強固な「夫婦愛」をさらに強固な「経営同志愛」へと昇華~企業としての飛躍をつかむ~
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ゼロから、いやマイナスから「企業躍進ドラマ」を展開
筆者は45年にわたり企業調査マンに従事しており、あらゆる企業の栄枯盛衰のドラマに携わってきた。河村恭輔・勝美夫妻の企業経営における悪戦苦闘から飛躍へと至る道程は、まさしく涙と感銘が交錯する企業ドラマで、小説化してもいいだろう。「2人の企業経営における歩みの一断面を紹介することは、経営者・幹部の方々にとって経営の指針になる」と確信した。そこで「創業者・恭輔氏の道」特集を企画した。この特集号を永年お世話になった恭輔氏への弔辞にかえさせていただきたい。
まず結論から述べる。ゼオライト飛躍の原動力は「恭輔・勝美両氏の強固な夫婦愛が経営同志へと昇華した」ということである。創業者・恭輔氏はまさしく「水学者」(1994年工学博士取得)の見本であった。嶋村社長に言わせると睡眠を惜しんで勉強を続けていたという。「嶋村君、この本を読んでおけ」と命令を受けることは数知れず。その研究結果としてRO(逆浸透膜)との出会いがあり、これが同社のビジネスモデルの強い支えとなった。
恭輔氏と勝美氏は83年に結婚した。当時、同社の経営内容は「悲惨そのもの」と言ってもよかった。勝美氏は「お父さんとの運命とは、会社を潰してはいけないという使命を受けたことだ」と悟った。それと同時に「社員たちの生活を守ってやるのが私の使命」と覚悟した。また、同氏の器量は傑出している。本当に肝っ玉が据わっている人だ。この性格があったからこそピンチから自主再生できたのだ。
恭輔・勝美両氏は中小企業の夫婦愛の苦労のレベルを超え、お互い意識しないままに「卓越企業づくり」の「同志的結合」へと発展していった。ビジネスが軌道に乗り、躍進するまでには幾多の辛酸を舐めたことであろう。だが2000年以降の20年間、ゼオライトは大飛躍の局面を迎えた。この飛躍の原動力は、2人の「同志的結合」があってこそ初めて可能になったのである。
人財つくりと事業計画づくりに没頭
やがて受注も途切れないようになり、恭輔・勝美両氏は経営の時間軸について考える余裕をもてるようになったのだ。90年前後から「会社の組織づくり、人財つくり」を真剣に検討し始めた。まずは福岡県中小企業家同友会での事業計画作成の勉強会に参加するようになった。それから恭輔氏は92年4月、BE研究会の主宰する1週間の感性訓練研修に参加した。
運命の出会いは94年、日本創造教育研究所(日創研)・田舞徳太郎代表との邂逅であった。このセミナーに勝美氏は積極的に関与していった。この時期、筆者も一緒に受講したものである。ここからがゼオライトにとっての本格的な組織づくりのスタートだったのだろう。人財つくりの極限=「社員を大切に」の実践は「朝食の提供」である。現場に出る社員たちに午前6時過ぎから本社食堂で朝食を料理し、食べてもらうことにしたのである。
恭輔・勝美両氏のセミナーへの真摯な姿勢は同期生たちが証言してくれている(5頁〜7頁にて後述)。同窓生の誰もが「何よりも謙虚に学び、すぐさま実行、実践する」態度を評価してくれている。両人のひたむきな学びの姿勢は次に受講する社員たちを感化していき、自然と幹部候補社員たちのレベルアップにもつながっていった。「人財つくり」には、やはり最低10年の月日を要するものである。
強固なビジネスモデルの構築へ
94年夏、福岡は渇水に見舞われ、ゼオライトにとっては千載一遇のチャンス到来となった。大口ユーザーが水の安定供給のための方策を渇望し始めたのである。同社には問い合わせが殺到するようになった。その結果、(1)井戸水=地下水の活用、(2)使用料が格段に安くなる、(3)RO水の効果という3重のメリットを理解するようになったのである。受注した同社は確実な仕事を積み重ねていった。当然、実績と信用が積み上がっていき、現場は東京を超え、2011年3月11日、東日本大震災が発生したときには仙台市の食品工場の工事請負までこなしていた(関連記事18日掲載予定)。
1970年8月にゼオライトを設立。85年までは事業基盤ができるまでの模索の時代。同社の場合、どん底の苦境に落ち込んだこともあった。「どん底時期」だった83年に恭輔・勝美両氏が結婚。ここから光明が見えてくる(自然に転がってくるわけがない)。1985~2000年までの15年間は躍進のための条件整備の時期(関連記事16、17日掲載予定)。市場も九州の域を超えだした。
2000~2020年までの20年間は躍進時期に突入。中小企業で、この域に到達する確率は1%ほどだろう。06年には勝美氏が社長に就任し、躍進のための鞭をふるった。そして嶋村謙志氏が3代目社長に就いた(関連記事14、15日掲載予定)。
恭輔さん! 貴方は奈落の底も体験されたが、不屈の精神を発揮して事業の躍進を実現させた。今時少なくなった、意気軒昂な経営魂をもった感服させられる経営者である。事業継承にも支障はない。安らかにお眠りください。
合掌
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