2024年11月05日( 火 )

【大手企業を糾弾する/大和ハウス】バイオガスプラント事業でずさん工事 プラント正常化を「投げ出し」の卑劣(1)

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 大和ハウス工業(株)は資本金が約1,617億円、売上高はコロナ禍にあって4兆円(2021年3月期連結業績予測)を叩き出し、従業員は4万7,000人を超える国内建設業界のトップランナーだ。国内住宅・建設業界の売上高ランキングでも首位をひた走ってきた「巨艦」大和ハウスと、福岡県糸島市の養豚農家の間にトラブルが起きている。にわかには信じられないずさんな工事の背景には何があるのか。

大和ハウスのバイオガスプラント1号案件だったはずが…

バイオガスプラント 国内住宅・建設業界のトップランナー、大和ハウス工業(株)(本社:大阪市北区)によるずさんな工事によって、福岡県糸島市の養豚農家が経営危機に陥っている。

 糸島市の養豚農家「(有)浦ファーム」は1950年代の創業以来、約60年にわたって糸島市板持で畜産業を営んできた。2015年に2代目として代表取締役社長に就任した浦克稔氏(50歳)は、事業を受け継いでまもなく、糸島市バイオマス産業都市構想の一環としてバイオガスプラント事業への参入を決めた。事業内容は、敷地内にバイオガスプラント1基を建設して、豚のふん尿などを原料とするメタン発酵で発電した電気を販売する(売電)という計画だった。

 15年当時、日本国内には畜産農家によるバイオガスプラントの導入事例が少なく、浦ファームは実績豊富なイタリアのプラントメーカーを選定し、その際にメーカー側から施工者として大和ハウスを紹介された。対応窓口となった大和ハウス工業環境エネルギー事業部は、当時の太陽光発電所の建設需要の高まりを受け、再生可能エネルギー関連事業のさらなる展開を期待して「バイオガスプラント1号案件」として、浦ファームと契約を結んだ。

計画図面と実施図面に300カ所以上の差異

 17年10月、浦ファームと大和ハウスは、バイオガスプラント新築工事の工事請負契約を締結。請負金額は約6億円。完成予定日は翌18年9月で、当初予定では2カ月間の試運転を経て18年11月に引き渡される計画だった。浦ファームはこうしたバイオガスプラント事業の新設にともない、事業予算として金融機関から5億9,570万円を借り入れたほか、国から農山漁村6次産業化対策事業補助金8,433万9,000円の交付を受けている。

 18年に着工したプラント建設は、計画から2カ月遅れた同年11月に竣工。ところが、その後の試運転開始早々にエンジンが停止するなどの複数のトラブルが発生し、その後も正常稼働には至らず、計画していた売電事業は暗礁に乗り上げたまま現在に至っている。

 疑念を募らせた浦社長が大和ハウス側に調査を依頼すると、いくつもの不審な点がみつかった。

 まず、(1)工事における設計図面が、請負契約締結時のものと実際に施工された際のものとで大幅に異なることが判明。(2)プラントの心臓ともいえるエンジンメーカーが無断で変更されていたほか、(3)建柱工事が8本から4本に、バッファタンクが10m3から3m3に変更されるなど、実際に施工されたプラントと請負契約の内容に300カ所以上の差異が確認されたのだ。

 建設業者は契約締結に際して工事内容等の事項を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付することが定められている(建設業法第19条)。さらに、工事内容を変更するときは変更内容を書面に記載して交付することも当然定められているため、仮に大和ハウスが浦ファームに無断で図面の変更を行ったならば、建設業法違反にあたる可能性がある。

プラント正常化を事実上の「投げ出し」

 浦ファームはプラントの正常稼働を期して複数回、大和ハウス側と話し合いをもったものの協議は平行線をたどり、事業再開の見通しが立たない日々が1年以上続いた。そして20年2月、大和ハウス側から2つの解決策を提示された。

<大和ハウス側の提案>
(1)現場のプラントを解体し、更地にして引き渡す
(2)解決金を支払ったうえで、現状引き渡し

 浦ファームがこだわってきたプラント正常化に対する要求には応えず、結果的にプラント稼働ができないことを認めたうえで金銭による解決を図ろうとするのが、大和ハウス側の回答だった。

 取材班は18日、大和ハウス工業福岡支店に浦ファームのバイオガスプラント事業に関する質問状を持参して、回答を求めていた。これについて大和ハウスは21日、本社広報企画室名義で「質問状を確認した。個別案件については回答を差し控える」と回答している。

(つづく)

【河原 清明】

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