2024年11月20日( 水 )

ストラテジーブレティン(267 号)2021 年コロナ制圧、世界同時好況が視野に、怒濤の日本株高も(1)

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 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
 今回は2020年12月3日付の記事を紹介。

2020年末世界株高ブーム

 サンクスギビングからクリスマスへと続くホリデーシーズンに入り、米国株価3指数はそろって史上最高値の更新という最大級のプレゼントがもたらされた。コロナパンデミックによる6週間で大幅な株価急落からの鋭角的な回復は、もっとも楽観的であった武者リサーチの想定をもはるかに上回る展開である。

 しかし、より大きなサプライズは日本株式の顕著な台頭である。日本株式は史上最高値になってはいないが、ここ数カ月の世界株式市場では、突出した好パフォーマンスとなっている。

 コロナが起きる直前まで、世界経済はブーム状態、ネット情報通信革命が進展し、米国の失業率は3.5%と史上最低まで低下、米国株価はリーマン・ショック後の10年間で4倍になっていた。武者リサーチは、この長期経済ブームの波が終わってはいない、コロナの後は再度、上昇の波に戻ると主張してきた。その理由は、コロナが歴史の流れを押し進めると考えられるからである。この主張の正しさは、株価上昇によって証明されつつあると考える。

(1)日本株の時代が始まったか

突出する日本株の勢い、日本金融の安定性

 日本株式の突出した好成績が注目される。8月から11月にかけての株価上昇率を比較すると、日経+19.1%、NYダウ+11.2%、S&P500+9.9%、韓国KOSPI+15.1%、台湾加権+9.7%、ドイツDAX+5.1%と日本株の強さが際立つ。とくに米国大統領選挙に前後して、米国株式が大きく乱高下したなかで、日本株式には押し目らしい押し目がなく、突出した安定性が続いている。

 金利の世界でも、日本は世界の「落第生」の地位を返上した。デフレとゼロ金利は長らく日本の専売特許であったが、今や日本の長期金利は+0.02%と欧州諸国のマイナス金利を大きく引き離している。長短金利差(イールドカーブ)は不十分ながらスティープ化し、ドイツ、フランスなどの欧州諸国よりも金融機関の収益基盤が強められている。日銀の革新的イールドカーブ・コントロール政策が効いている。また後述するが、財政出動が日銀の荷重を和らげている。「世界最先端」の財政金融政策の連携が機能し始めている表れ、と評価できる。

 この安定性は、為替市場にも表れている。米国の超金融緩和策の結果、ドル安が進行しているが、ドルの下落は、対日本円ではごく限定的である。韓国、台湾と比べて円高はマイルドであり、日本株式を鉄火場にしていたボラティリティ()も相対的に大きく低下している。そもそも日本株は割安、かつ企業の財務安定性が強固で、いつ見直し買いが入っても疑問ではない状況にあった。その超割安を是正する株式バリュエーション革命が、コロナ後に展望される世界同時の好況をきっかけとして、起き始めているのかもしれない。

歴史的大相場の可能性

 日本株式の11月以降の度肝を抜く強さと安定性は、日本株式が新たな上昇加速ステージに入っていることを示唆する。その場合、2000年代以降の3回目の上昇相場である可能性が出てくる。先行する2回はどちらも息の長い上昇相場であったが、当初の急騰場面の短期上昇が強烈であった。

 05年8月から始まった小泉郵政解散相場は、最初の5か月(06年1月まで)で42%の上昇となった。12年11月から始まったアベノミクス相場は、最初の6か月(13年5月まで)で66%の上昇であった。今回が2000年以降3回目の大相場とすれば、菅政権成立時、20年9月の2万3,000円を起点として、30%上昇なら3万円、40%なら3万2,200円、50%上昇なら3万4,500円が視野に入ってくる。

(つづく)

※:価格変動の度合いを示す。 ^

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