大和力を、世界へ。コロナ禍のなかでアートにできること(1)
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神獣に代表される日本古来の文化をモチーフに、現代的な瑞々しい感性で作品を送り出し続ける、アーティストの小松美羽さん。「見えない世界、神々と人をつなぐことが私の役割。役割をまっとうするために、作品を見てもらいたい。牙がある画家になりたい」と話す小松さん。コロナ禍のただ中にある世界で、何を感じているのか。
「小松美羽」とは何か
――小松美羽さんは、「神獣」や狛犬をモチーフとした作品で知られています。作家として表現活動をライフワークにされるようになったきっかけは。
小松 絵を描くことは子どものころから大好きで、保育園に入る前にはすでに何かを描いていたような気がします。作家として本格的に絵を自分の仕事にしようと考えるようになったきっかけは、多分故郷である長野の環境も影響したのだと思います。長野県って、当時は東京の次に美術館や文化施設が多い場所だったので、自然と芸術に触れる機会が多くなって、私の場合はとくに母親が美術鑑賞好きだったので、将来は美術館に飾られるような絵を描きたいというのはなんとなくいつも心にありました。美術館に置いてあるノートとかに、「芸術家になるので飾ってください」なんて書いたこともありました。
アーティストとしての原点には霊的なものとの接触体験があって、そういった体験は私の基盤になっていると思います。作品も100%「そっち」方面ですから(笑)。絵を本格的に学ぶのにあたっては、長野県には美術系の大学がなくて信州大学の教育学部にあるくらいだったので、東京の大学に進学して本格的に絵を学び始めました。もともと日本って作家さんがたとえ売れなくても「1人でやっていく」ことが美徳だと思われる風潮があるんです。でも私は純粋に絵を描く環境をいただいていて、とても1人ではできないことを周りの皆さんに補っていただいて今があると思っています。
――絵を通してどういったものを表現したいのでしょう。
小松 私は一貫して「神獣」をテーマに絵を描いてきました。直接、人間の肉体とかを描くのではなく、心や魂など物質的ではないものを見抜いて、そこに悪いものがあれば神獣にはそこに立ち向かって排除する力があるので、私たちを守ってほしいという絵を描きたいんです。それが「薬」として作用して多くの人々の魂を救うようになってほしい。絵って飾っていただけるものなので、私の絵がそこにあるだけでその方の場所や聖域を悪で汚さないように、住む方の心が平安でありますように、という気持ちで描いています。神獣さんには、「なんで人間を守らなきゃいけないの?」という思いもあるので、そこが希薄になってしまうとだめで、「人間を見捨てない」というイメージが強いんです。
――作家としての1人立ちを意識したのはアメリカでの経験が大きかったそうですね。
小松 アートマーケットって、一般の方にはすごくわかりづらいところがあるんですが、基本的に多くのコレクターに支えられている作家さんは、どんどん認知度が高まるんですね。たとえばパブリックアート(公共の場における芸術活動)の制作ができたり、コレクターさんが作品を美術館にドネーション(寄贈)したりとかして、そうすると美術館に絵を飾ってもらう機会がどんどん増えていく。
コレクターさんのなかには、「自分だけの作品」と独占する方もいれば、「~コレクション」ということで巡回展示をする方もいます。そういったコレクターの方々との出会いがすごく重要だということを、アメリカでは感じました。自分だけがアートを楽しむのではなく、購入したアートで多くの人を楽しませたり、心を豊かにしたりする。作家が作品を世に出すだけではなく、次のステップにいくにはこういう文化がすごく大切なんだと思います。
(つづく)
<PROFILE>
小松 美羽(こまつ・みわ)
現代アーティスト。1984年長野県坂城町生まれ。女子美術大学短期大学部卒業。20歳のときに制作した銅版画「四十九日」が好評を博してプロ活動へ。2014年、出雲大社へ絵画「新・風土記」を奉納。15年、有田焼の狛犬「天地の守護獣」が大英博物館日本館に永久展示される。16年から「The Origin of Life」が4 World Trade Center(ニューヨーク)に常設展示。19年、VR作品「INORI~祈祷」が第76回ヴェネチア国際映画祭VR部門にノミネート。20年、日本テレビ系「24時間テレビ」の〈チャリTシャツ〉をデザイン。著書に『世界のなかで自分の役割を見つけること』(ダイヤモンド社刊)など。
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