ。能力が高ければ、その力に相応しい仕事とポジションを得ることになる。

 63年の歴史をもち、地場企業として絶対的な存在感を放ち続けるキユーハウ。ここで自らの力を試してみたいと考えるなら、その選択は極めて賢明だ。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:岩永 彬
所在地:福岡市東区箱崎ふ頭4-3-5
設 立:1961年4月
資本金:4,500万円
TEL:092-631-3781
URL:http://www.kyu-hou.co.jp


岩永 彬 氏<プロフィール>
岩永 彬
(いわなが あきら)
1971年福岡市生まれ。山口大学経済学部卒。大手ハウスメーカーに勤務した後、(株)キユーハウに入社。60歳を契機に引退した父・清会長(現職)の後を継ぎ、2001年に30歳で代表取締役社長に就任。(一社)福岡県木造住宅協会(FBN)事務局担当として、国産木材の活用にも貢献している。

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