ストラテジーブレティン(269号)~2021年は短期、中期、長期、超長期循環上昇の起点になる~今年こそは大相場に賭けよう(5)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「Bストラテジーブレティン」を掲載していく。
今回は2021年1月1日付の記事を紹介。(4)超長期経済循環、労働時間の劇的短縮が消費力を飛躍させる
労働形態多様化、労働時間劇的減少へ
物理的な集合労働、集合教育の時代が終わりつつある、リモートワーク、フレックスワークが常態化し、労働時間が劇的に減少するだろう。それは消費力を大きく向上させるだろう。
1919年に創設されたILO第1号条約で謳われている、週48時間労働が100年経った今も達成されていない。労働生産性が100年で10倍も上昇したにもかかわらず、人類の労働時間はほとんど変わっておらず、生産と消費のバランスが著しく崩れてしまった。図表16に見るように、人類の技術と生産力はこれほど高まったにもかかわらず、労働時間だけは中世からあまり変わっていないことは不思議である。
過剰生産、供給力余剰、資本(=貯蓄)余剰、デフレ、ゼロ金利など、今先進国が直面する問題の原因の多くはここにある。つまり、100年前に比べて生産性(=供給力)が著しく増加したにもかかわらず、消費の土台となる余暇がまったく増加していないため、消費力が停滞していることに諸問題の根本原因があるのではないだろうか。すでにモノの消費需要は飽和点に達し、サービス消費が需要の中心になっている現在、需要を喚起するためには、一段と余暇を増加させなければならない。
長期労働は、家族運営・子育ても困難にする。長時間労働で先進国へのキャッチアップをはたしてきた日本、韓国、中国などのアジア諸国で出生率が急低下している最大の原因は、長時間労働・労働形態の柔軟性の無さにあるのではないか。
Covid-19のパンデミックが引き金を引いた労働編成の劇的変化は、100年分のWork Life Balance(労働時間 vs. 消費時間) を是正するものになるだろう。それは人間関係、組織形態をも根本的に変革していくだろう(図表17参照)。
工業社会時代からサイバー社会時代へ
以上の諸現象は、バラバラに起きていることではない。原始採集経済⇒農業経済⇒工業経済につぐ新たな社会ステージが、デジタルネット革命によって引き起こされ始めたとみるべきであろう。人間社会が工場制機械工業をコアとする編成から根本的に離脱し始めたと考えられよう。
それは、価値創造の形態を劇的に転換させる。価値はどこから生まれるのかというと、差額地代から生まれる。異なる2つの生産条件(たとえば肥えた土地とやせた土地)の下で、産出に差額が生まれた場合、肥えた土地から生まれるプラスアルファが付加価値である。そして肥えた土地を利用するコストが、上乗せされる差額地代であった。このプラスアルファをもたらす要素が、農業時代の土地、工業時代の機械(=資本)から、今やサイバー上の知恵に変わりつつある。
価値の創造は、農業時代の土地の上でも、工業時代の工場(事務所)のなかでもなく、今やサイバー空間で行われる時代となった。もっとも速いスピードで技術革新が進み、生産性が高まっているのは、サイバー空間である。それをもたらすサイバー上での知恵がどのような社会変化を引き起こすのか、その全貌はまだ見えないが、ここ数百年を支配した経済学と経済政策の有効性に限界が見えた時代であることは、はっきりしている。今我々は人類の新時代の入り口に立っており、それは新たな夢と機会にあふれた時代である可能性が高い。
ネット化は市場原理と民主主義を徹底化させる
ネット化によりあらゆる経済資源はネット上で顧客を見出し、適切な価格で評価されることになる。ネットにより市場原理が一層貫徹し、神の見えざる手がより細部にいきわたる。つまり市場が効率化し生産性が高まる。また、ネットで生活コストは大きく低下し、所得の余剰が生まれる。その余剰所得が向かう新規支出はどこになるだろうか、ライブ、実体験、人的接触が価値を持つ時代に入っていくように思われる。また労働と消費の境界があいまいになっている。トフラーが言ったプロシューマーがみえてきた。
(つづく)
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